破傷風の原因、感染経路、症状、死亡率 要注意の傷口とは?人から人にうつる?初期症状はどのようなもの?
- 作成:2016/09/27
破傷風とは、そのまま「破傷風菌」という菌が原因でおきる感染症で、死亡率が3割から4割と高い特徴があります。感染経路や、どのような傷口に注意すべきか、初期症状の有無や特徴も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
- 破傷風とはどんな病気?
- 破傷風の死亡率
- 破傷風の原因となる破傷風菌とは?
- 破傷風の感染経路 人から人感染はしないが新生児は注意
- 破傷風になりやすい傷口とは?
- 破傷風の症状の4段階 潜伏期間は?初期症状は?
- 破傷風になったら光や音は避けることが必要
破傷風とはどんな病気?
破傷風は、土の中や動物の糞などに存在する破傷風菌が原因で起こる感染症です。破傷風菌は、傷口から体内に侵入すると神経の働きを麻痺させる「テタノスパスミン」という毒素を作り出します。破傷風は、テタノスパスミンによって神経が麻痺し、筋肉がこわばったり痙攣したりする病気で、重症化すると呼吸困難を起こして死亡することもあります。
破傷風の死亡率
日本では、気温が高く湿気の多い夏に破傷風の患者数が多くなるものの、年間患者数は100人前後で推移しています。ただし、破傷風に感染した場合の死亡率は約3割から4割にものぼり、一旦感染すると重症化しやすい病気です。新生児がかかった場合、7割を超える死亡率となります。
破傷風は、主に「全身性破傷風」「局所性破傷風」「頭部破傷風」という種類がありますが、通常は全身性破傷風のことを破傷風と呼び、局所性破傷風と頭部破傷風は破傷風の中でもまれな形態とされています。
破傷風の原因となる破傷風菌とは?
破傷風菌は、土の中や動物の糞など自然界に存在している菌であり、土中には50%の確率で破傷風菌が潜んでいるとされています。ただし、破傷風菌が存在するのは地表から10cmまでで、それより深い土中には存在しません。傷口に破傷風菌が触れた場合、通常は傷口をきれいに洗い流せば、免疫の働きで破傷風菌が死滅するため破傷風を発症することはありません。
しかし、病気やストレスなどで体力が低下して免疫力が衰えていると、体内に侵入してきた細菌を完全に死滅させることができずに、破傷風菌が生き残ってしまいます。破傷風菌は酸素を嫌うため、酸素がない傷の奥深くで繁殖しやすく、一旦体内に入ると、「テタノスパスミン」という毒素を作り出します。テタノスパスミンは、世界中で2番目に強い毒素とされるほど大変毒性が強い物質です。テタノスパスミンが作られてしまうと、傷口周辺の末梢神経から脊髄を介して全身の神経に広がってしまうのです。
破傷風の感染経路 人から人感染はしないが新生児は注意
なお、破傷風菌に直接触れると破傷風に感染することがありますが、破傷風自体はヒトからヒトへ感染することはありません。ただし、破傷風に対する免疫を持っていない母親が出産するとき、清潔でない器具で臍帯を切断するなどの原因で、ごくまれに生後数日後の新生児が破傷風を発症することがあります。これを「新生児破傷風」といいます。日本では医療機関など衛生環境が整った施設で出産することから、新生児破傷風の発症はごくまれであり、直近では2008年に1例報告された程度です。ただし、新生児破傷風は一旦発症すると治療が困難であり死亡率が約7割にものぼる大変危険な病気です。破傷風の免疫がない女性が妊娠した場合は、赤ちゃんが新生児破傷風を発症しないようにするため、予防接種で免疫をつけることが望ましいとされています。
破傷風になりやすい傷口とは?
