結核の治療の薬、副作用、治療期間、手術がありえる理由 5種類も?入院は必要?

  • 作成:2016/03/14

結核の治療は近年では、薬を服用することが中心となります。薬の効果や副作用、治療期間、手術にいたる可能性を含めて、医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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結核の薬はどんなもの?

5種類の結核に使う薬

現在、結核の治療に使用される薬の代表的なものは5種類あります。

(1)リファンピシン:「RNAポリメラーゼ阻害剤」と呼ばれる種類の薬で、結核菌がタンパク質を作るときに関連するRNAの合成を阻害します。

(2)イソニアジド:結核菌には、ヒトの細胞に存在しない「細胞壁」という部分があります。イソニアジドは、この結核菌の細胞壁に含まれる「ミコール酸」という脂質の合成を阻害して結核菌が増殖できないように働きかけます。

(3)ストレプトマイシン:細菌のリボソーム(たんぱく質を作るときに働く)に結合して、たんぱく合成を阻害します。

(4)エタンブトール:作用は詳しくわかっていませんが、リファンピシンと同様にRNA合成を阻害すると考えられています。

(5)ピラジナミド:結核菌がもつ「ピラジナミダーゼ」という酵素によって、活性型のピラジン酸に変換され、ピラジン酸が脂肪酸合成酵素の機能を阻害します。

実際の治療では初めての結核の治療なのか、再発なのか、ほかの病気があるかないか、そして服用中の副作用などを考慮して薬が選択されます。

結核に使う薬の副作用

結核の薬の説明書には多くの副作用が書かれていますが、その中にはめったにおこらないものも含まれています。代表的な副作用を挙げます。

(1)リファンピシン:薬自体が赤色の薬で、服用によって尿が赤色に変わることがあります。さらに汗や涙が赤くなり、服などが汚れることがあります。ただ、基本的にはこの程度の副作用であれば服用を中止することはありません。そのほかにリファンピシンは肝臓の酵素に作用し、他の薬の作用を弱めることがあります。そのためもともと服用している薬がある場合は必ず医師らに伝えるようにしましょう。

(2)イソニアジド:副作用としてビタミンB6欠乏による末梢神経障害があり、そのためビタミン剤が一緒に処方されることもあります。

(3)ストレプトマイシン:「第8脳神経」である聴神経に毒性を持ちます。そのため難聴が現れることがあります。また腎臓にも毒性を持つため腎機能障害が現れることがあります。

(4)エタンブトール:副作用に視覚障害があります。具体的には色の区別がわからなくなる色覚障害です。エタンブトールの量が多ければ多いほど現れやすいといわれています。

(5)ピラジナミド:重篤な副作用として肝障害があります。

その他にほかの薬でもあるようなアレルギーや吐き気・下痢なども記載がありますが、これらは副作用に早く気付いてもらうために書かれたものであり、すべての人に起きるわけでもありません。きちんと副作用に気づくことができれば早急に対処ができるため、治療を受ける際は、きちんと薬について、説明をうけるようにしましょう。

薬以外の治療方法がある?手術になることがある?

結核薬による治療効果が低かった昔は、結核に対して病巣を取り除く手術による治療が、よくおこなわれていました。しかし、現在では、きちんと服用すれば薬の治療効果が高いため、手術になることは少なくなっています。

特別な例としては、薬がきちんと服用できず耐性菌ができてしまったり、薬の副作用で内服治療が継続できなかったり、肺以外の部位の治療のため、手術が選択される場合があります。

結核だと必ず入院になる?入院しない人はいない?

結核だからといって、必ず入院が必要とは限りません。逆に結核の人が全員入院できるだけの病室が医療機関にないのも事実です。問題になるのは患者自身の状態が悪くて入院が必要な場合と、ほかの人への感染の危険性が高い場合です。痰の中に大量の結核菌がいて入院になった場合は、喀痰から菌が消えれば外来通院治療に切り替わります。菌が消えるまでにはおよそ2カ月程度かかります(詳しくは後述)。

結核の治療期間はどれくらい?

通常の治療ではリファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド3つの薬に加えて、ストレプトマイシンかエタンブトールのどちらか1剤を追加し、合計4種類の薬で、治療を開始します。

内服で治療を行う場合、通常の期間は6カ月で、3カ月目からは薬の種類が減量されるのが一般的です。全身状態が悪い場合や周囲の人に感染の恐れがある場合には入院が必要になります。入院治療でも薬の効果が出てくると、2カ月から3カ月で菌の活動が停止するため、その後は通院治療に切り替わります。

基本的に指定された薬をきちんと服用していれば結核は治る病気です。しかし、毎日きちんと服用できていなかったり、症状が消えたからといって途中で服用をやめたりすると薬の効かない結核菌(「耐性菌」といいます)が出現することがあります。この菌が他の人に感染してしまうと、その人は薬が効かなくなり最悪の場合死に至ることもあります。耐性菌が生まれないように、そして広がらないようにして、治療は必ず医師の指示通りに行いましょう。


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結核の薬などの治療についてご紹介しました。もしかして結核かもしれないと不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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