破傷風の予防接種 効果、副反応、価格、接種時期を解説 大人も必要?予防接種以外でも予防できる?

  • 作成:2016/09/27

破傷風はの予防方法としては、予防接種が一番確実な方法と言えますが、複数回受ける必要があります。10年程度で効果がなくなるとされているため、子供の時受けた方でも、衛生状態のよくない国への渡航予定のある方は、接種を検討してもよいと考えられます。予防接種の効果、費用、副反応(薬でいう副作用)を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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目次

破傷風の予防接種とは?

破傷風の感染を防ぐために、最も効果が高い方法が予防接種です。破傷風の予防接種では、「破傷風トキソイド」というワクチンを接種します。破傷風トキソイドは、破傷風菌(原因となる菌)を培養した後に精製して無毒化し、免疫力を強化する成分を加えた液体状のワクチンです。ただし、破傷風トキソイドは、免疫が全くない人に1回接種しただけでは、発症を予防する効果がありません。破傷風ワクチンの働きで体内に抗体ができ、免疫が獲得できるのは2回目の接種後とされ、合計3回接種すると基礎免疫ができて、破傷風を予防できる状態となります。

国内で現在使用されている破傷風ワクチンは、以下の3種類があります。

・破傷風トキソイドのみ含まれるワクチン
・ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ(別名小児まひ、急性灰白髄炎)の4種類のワクチンを配合した四種混合ワクチン(DPT-IPV)
・ジフテリア、百日せき、破傷風の3種類のワクチンを配合した三種混合ワクチン(DPT) ・破傷風とジフテリアの2種類のワクチンを配合した二種混合ワクチン(DT)

このうち、定期接種時に使用するのは四種混合ワクチンまたは二種混合ワクチンです。成人が破傷風の予防のために接種するワクチンは、「沈降破傷風トキソイド」といいます。また、海外では、これら以外のワクチンを使用することもあります。

大人も破傷風の予防接種が必要?

日本では、1968(昭和43)年に破傷風ワクチンが定期接種に制定されました。1968年以前に生まれた人は、ほとんど破傷風の予防接種を受けていないため、大半の人は免疫を持っていないと考えられます。そのため、1968年以前の生まれの人が、破傷風に対する基礎免疫をつけるためには、合計3回の予防接種が必要です。

一方、1968年以降に生まれた人は、子どものころに破傷風の予防接種を受けているため、成人になるまでは免疫がある状態です。ただし、子どもの頃に混合ワクチンを接種し、破傷風に対する免疫がついたとしても、破傷風に対する免疫効果は永久ではなく、予防接種の効果は約10年とされています。その後、免疫がなくなった状態で破傷風菌に触れると、破傷風を発症してしまう可能性があるのです。破傷風を完全に予防するためには、成人になってからも10年に1度を目安に予防接種を行い、体内に破傷風の抗体を作り追加免疫を獲得することが必要です。

特に、衛生環境への配慮が不十分な国への旅行や滞在を予定している人、農業、屋外工事などの仕事をしている人などは、破傷風の予防接種を受けることが推奨されています。また、免疫のない妊婦が、器具が十分消毒されていないなど衛生面が整っていない環境で出産すると、ごくまれに赤ちゃんが「新生児破傷風」を発症することがあります。妊娠を希望する場合は、早めに予防接種を行い破傷風の免疫を獲得することが望ましいとされています。成人になってから、10年以上破傷風ワクチンの予防接種を受けていない場合は、ワクチン接種を検討した方がよいでしょう。

なお、破傷風ワクチンは、内科を始めとする大半の医療機関で実施可能ですが、ワクチンの取り寄せなどの準備が必要なことがあります。破傷風ワクチンの接種を希望する場合は、あらかじめ医療機関に電話で問い合わせ、事前に予約を入れるようにしましょう。

破傷風の予防接種を受けるタイミング 子供編

破傷風の予防接種のタイミングは、未成年と成人以降によって大きく異なります。 未成年の場合は、予防接種法により破傷風ワクチンを含む四種混合ワクチンの定期接種が推奨されています。予防接種の時期は、生後間もなく行う1期と小学生のときに行う2期に分けられます。

1期では、基礎免疫を獲得するため合計4回ワクチンを接種します。生後3カ月から12カ月の間に1回、その後20日から56日の間隔をおいて合計3回行います。さらに、追加接種として、3回目の接種を行ってから6カ月以上(標準では12カ月から18カ月)の間隔をおいて1回接種を行います。2期では11歳から12歳の間に二種混合ワクチンを1回接種します。なお、1期および2期の接種は、いずれも定期接種の対象であるため接種者の自己負担はほとんどありません。