傷口は破傷風の感染ルートになる可能性があります。ただし、傷の種類によっては、破傷風のリスクに違いがあるとされています。とくに、以下の条件にひとつでも当てはまる場合は、破傷風を発症するリスクが高いため、傷口に土、砂、糞便などが触れてしまった後は、体調や症状の変化に注意が必要です。
・ケガをしてから6時間以上経過している
・傷の深さが1cm以上ある
・ケガにより組織の一部が破損したり剥がれたりしている
ただし、前記の条件に当てはまらない小さい傷や浅い傷であっても、傷口に土、砂、糞便などが触れて汚れた状態で放置すると、破傷風を発症することがあります。傷があるときは、傷の大きさや程度に関係なく、土や糞便などに触れるときはゴム手袋などを使用して、素手で触れないようしましょう。やむを得ず素手で触れた後は、傷口を水で十分洗い清潔なタオルで水分を拭き取りましょう。
破傷風の症状の4段階 潜伏期間は?初期症状は?
破傷風の症状は、初期症状が現れる第1期から回復期の第4期に分類されます。第1期から、症状が最も重い第3期が始まるまでの時間(オンセットタイム)が48時間以内の場合は、治療経過がよくないとされています。
第1期は、平均7日から21日間の潜伏期の後に、初期症状が現れる時期です。口が開きにくい「開口障害」、飲食物が飲みにくい「嚥下障害」などの症状がみられます。破傷風の初期段階では、扁桃腺炎や咽頭炎などの症状と見分けにくいですが、破傷風の場合は、喉の痛みがみられないという大きな違いがあります。また、首筋の張り、寝汗、歯ぎしりなどの症状が起こることもあります。
第2期になると、筋肉の硬直や痙攣が次第に強くなります。破傷風特有の症状である「痙笑(けいしょう)」が現れるのも第2期です。「痙笑」とは、額にシワを寄せて口を横に広げて開いた隙間からは歯が見え、引きつり笑いをしているような表情のことです。痙笑は、「破傷風顔貌(がんぼう)」と呼ぶこともあります。
第3期は、全身に筋肉の硬直や痙攣が起こり、最も症状が重くなる時期です。筋肉が異常に収縮した状態が続いて筋肉がこわばる強直性痙攣(けいれん)が発作的にみられます。筋肉が周期的に伸び縮みを繰り返す「クローヌス」、足の親指のみ甲側に曲がり、親指以外の指は外側に開く「バビンスキー反射」、筋肉の腱を叩くと過剰に収縮する「腱反射亢進」、全身の筋肉が固くなって体を弓のように反り返らせる「後弓反張」などが起こることもあります。この時期は、高熱や不整脈などが起こりやすいため、とくに注意が必要な時期です。
第4期は回復期のことで、破傷風の症状は次第に軽快していきます。第4期になると痙攣は現れませんが、筋肉の強直、腱反射亢進などの症状はまだ残っています。
全身性破傷風でない局所性破傷風の場合は、傷口に近いところのみ筋肉の痙攣が起こり、頭部破傷風の場合は、頭部または顔面に病変が起こり、痙攣より筋肉がゆるむ「弛緩性」の脳神経麻痺が目立ちます。なお、局所性破傷風、頭部破傷風とも毒素が体中に広がると全身性破傷風に進行することがあります。
破傷風は、毒素が全身に広がると重症化するため、症状に気づいたら様子をみることは避け、すぐ医療機関を受診することが必要です。嚥下障害、開口障害、痙笑などの症状が現れたら、すぐに救急外来または外科か内科に相談しましょう。また、全身に痙攣がみられるときは躊躇せずに救急車を呼びましょう。
破傷風になったら光や音は避けることが必要
破傷風を発症すると、ほんのわずかな光や小さな音にも反応し、筋肉の硬直ともに激しい痛みを伴う痙攣を起こしてしまうことがあります。破傷風は、重症化しても意識ははっきりしているため、痙攣を起こすたびに患者さんは激しい痛みに苦しみます。そこで、破傷風患者さんが痙攣を起こさないようにするため、光や音を遮断した暗室に安静にすることが必要です。
傷口は十分に洗浄し、砂や土などの異物や壊死した組織を取り除きます。一見傷口が完治しているように見えても、傷口の奥深くに砂や木片などが残っていると、破傷風菌も生存し続けるため、必ず取り除くことが必要です。
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破傷風の原因、感染経路、症状、死亡率などについてご紹介しました。傷口のケアに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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