敗血症の治療、治療期間、入院期間 どんな薬?副作用は?手術の場合も?
- 作成:2016/09/26
敗血症は菌への感染が原因ですので、抗菌薬などを用いて治療をしますが、場合によっては手術が必要になることもあります。薬の副作用や治療、入院期間を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
敗血症の治療はどんなもの?手術もありえる
敗血症は死亡率の高い病気ですが、治療の開始が早ければ早いほど助かる確率が上がります。通常、敗血症と診断、もしくは疑われてから6時間以内に治療を開始することが望ましいとされています。
敗血症の治療の基本は、抗生物質(抗生剤)の点滴です。敗血症の原因となっている感染症(肺炎、尿路感染症など)によって、原因となる細菌の種類が異なるため、原因と推定される細菌に対して効果がある抗生物質を選んで、治療を開始します。
抗生物質を使用する前に、血液培養や尿の培養検査をしますが、検査の結果が判明するまでには3日から5日程度の時間が必要です。敗血症の治療は時間との勝負であり、通常は敗血症を発症してから6時間以内に治療を開始しないと生命の危険があるとされています。そのため最初は様々な細菌に広く効果がある抗生物質を使用し、培養の結果原因となっている細菌が特定できた段階でより効果があると考えられる抗生物質に変更するという方法が推奨されています。
また敗血症による全身の血圧低下や臓器の血流量低下を改善、もしくは防ぐ目的で輸液(水分の点滴)が大量に投与されます。大量の輸液を行っても血圧が維持出来ない場合は「昇圧剤」と呼ばれる血圧を上昇させる薬を使用します。
上記に加えて呼吸の状態が悪い場合は酸素投与や人工呼吸器の使用、全身の炎症を抑える目的でのステロイド剤の投与、腎機能障害に対する人工透析などが行われます。
その他、敗血症の原因となっている感染症の治療が行われますが、原因が腹腔内の膿瘍(のうよう:膿のかたまり)や消化管穿孔(しょうかかんせんこう:腸に穴があくこと)などである場合は手術を行う必要があります。
敗血症の治療薬の作用機序と副作用 ステロイド?抗菌薬?
敗血症の治療の基本は、抗生物質(抗菌薬)の投与です。抗生物質の投与方法には、経口(口から飲む)と点滴がありますが、点滴の方が効果が高いため、通常は点滴が行われます。
抗生物質は、細菌を殺したり増加を抑える作用がありますが、細菌の種類や性質によって効果がある場合とあまり効かない場合があり、原因となる細菌に合わせてきちんと使い分ける必要があります。
抗生物質の副作用として比較的多いものは下痢や肝機能障害、腎機能障害などです。
また、敗血症では「ステロイド」という薬が使用されることがあります。ステロイドは炎症を抑える働きが強く、敗血症で起こる全身の強い炎症反応を抑えるために非常に有効とされています。
ステロイドは効果が強い反面、副作用も様々なものが起こる可能性があります。代表的なステロイドの副作用としては、血糖値や血液中のナトリウム値の上昇、免疫力の低下、胃潰瘍、筋力低下などがあげられます。特に、ステロイドには免疫力の低下という副作用があるため、感染症である敗血症にステロイドを使用することで、逆に感染症を悪化させるという意見もあり、長年議論がされてきました。現在では、重症敗血症や敗血症性ショックで、血圧が低下し生命の危険がある場合には、ステロイドが有効であるという考え方が主流となっています。
敗血症の治療期間はどれくらい?
敗血症の治療期間は、敗血症や敗血症の原因となった感染症の重症度のほか、患者さんの年齢、もともと持っている病気、敗血症の合併症などによって異なります。
通常は、敗血症の治療そのものは5日から10日程度を目安に行いますが、患者さんが高齢であったり糖尿病や腎不全などの病気がもともとある方は、感染症の治りが悪い傾向にあるため治療が長引くことがあります。
また敗血症の治療は終わっても、経過中に敗血症の合併症として臓器障害や「播種性血管内凝固症候群(DIC、血を固める機能の異常)」などを起こした場合、呼吸状態の悪化、意識障害などがある場合は引き続き治療を行います。
敗血症の入院期間はどれくらい?
敗血症が軽度で、合併症もない場合は数日から1週間程度で退院する場合もありますが、高齢者やもともと持病がある方は入院期間が長くなる傾向があります。また、重症敗血症や敗血症性ショックで臓器障害が起こった場合や呼吸状態の悪化により人工呼吸器を使用している場合、意識障害がある場合などは、退院できる状況になるまで入院を継続して、合併症の治療を行うため、入院期間が数カ月間に及ぶことも珍しくはありません。
赤ちゃんの敗血症の治療は特別なものがある?
赤ちゃんの敗血症の治療方針は、基本的には大人と変わりありません。しかし、子供は大人よりも病気の進行が速い傾向があるため、大人よりもさらに迅速に治療を開始しないと生命に関わる事態になる可能性が高くなります。日本集中治療医学会小児集中治療委員会による「日本での小児重症敗血症診療に関する合意意見」(日集中医誌 2014;21:67-88、専門家向け、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/21/1/21_67/_pdf)では、「小児敗血症患者では,診断後1時間以内に有効な治療を実行することが予後の改善につながる」とされています。大人の場合は、6時間が目安ですので、迅速な対応の重要性がわかると思います。
また赤ちゃんは呼吸の機能が大人に比べて弱いため呼吸不全を起こしやすく、重症敗血症では早い段階での「気管内挿管(気管に管を入れて人工呼吸を行う事)」が必要になる場合があります。
その他、使用する抗生物質などは大人とあまり変わりませんが、赤ちゃんや子供は抵抗力が弱く、病気が急激に進行して悪化することもあるため注意が必要です。
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敗血症について治療や入院などをご紹介しました。体調の急激な悪化に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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