パジェット病とは?原因、症状、治療、再発可能性は?がんの1種?
- 作成:2016/02/08
「パジェット病」とは、「アポクリン腺」と呼ばれる汗が出る部分に起きる皮膚病で、悪性腫瘍に分類されます。放置して進展すると、皮膚の奥に達して癌(がん)になってしまう恐れがあります。症状や治療法について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
パジェット病は悪性腫瘍
パジェット病とは、皮膚にできる悪性腫瘍の一種で、進行すると全身に転移する可能性のある皮膚癌(がん)です。英語表記の読み方の違いで「ページェット病」と呼ばれることもあります。なお「ベーチェット病」という病気もありますが、こちらは炎症性疾患であり、全く異なる病気ですから誤解のないようにしてください。パジェット病は腋(わき)の下・外陰部(性器)・肛門などの周辺にできるのが特徴で、強いにおいがあったり、フェロモンを含む汗を出す役割のある「アポクリン腺」と呼ばれる様式の汗腺が変異を起こして、腫瘍化したものがパジェット病です。なお乳房にできるパジェット病はここで述べた病気とは異なるもので、乳癌と関連したものですので注意が必要です。
パジェット病の初期段階では、腫瘍は表皮内(皮膚の表面)だけで増殖しており、転移を起こしません。しかし、進行すると表皮だけではなく、転移する危険性がある皮膚の深部にまで腫瘍が広がります。つまりパジェット病が進行すると、他の癌と同じようにリンパ管を介してリンパ節に転移したり、血管を介して他の器官にまで広がることがあるのです。そのような場合は「パジェット癌」とも呼ぶこともあります。
早期で腫瘍細胞がまだ表皮の中だけに存在している段階では転移はしないので、手術で切除できれば完治します。しかしパジェット病は深部への進行が比較的早く起こる悪性腫瘍であり、まだ隆起(ふくらみ)がないような段階でも、皮膚の深部にまで広がっていることがあります。パジェット病が皮膚の深部にまで進展した場合は治療が難しくなることがありますから、早期発見、早期治療が何よりも大切な皮膚病と言えるでしょう。
パジェット病の症状 違和感がないことも
パジェット病では、皮膚が湿って赤くなり、部分的にただれが起こることがあります。赤くなったところにかさぶたができたり、かゆみが生じたりするため、最初は擦りむいたか、湿疹ができたようにも思えるかもしれません。特に外陰部(性器の周辺部分)のパジェット病は、皮膚科受診をためらってしまって、湿疹やカンジダ症として塗り薬で様子を見ているうちに進行してしまうという事例が多いので要注意です。数年放置しておいて、範囲が広がって深部に進展してからはじめて受診するという場合も多いようです。
初期のパジェット病は皮膚が少しおかしいというだけで、強い痛みや違和感などはありません。また、一般的にイメージする「腫瘍」というようなふくらみもなく、少しただれていると感じる程度です。目で見たり、触ったりすると明らかにおかしいことはわかりますが、パジェット病が起こる部位が、なかなか直接目で見えづらい部であることも多く、発見が遅れてしまうこともあります。発見が遅れるとうまく治療できないことがあるため、「治りにくい湿疹」が外陰部や脇にできていると思った時には早めに皮膚科を受診するのが良いでしょう。
パジェット病の治療は手術
パジェット病の治療は、外科的な処置で切除するのが普通です。皮膚の深い部分へ進展していない早期のパジェット病では、皮膚を切除すれば良いので、余り大きなリスクはありません。ただ、パジェット病では見た目では周囲の正常と思われる皮膚にも腫瘍細胞が隠れていることが多いので、少なくとも数センチは広めに切ることとなります。また手術の前に、パジェット病の細胞が周辺部のどこまで広がっているかを検査することもあります。あまり広範囲に広がった場合には、切除後に皮膚を縫いよせることが難しくなります。そのような時には、他の部分の皮膚を切って移植することになります。
放置して進行し転移などが起きた「パジェット癌」では、他の癌と同様に切除できる部位はまるごと切除し、後は抗癌剤や放射線などを使って治療することになりますが、完治は難しくなります。正常な細胞が腫瘍化する要因が分かっていないため、これといった予防法はありません。皮膚に異変を感じたら早めに医師に相談して下さい。
パジェット病は何科にいくべき? 再発の可能性は?
パジェット病は皮膚の病気ですので、異変を感じたら皮膚科に行くのが良いでしょう。パジェット病に見た目が似ている皮膚の病気もありますので、他の病気でも、早期発見が期待できます。
発生した場所や進展の度合いによっては、各種外科・泌尿器科・婦人科などと共同の治療を受けることになるかもしれません。他の癌と同様に、パジェット病は完全に切除できていなかった場合には再発することがあります。手術で取り去ったからと言って安心せず、定期的に手術跡の周辺やリンパ節をチェックして再発していないかどうかを確認して下さい。
パジェット病についてご紹介しました。もしかしてパジェット病かもしれないと不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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