腹腔鏡手術後の運動と妊娠中の手術の考え方 胎児、母体に影響?
- 作成:2016/06/27
腹腔鏡で行う手術は、少しずつ一般的になってきています。腹腔鏡手術後の運動の可否、妊娠中の手術の考え方について、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
腹腔鏡手術後の運動の考え方
手術の種類にもよりますが、腹腔鏡手術の場合、平均して1週間から10日程度で退院となります。退院後は、入院期間と同じ日数程度を自宅療養期間の目安として考えておくとよいでしょう。退院後は徐々に術前の日常生活に戻していって問題ありません。およそ退院後2週間程度で、外来を受診し、術後の経過や創部(傷の部分)の確認などを行います。多くの場合では、術後2週間くらいから仕事への復帰が可能となり、軽い運動や旅行に関しては術後4週間程度で可能になるとされています。術後3カ月程度経てば、傷もしっかり治りますので、スポーツなども制限なく行うことができます。とはいえ、患者さんごとの回復の状況や経過、手術によっても変わってきますので、あくまで目安と考えてください。具体的な話は、担当医師に相談することをお勧めします。
妊娠中の腹腔鏡手術は安全?危険?
妊娠中の方の場合、虫垂炎(盲腸)を発症すると、重症化しやすく保存的治療だけでは軽快しないことや、妊娠中の卵巣嚢腫はねじれが生じる「茎捻転(けいねんてん)」という状態になりやすく手術が必要となることがあります。そのため妊娠中の方に対して手術治療が望ましいと判断された場合には手術が選択されますが、いくつかの問題点に注意する必要があります。
まず、手術による影響が母体だけでなく胎児に及ぶ可能性があることです。腹腔鏡あるいは開腹に関わらず、手術において最も重要なのは全身麻酔による胎児への影響です。現在のところ、吸入麻酔薬や静脈麻酔薬といった一般的に使われる麻酔薬の胎児への催奇形性(奇形をもたらすこと)は確認されていませんが、絶対に安全と言い切ることもできないため、可能であれば胎児の器官形成期(胎児の体のもとが作られる時期)である4週から7週の間は避けた方が望ましいです。また、腹腔鏡手術では、「気腹」と言って炭酸ガスによってお腹を膨らませるため、その圧によって子宮を圧迫して早産を誘発したり、胎児への栄養の循環などに影響を及ぼす可能性があります。さらに子宮が大きくなることで、手術中のカメラを介して見える視野が狭まる可能性があります。
一方で、妊娠中の最適な手術時期については、統一した見解は得られていないのが実情です。米国の消化器医師の専門団体である「Society of American Gastrointestinal and Endoscopic Surgeons(SAGES)」によるガイドラインでは、妊娠中のいかなる時期でも安全であり、手術が必要になった時が最適な時期であるとしています。一方で、妊娠中期の15週から27週までの手術については、安全性を疑問視する報告も多いです。手術時期は、病気の影響や深刻さに加えて、気腹や麻酔薬による胎児への影響、子宮の大きさ等を総合的に考慮して、決定する必要があるといえます。実際に手術を検討される方は、納得できるまで医師とよく話し合うのが良いでしょう。
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腹腔鏡手術後の運動、妊娠中の手術についてご紹介しました。御自身や近い方の手術に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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