溶連菌感染症とは?感染経路、潜伏期間、流行時期は?再発する?原因となる菌の多様性も解説
- 作成:2016/03/09
溶連菌感染症の原因となる「溶血性連鎖球菌」には多様な種類がありますが、人間に影響するのは多くが「A群」に分類されるものです。どのようなに感染するのかや流行時期を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
溶連菌ってそもそも何?多様な種類
溶連菌(ようれんきん)とは、正確には「溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)」という名前です。血液を含んだ培地に、溶連菌を入れると血液の色がなくなる「溶血」という反応を起こします。また、丸い形の菌(球菌)がいくつも連鎖して存在するため、このような名前がついています。
溶連菌は、A群からH群、K群からW群までの計21群がありますが、とくにヒトに感染して病気を起こすのはA群溶連菌が95%程度を占めると考えられています。A群溶連菌による感染症には急性咽頭炎、猩紅熱(しょうこうねつ、喉の炎症や全身の発疹が特徴)、扁桃炎、中耳炎、肺炎、髄膜炎、伝染性膿痂疹(とびひ)など多くの種類があります。
この他、主にC群やG群が風邪のような症状を起こすほか、B群溶連菌は新生児の敗血症や髄膜炎の原因になる菌として注目されています。
溶連菌感染症の原因の菌とは
A群のうち、とくに感染を起こすことが多いのが「A群β溶連菌(べーたようれんきん)」という菌です。A群β溶連菌は日本では5種類程度が確認されており、世界中では、20種類程度があると言われています。A群β溶連菌だけでも多くの種類がある以上、一度かかってもその後何度も感染する可能性があります。
溶連菌は感染する?どのような感染経路?
溶連菌感染症はうつる場合があります。乳児では、お母さんからの免疫が身体を守ってくれるため感染が少ないですが、2歳から10歳くらいにかけて患者が多くなります。また、大人でも感染する例があります。
咳やくしゃみで菌が飛び散ったり(飛沫感染)、手についた菌が口から入る(経口感染)ことで感染が起きます。また皮膚の場合、虫さされやあせもなどを引っかいた小さな傷口から菌が入って感染を起こします。
そのため、家族の中に溶連菌感染症の患者さんがいる場合はマスクや手洗いなど予防をしっかりと行いましょう。タオルの共有もしてはいけません。
溶連菌の潜伏期間はどれくらい?
菌が身体に入り込んでから、実際に症状が出るまでの時間を「潜伏期間」と言います。溶連菌の潜伏期間は2日から5日間程度と言われています。
溶連菌感染症に流行時期はある?
感染症はそれぞれ流行しやすい時期があります。溶連菌の場合、咽頭炎や扁桃炎などの呼吸器への感染は、冬から春にかけての流行が多く、皮膚への感染症は夏に多くなる傾向があります。冬は空気の乾燥のため、喉など呼吸器の粘膜が弱くなり、溶連菌に対して、感染を防御する力が弱くなるためと考えられます。
また夏場は虫さされやあせもなどで身体を引っかく機会が多くなり、皮膚に傷が出来やすい時期と言えます。この小さな傷口から溶連菌が入り込み感染するケースが多くなると考えられています。
このように溶連菌感染の流行には一定の季節性がありますが、もちろん絶対ではありません。一年中感染する可能性があることを覚えておきましょう。
溶連菌感染症は一度かかると免疫ができる?再発する?繰り返す?
何度も溶連菌感染症を繰り返す患者さんがいます。これには以下のようないくつかの原因が考えられます。
(1)溶連菌にはたくさんの種類があるため、別な種類の溶連菌に感染している
(2)溶連菌に対して免疫ができにくい体質である
(3)抗生物質を内服する期間が短く、溶連菌が身体に残っていて症状が再発している
(4)家族の中に、無症状の保菌者がいる
(5)実は溶連菌感染症ではない
(1)について、溶連菌には多くの種類がありA群β溶連菌だけでも数十種類があるため、別な種類の菌に感染している可能性があります。 同じ菌に感染しても、体質により免疫ができにくかったり、免疫ができても短い期間で消えてしまう体質の人がいます。このような場合、繰り返し感染を起こす可能性があります。
(2)抗生物質を処方されても、症状がなくなると内服を途中でやめてしまう人がいます。このような場合、症状がなくなっても溶連菌が身体から完全には退治されずに残ってしまう場合があり、しばらく時間が経ったり体力が落ちたりすると症状が再発してしまうケースがあります。
(3)菌を身体に持っていても、特に症状がない人を「保菌者(ほきんしゃ)」と呼びます。溶連菌はとくに珍しい菌ではなく、喉の奥の「咽頭」という部分に住んでいたり、皮膚に住んでいる場合もよくあります。
このように身体に継続的に存在するがとくに症状を起こしていない場合を「保菌」と呼び、菌が増殖して身体に有害な症状を起こす場合を「感染」と呼んで区別しているのです。
(4)「保菌」の状態では身体に何の影響もないため、薬を飲んで溶連菌を退治する必要はありません。しかし、家族の中に保菌者がいると他の家族に溶連菌感染を起こす場合があります。溶連菌感染を繰り返す場合、症状がない他の家族に保菌者がいないか検査を行う場合があります。
(5)溶連菌の保菌者は溶連菌検査を行うと常に「陽性」の結果が出ます。咽頭炎を起こした場合に本当に溶連菌感染症か、他のウイルスによる咽頭炎かどうかを区別するのは専門家でも難しい場合があります。したがって、他の原因による咽頭炎を溶連菌感染症として間違って診断されているケースが存在します。
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溶連菌感染症の種類や感染経路についご紹介しました。もしかして溶連菌感染症かもしれないと不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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