破傷風の予防接種を受けるタイミング 大人編

成人の場合、1968年以降の生まれで過去10年以内に破傷風の予防接種を受けていない場合は、10年に1度の間隔を目安に予防接種を受ければ、免疫がある状態が保たれるとされています。

これに対し、1968年以前に生まれた人は破傷風に対する免疫がないため、基礎免疫を獲得するためには、半年から1年かけて計3回ワクチンを接種することが必要です。とくに、今後、海外旅行や滞在の予定がある場合は、渡航までに3回ワクチン接種を完了していることが望ましいとされています。ただし、一般的には、2回ワクチンを接種してから4週間経過すれば、破傷風の感染を防ぐのに必要な抗体が作られるとされています。時間の都合で3回の接種ができない場合も、事前に破傷風ワクチンを接種してから渡航するようにしましょう。

なお、破傷風ワクチンを接種すると、別のワクチンを接種するまで一定間隔を空ける必要があります。破傷風以外のワクチン接種が必要な国へ渡航を予定している場合などは、事前に予防接種スケジュールを立て、計画的にワクチン接種を行うことが大切です。

破傷風の予防接種の価格は?

成人が破傷風ワクチンを接種するときは、任意接種となるため全額自己負担となります。また、接種費用は各医療機関が独自に料金を設定するため、予防接種を行う医療機関によって1回あたり1,000から10,000円と大きな開きがあります。破傷風ワクチンの接種費用については、事前に医療機関へ確認するようにしましょう。なお、子供が定期接種として受ける場合は、無料です。

破傷風ワクチンを接種したときの副反応は?

予防接種は、破傷風など感染症を予防するために有効な手段ですが、人によっては、予防接種の後に、一時的に腫れ、痛みなどの症状がみられることがあります。これらの症状は薬による副作用と似ていますが、ワクチン接種による免疫以外の反応を「副反応」といいます。

破傷風ワクチンは、発熱時、風邪などの病気にかかっているとき、過去に予防接種でアレルギー反応を起こしたことがある人などは接種できないことになっています。また、現在薬を服用している、通院中、妊娠の可能性のある人などは、予防接種を受ける前に必ずかかりつけ医に相談しましょう。

破傷風ワクチンを接種すると、人によって30分後ぐらいから副反応が現れ始めます。破傷風ワクチンの副反応で最も多い症状は、注射した部位の腫れや赤みです。たまに腫れや赤みなどの直径が5cm以上になることがありますが、通常2、3日経つと症状がなくなります。その他、発生頻度は少ないものの発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、下痢、めまい、関節痛などがみられることがあります。これらの症状も一過性で、通常2、3日以内に症状がなくなりますが、これらの症状が現れたら予防接種を受けた医療機関に相談しましょう。

また、ワクチン接種後、ごくまれに全身発赤、呼吸困難、血管浮腫(ふしゅ、むくみ)などのアナフィラキシー症状や全身ショックを起こすことがあります。これらの症状が現れたときは、生命に危険が及ぶことがあるため至急医師による治療が必要です。すぐ救急車を呼び医療機関を受診しましょう。

予防接種以外に破傷風を予防する方法は?

破傷風ワクチン接種以外の予防方法として、ケガをしたときに、破傷風の発症を防ぐため「抗破傷風人免疫グロブリン(TIG)」という血液製剤の一種を注射または点滴で投与することがあります。抗破傷風人免疫グロブリンは、破傷風を発症したときに、症状を軽減するためにも使用される薬剤です。ただし、抗破傷風人免疫グロブリンの効き目は約1カ月程度にすぎず、破傷風トキソイドを同時に接種した場合でも効き目は約3カ月にとどまっています。

また、手や足に傷がある場合、破傷風菌が繁殖している可能性がある土や糞などに触れないようにすることも大切です。破傷風は人から人へ感染することはありませんが、破傷風菌は世界各国で生存している菌ですので、破傷風の免疫を持っていない場合はいつでも感染する可能性があります。

破傷風を長期的に予防するためには、今のところ破傷風トキソイドワクチンを接種することが、最も効率的で有効な手段です。



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破傷風の予防接種についてご紹介しました。破傷風の予防接種を受けるべきかた迷っている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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