狂犬病の予防接種と感染検査 いつ受けるべき?効果、価格、副反応は?「犬にかまれた」なら、どこへ行くべき?

  • 作成:2016/08/26

ご存じの方も多いかもしれませんが、狂犬病は、発症するとほぼ確実に死亡するとされる恐ろしい病気です。そのため、感染のリスクがある場合には、予防接種を受けるのが、合理的です。予防接種の効果や価格、副反応の有無をふくめて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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狂犬病の予防接種の効果を知ろう

目次

狂犬病予防法の概要 何が定めてある?

「狂犬病予防法」は、狂犬病の蔓延を防ぐことを目的とし1950年に制定されました。狂犬病予防法によって定められているのは、イヌの登録、予防注射、野犬などの抑留です。

イヌの登録は、イヌを飼う人全員に義務づけられています。飼い主はイヌを飼い始めた日から30日以内に、保健所や自治体の定める委託機関に届け出なくてはいけません。ただし、生後90日以内のイヌを飼い始めた場合は、生後90日を経過した日から30日以内の届け出でよいとされています。一度登録すれば再登録などの必要はなく、イヌが生きている限りずっと有効です。ただし、転居の際や飼い主が代わった際、イヌが死亡した際などは、届出の変更・更新が必要です。

予防注射に関しては、登録の前と、毎年一回必ず狂犬病予防接種を受けなくてはならないという義務が定められています。予防接種は、動物病院の他に自治体などでも受けられる場合があります。

イヌに予防接種を受けさせると、鑑札と注射済票を交付されます。鑑札と注射済票は、必ずイヌに着けておかなくてはならないと定められています。着けないままでイヌを飼っていると、20万円の罰金か科料の罰則を科せられることがあるため、飼い主の方はくれぐれも注意しましょう。

野犬などの抑留は、自治体で定められた獣医師による「狂犬病予防員」によって行われると定められています。

狂犬病の人間向けの予防接種(ワクチン)を受ける必要があるのはどのような人?

狂犬病にかかるリスクが高い人は、予防のために狂犬病のワクチンを接種する必要があります。

狂犬病のリスクが高まるのは、狂犬病が流行している国や地域に渡航する場合です。現在狂犬病は、日本やイギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどの一部の地域を除いて世界的に分布しています。そのため、海外旅行に出掛けるときはほとんどの場合狂犬病のワクチンを受けたほうがよいと言えます。

中でも、野犬の管理が不十分な発展途上国、野生の動物が多く遭遇するリスクの高い国などへ渡航する際は必ず狂犬病ワクチンを接種するよう心がけましょう。

狂犬病の人間向けの予防接種(ワクチン)の効果は?どれくらいの確率で予防できる?

狂犬病のワクチンを接種すると、2年から3年ほどの期間に渡って効果が持続します。接種から3年以上経過すると、狂犬病への耐性はほとんどなくなり、ワクチンを受けていない人と同程度になると考えられています。

ただし、ワクチンの効果が有効である間は、非常に高い確率で狂犬病の発症を予防することができます。万が一、狂犬病の病原体を持っている動物に咬まれても、事前にワクチンを接種していればほとんどの場合発症を回避することが可能です。さらに、咬まれたあとに用いる「暴露後ワクチン」も受けると、発症を抑える効果をより高めることができます。

狂犬病の人間向けの予防接種(ワクチン)の副反応は?

非常に効果の高い狂犬病ワクチンですが、様々な副反応が起こる可能性があります。

軽い副反応では、ワクチンを注射した部分などに赤い斑点ができたり、かゆみ・痛みが起こったり、熱を持って腫れたりする症状が確認されています。また、注射後に気分が悪くなったり、頭痛や全身の痛みを覚えたりすることもあります。軽い症状としては、別の予防接種で起こる可能性のあるものが多いです。

さらに、重い副反応では、アナフィラキシーショックなどの強いアレルギー反応が起こることがごくまれにあります。アナフィラキシーショックが起こると、血圧の急激な低下、気を失うといった意識障害などの症状が現れ、最悪の場合生命に関わることもあるため、早急に病院で処置を受ける必要があります。

狂犬病の人間向けの予防接種(ワクチン)の価格は?接種回数や間隔は?

