盲腸(虫垂)炎の手術、入院期間、費用 開腹?腹腔鏡?食事制限あり?おならがサインに?
- 作成:2016/03/07
盲腸(正式には虫垂炎)は手術になる人とならない人がいますが、これはかつての医療の考え方の影響によるものです。どのような手術をするのかや入院期間を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
盲腸で手術になる人とならない人がいるのはなぜ?
実は、盲腸(正しくは、虫垂炎)には、はっきりとした治療方針ができておらず、医師や病院によってどのような治療を行うかがさまざまであるという背景があります。それでも以前までは、炎症の原因となる「虫垂(ちゅうすい)」は体に不要な臓器なので、再発の手間を考えると切っておいたほうが良いという意見が多数で、虫垂を切除する手術が一般的でした。
しかし2014年に、今まで役目がないと考えられてきた虫垂に、「腸内の細菌バランスを保つ役割があった」という研究成果が発表されました。また、抗菌薬だけで治療した場合、再発するのは3割だという研究も発表されました。再発率が3割というのを多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれですが、初回で軽症の盲腸だった場合、抗菌薬だけで治そうという医師が増えたように思われます。また、抗菌薬で病気の起きた部分を小さくしてから手術を行うことも多いようです。
抗菌薬だけでは、再発の不安を抱えたまま生活しなければなりませんし、かといって手術では痛みや麻酔に関連する不安や恐怖があると思います。治療の際は、納得できるまで、しっかり医師と話し合いましょう。
盲腸の開腹手術とはどんなもの?
お腹を切る開腹手術には2通りあります。1つは「傍腹直筋切開法(ぼうふくちょくきんせっかいほう)」と呼ばれ、腹直筋の外側を4センチから6センチ程度切るものです。術後に切ったところのお腹の壁がしっかりくっついてくれず、腸などが皮膚の下にぽこっと飛び出してしまう「腹壁瘢痕ヘルニア(ふくへきはんこんへるにあ)」がおこる可能性があります。
もう一つは「交叉切開法(こうさせっかいほう)」と呼ばれ、虫垂の上を足の付け根と並行に4センチから6センチ切るものです。神経や筋を切断しないので回復が早いというメリットがあります。
腹腔鏡を使う場合も?
以前は上記の方法を腰から下だけ麻酔をかける方法で行っていましたが、現在では全身麻酔下で、腹腔鏡(ふくくうきょう)を使う手術が多く行われています。腹腔鏡を使った手術はおなかに小さい穴をあけて、そこから先端にはさみやメスの付いた棒を入れて手術を行うもので、手術をする医師の技量が必要ですが、患者さんの体に対する負担は圧倒的に軽いものです。
盲腸手術の費用、入院期間、手術時間
手術となると気になるのは入院費用や期間かと思います。一体どのような感じなのでしょうか。
近年一般的な腹腔鏡手術で、炎症が軽い方なら術後3日から4日程度、開腹手術の方であれば術後7日から10日程度で退院できます。術後に膿んでしまったり、炎症を起こしてしまったりした場合は入院が長引いてしまう事もあります。
また、手術をしなければ入院する必要はないと思われがちですが、決してそのようなことはありません。盲腸では、とにかく腸を休めるために、絶食する必要があります。ですから必要な栄養分や水分を補給するために入院して点滴をしてもらわなければなりません。抗生剤による治療における入院期間は一般的に1週間と言われています。
なお、盲腸の手術費用は40万円程度とされています。健康保険の適応になりますので、3割負担となると12万円となります。さらに高額療養費制度を使えば、8万円程度の自己負担で済むことになります。不安な場合は、医療機関や自治体に問い合わせてみると良いでしょう。
盲腸の手術後 痛みは残る?
手術ですので、手術後に多少の痛みは残ります。特に開腹手術で筋肉を切っていれば痛みだけでなく、術後しばらくは腹筋に力を入れられない状態が続きます。個人の回復力にもよりますが、1カ月くらいはお腹に力をいれない安静生活をしていたほうが良いでしょう。
盲腸炎手術前後に、食事制限はある?おならがサインに?
手術では腸の動きをわざと止めますし、腸を切ってしまっているので、腸の動きは非常に悪い状態になっています。そこに食べ物を流し込んでは、食べ物が停滞してしまって炎症が悪化する原因になります。基本的に術後2日間くらいは絶食となります。ご飯を開始する目安となるのは「おなら」です。お腹のガスが出るということは腸が動き始めている証拠になりますので、ご飯を食べても大丈夫という事になります。術後は重湯から三分粥、五分粥、全粥と、だんだんと消化が必要な食べ物を増やしていく事になります。
【盲腸関連の他の記事】
盲腸(虫垂)炎の原因と盲腸の場所 遺伝やストレスも関係?「盲腸=虫垂炎」?左にあることも?
盲腸(虫垂)炎の症状 初期の痛みに特徴?子供のサインは?下痢や発熱が起きる?痛みはどれくらい続く?
盲腸(虫垂)炎の疑問 再発する?放置すると破裂するの?子供もなる?慢性虫垂炎とは何?
盲腸(虫垂)炎の検査と診断 CTをとる?何科に行く?血液検査の意味は?
盲腸(虫垂)炎の治療薬と副作用 「散らす」の意味や食事の注意点も解説
盲腸癌とは?症状、治療、予後、生存率、大腸癌との関係は?症状がでにくい理由は?
盲腸の手術についてご紹介しました。盲腸の手術を控えて、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。