破傷風の検査、診断、治療 血液検査で判明?入院が必要?
- 作成:2016/09/27
破傷風は死亡率が3割から4割と高い感染症で、治療は基本的に入院しておこなうこととなります。治療に使う薬の種類や検査・診断の方法を含めて、医師監修記事でわかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
目次
破傷風の検査と診断
破傷風の感染の有無は、血液検査で確認できません。破傷風の可能性がある場合は、「培養検査」を行うことがあります。「培養検査」とは、傷口から採取した細菌を増殖して破傷風菌の有無を調べる方法です。検査の結果、破傷風菌が検出されれば破傷風と診断が確定されます。
ただし、培養検査で採取した細菌には破傷風菌が含まれていなかったとしても、採取した以外の部位に破傷風菌が生存していることがあります。このため、培養検査で「陰性」であっても、破傷風に感染している可能性は否定できません。
また、細菌を採取してから培養検査の結果が明らかになるまでには数日かかります。破傷風に感染している場合、培養検査の結果を待っていると、破傷風の症状が進行して重症化することも珍しくありません。通常は、培養検査の結果が出る前であっても、破傷風特有の症状がみられる場合は、破傷風の治療を開始します。なお、破傷風の感染の有無を最終的に確定するためには医師による診断が必要です。
破傷風の治療法 入院が必要?
破傷風が作り出すテタノスパスミンという毒素は、神経の細胞に結合すると二度と離れません。そこで、神経にテタノスパスミンの結合が広がる前に、早期に治療を始めることが大切です。
破傷風と診断された場合、通常は入院治療を行います。破傷風の治療法として、テタノスパスミンを中和させる働きのある「破傷風免疫ヒトグロブリン(TIG)」という薬を投与します。ただし、TIGは、神経と結合していない血液中に存在する毒素は中和することが可能ですが、すでに神経組織に結合した毒素は中和できないと考えられています。
抗菌薬による破傷風の治療効果は、壊死組織の切除やTIGに比べると小さいといわれていますが、ペニシリンやドキシサイクリン、メトロニダゾールなどを投与することがあります。また、破傷風患者さんは、破傷風菌だけでなく、「黄色ブドウ球菌」や「大腸菌」などといった別の細菌も感染していることが少なくありません。黄色ブドウ球菌や大腸菌などの細菌は、風邪など別の感染症を起こして肺炎などの合併症を起こす危険性もあるため、「セファゾリン」などの「第一世代セフェム系抗菌薬」や「セフォチアム」などの「第二世代セフェム系抗菌薬」といわれるものを使用して、黄色ブドウ球菌や大腸菌など細菌の増殖を抑えることがあります。
また、全身の症状を軽減させるための対症療法も合わせて行います。痙攣や筋肉の硬直などの症状に対しては、鎮静させる働きがある「ミダゾラム」、筋肉を弛緩させ不安や痛みなどを取り除く働きがある「ジアゼパム」「ロラゼパム」などという薬を使用しますが、重症の場合は、「クロルプロマジン」「プロメタジン」「オピスタン」という薬を組み合わせて使用することもあります。頻脈や不整脈などが続く場合は、抗不整脈薬である「リドカインやβ遮断薬」などを使用します。
破傷風が重症化して呼吸に関わる筋肉が硬直すると、呼吸困難を起こす場合が珍しくありません。呼吸困難を含め症状が重いときは、集中治療室で治療を行うことがあります。自力呼吸が困難な場合は、気管を切開して一時的に人工呼吸器の装着が必要になることもあります。
なお、破傷風は発症しただけでは体内に免疫を作ることはできません。破傷風に再び感染しないためには、破傷風が完治してから予防接種を受けて、体内に免疫を獲得することが必要です。
破傷風は消毒薬で予防できない?
今のところ、破傷風を確実に予防する方法は予防接種のみです。予防接種により免疫がある間は、破傷風に感染する可能性はほぼゼロとされています。ただし、予防接種の有効期間は約10年間とされているため、定期的にワクチンを接種することが必要です。日本では、破傷風患者の95%以上が30歳以上ですが、これは子どもの頃に予防接種を受けたものの、成人になり免疫がなくなった状態のため感染したと考えられています。
傷口に土などが触れた直後に傷口を消毒すれば破傷風は予防できる、と思っている方も少なくありませんが、これは誤りです。破傷風菌は、土中では「芽胞」という状態で潜んでいます。芽胞の状態では休眠状態ですが、傷口から体内に入ると、目を覚まして活動を始めるのです。
「芽胞」の状態では、熱や紫外線に大変強く、沸騰している水中で15分以上加熱しても生存し続けるとされています。このため、傷口を市販の消毒液で消毒した程度では、破傷風菌は死滅しません。傷口に土などがついた後は、大量の水でしっかり洗い流して細菌を落とすことが大切です。
また、傷口を洗った後は、絆創膏などで覆うのは避けましょう。傷口を絆創膏などで密閉してしまうと、傷口内は酸素が極端に少なくなり破傷風菌などの細菌が増殖しやすい環境になってしまいます。破傷風菌の増殖を防ぐためには、傷口は空気に触れるようにしつつ、清潔に保つようにしましょう。
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破傷風の検査、診断、治療などについてご紹介しました。傷口のケアに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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