腎臓がんの手術治療、費用、入院期間、術後の食事制限と通院
- 作成:2016/05/31
腎臓がんの治療の基本は手術です。がんの進行度や転移の有無などを総合的に判断して、手術が異なってきます。各種法の概要やメリット、術後の食事制限などの生活への影響を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
腎臓がんの手術はどんなもの?
腹腔鏡下腎部分切除術とは?
腹腔鏡補助下小切開手術とは?
進行した腎臓がんに対する拡大手術とは?
手術費用はどれくらい?
腎臓がんになると食事制限に?食べられないものは?
腎臓がんだと必ず入院?入院期間はどれくらい?
腎臓がんの手術後の生活への影響 通院も必要?
腎臓がんの手術はどんなもの?
腎臓がんにおいてどのような手術方法を選択するかは、がんの大きさや進行度、転移の有無、全身状態などによって決まります。手術方法には、お腹を数か所小さく切り、腹腔鏡とよばれるカメラで確認しながら手術をする「腹腔鏡下手術」、お腹を大きく切って行う「開腹手術」、腹腔鏡と開腹手術の利点を合わせた「腹腔鏡補助下小切開手術」があります。
腎臓がんが、腎臓に留まっている場合には、がんとその周辺のみを切除する部分切除術を選択し、がんが腎臓の外へ出ている場合や腎臓に留まっていても大きかったり多発している場合には腎臓そのものを摘出する手術が行われます。
腹腔鏡下腎部分切除術とは?
比較的小さな、腎臓に留まっている腎がんに対して、腹腔鏡を用いて切除する手術方法です。お腹に4、5カ所、1cm程度切開し、そこから腹腔鏡と手術に必要な専門の器具を使用して手術を行います。直接がんを目で確認することができないので、開腹手術より技術を必要としますが、腹腔鏡を用いることにより小さな傷で行えるという利点があります。また、出血量を少なくし、腎臓を温存できます。少し大きながんでも、腎臓から突出しているような場合にはこの手術を選択する病院もあります。腹腔鏡手術は傷が小さいので、手術後の痛みも少なく、早く退院できる可能性が高いです。
腹腔鏡補助下小切開手術とは?
少し大きながんや腎臓に埋まっているタイプのがんの場合に、開腹術よりは小さい約5センチから7センチの切開を行い、そこから内視鏡や手術器具を挿入して手術を行います。傷は少し大きくなりますが、手指を傷の中に挿入せずに手術を行うので感染のリスクが低く、腹腔鏡手術より縫合(ほうごう、傷跡を縫い合わせること)や止血が容易という利点があります。また、切開が小さいため術後の痛みが少なく、早く回復できる可能性があります。腹腔鏡手術と開腹手術の両方の利点を合わせた手術方法で、高い安全性を保ち、低コストで行えるため、腎臓がんに対してこの手術を行う施設も増えてきています。
進行した腎臓がんに対する拡大手術とは?
腎臓がんが周囲の筋肉や肝臓、腸、血管などの臓器へ進行した場合でも、全身状態が良く、手術でがんを取り除くことができれば、長期の生存を期待することができます。このような場合には、腎臓だけでなく、がんが進行した臓器を含めて一緒に切除する必要があります。腹腔鏡手術や小切開手術に比べて切開による傷は大きくなりますが、目的となるがんや臓器を目で確認できる利点があります。傷が大きいので、手術後に痛みが強いこともありますが、鎮痛薬によって痛みを感じないように配慮されます。
患者さんの状態によって、手術前後に、分子標的薬治療を行い、がんの縮小を期待することがあります。
手術費用はどれくらい?
腎摘除術で入院すると14日間の入院で、約90万円の費用がかかります。ただし、保険が適用されるので、これらの医療費のうち自己負担分を支払います。通常であれば3割負担となります。しかし、1カ月の医療費の自己負担額が高額になる場合には、高額療養費制度によって自己負担限度額まで支払いを行えばよいことになっています。自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。手続きなどの詳細については、病院の医療相談所や近くの社会保険事務所などで確認してください。
腎臓がんになると食事制限に?食べられないものは?
腎臓がんで腎臓を切除または摘出した後には、腎臓に負荷をかけないために食事制限をした方がよいと考えられています。過剰な塩分やタンパク質の摂取は、残った腎臓の組織に負担をかける可能性があるため、塩分制限やタンパク質制限をした方がよいといわれています。
食塩の制限は、男性は9グラム未満、女性では7.5グラム未満を目標に、タンパク質の制限は体重あたり0.8g以下がよいです。例えば、体重が50kgの方は、1日40gのタンパク質が適当です。ただし、高血圧の有無や腎機能障害の程度によってこれらの制限はより厳しくなることもありますので、担当医に相談するようにしましょう。
病院に栄養相談をできる場所があることも多いので、自分で行うのが不安な方は利用するとよいです。最近では減塩食や低たんぱく食の宅配サービスもあるので、調べてみるとよいでしょう。
腎臓がんだと必ず入院?入院期間はどれくらい?
腎臓がんは早期であっても進行していても基本的に手術を行うので、入院が必要になります。腎臓に留まっているがんの場合には、腎臓をがんとその周囲だけ切除する「腎部分切除術」か腎臓そのものを摘出する「根治的腎摘除術(こんちてきじんてきじょじゅつ)」を行い、腎臓の周囲に進行しているがんの場合には根治的腎摘除術に加えて周囲の臓器を一緒に切除する手術を行います。骨や肺、脳などの腎臓から遠く離れた場所に転移している腎臓がんに対しては、腎摘除術と分子標的薬による免疫療法または分子標的薬のみの治療を行います。
手術の仕方には、「腹腔鏡」とよばれるお腹の中を観察するカメラを挿入して小さい傷で行う腹腔鏡手術とお腹を切って行う開腹手術があります。病院によっては、腹腔鏡下小切開手術といって腹腔鏡手術と開腹手術の利点を合わせた手術方法を行う所もあります。どの方法の手術になるかは、病状やがんの大きさ、合併症の有無などによっても変わるので医師と相談するようにしてください。
入院日数の目安ですが、腹腔鏡下手術の場合には平均10日から12日、開腹手術の場合には平均10日から16日、分子標的薬による免疫療法の場合でも平均14日から21日です。病院によって異なることもあるので、事前に確認するようにしましょう。
腎臓がんの手術後の生活への影響 通院も必要?
腎臓がんの場合には、腎臓の一部または全てを摘出するので残っている腎臓に負担がかからないようにすることが大切です。残っている腎臓に負担がかかると徐々に腎機能障害が進行し、自分の力では体の中の余分な水分や老廃物を尿として排出できなくなる「末期腎不全」という状態を引き起こす恐れがあります。
高血圧や肥満、糖尿病、喫煙、高タンパクの食事、脱水などは腎機能に悪影響を起こす可能性があることがわかっています。そのため腎臓がんの手術後には、禁煙、血圧の管理、適正な体重管理、減塩、動物性タンパク質の摂取制限、適度な水分補給を心がけるようにします。運動に関しては、過度に負荷がかかるような筋力トレーニングなどは控えた方がよいですが、ウォーキングやジョギング、テニスなどの有酸素運動は体によいと考えられています。
退院後も、定期的に外来で採血やCTの検査を実施して、再発の心配がないかを確認します。担当医の方針にもよりますが、術後数年間は3カ月から6カ月ごとにCTを行うことが多いです。腎臓がんは10年以上経過しても再発する可能性のあるがんなので、5年以上再発しなかったとしても定期的に検査をすることが大切です。
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腎臓がんの手術治療や術後の生活への影響について、ご紹介しました。腎臓の状態に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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