現在狂犬病は、日本国内では撲滅されています。したがってワクチンを接種する人数は比較的少なく、そのために価格が高く設定されています。その上、予防のために事前に接種するワクチンには保険が適用されないため、費用は全額負担となります。ただし、狂犬病のウイルスを持っている動物に咬まれたあとに接種する暴露後ワクチンの接種には、健康保険や海外旅行傷害保険などの各種保険が適用されます。

ワクチンの費用は医療機関ごとに異なりますが、1回につき15,000円から18,000円ほどに設定されていることが多いようです。

1回の摂取につき15,000円以上もかかる狂犬病ワクチンですが、1回受けただけでは効果は不十分です。十分な予防効果を得るためには、4週間の間隔をあけて2回ワクチンを注射し、さらに2回目の摂取後、半年以上経ってから追加接種を受ける必要があります。

つまり、7カ月以上かけて合計3回のワクチン接種が必要です。時間も費用もたくさんかかり負担が大きいと感じるかもしれませんが、狂犬病は発症すればほぼ確実に死に至るため、予防接種なしに狂犬病流行国へ渡航してはいけません。狂犬病予防接種の負担を減らしたい場合は、狂犬病が流行していないオーストラリアやイギリスなどに行く選択をせざるをえないともいえます。

「犬にかまれた」 狂犬病の検査のメカニズム

狂犬病が流行している地域で、野犬やキツネ、コウモリなどの動物に咬まれた場合、狂犬病に感染する可能性があります。狂犬病の感染が疑われる場合は、早急に医療機関で検査を受けましょう。

狂犬病の検査では、首などの皮膚をサンプルとして採取し、ウイルスが潜んでいるかどうかを顕微鏡で観察する方法を取ります。この検査方法は、「皮膚生検(ひふせいけん)」と呼ばれています。

検査対象は、皮膚だけでなく、唾液や尿のサンプルを使ってウイルスの有無を調べることもできます。皮膚生検ですぐにウイルスが確認できなかった場合、唾液や尿の検査を行います。

皮膚や唾液、尿からもウイルスが発見されない場合、「脊椎穿刺(せきついせんし)」と呼ばれる方法で、脳脊髄液(のうせきずいえき)を採取し、さらに細かく検査することもあります。ウイルスを検出する確率を高めるために、これらの検査を、時間を置いて何度も繰り返します。

狂犬病に感染しているかどうかは、咬まれたヒトを検査することからだけでなく、咬んだ動物の予後を観察することでも確認することができます。

イヌなどの動物が狂犬病に感染していた場合、通常10日から2週間程度で死亡します。したがって、ヒトを咬んだ動物が2週間以上生存していたら、咬まれたヒトが狂犬病に感染している可能性を否定できるというわけです。

ただし、咬んだ動物を特定できなかったり、その動物の予後を観察できないケースも多々あります。そういった場合は、やはり医療機関で検査を受け、感染しているかどうかよく調べましょう。狂犬病は生命を脅かす重大な病気であるため、病原体の有無を正確に調べることは非常に大切なことなのです。

狂犬病の検査はどこで受けられる?

狂犬病の検査を受けるケースのほとんどは、何らかの野生動物に咬まれて感染が疑われる状況にあるときです。そして、現在日本では狂犬病の病原体の分布が確認されていないため、検査が必要となる場所は狂犬病が流行している外国でしょう。

外国で狂犬病の検査を受ける必要が発生したときは、すぐに旅行会社やガイドと連絡を取り、狂犬病の検査と暴露後ワクチンを受けられる医療機関を探しましょう。検査にかかる費用は国によってまったく異なります。疑いのある場合、ワクチンの接種から始めるが一般的です。



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狂犬病の予防接種などについてご紹介しました。海外で犬にかまれて不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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