てんかんの診療科、検査、診断基準 脳波や血液で何がわかる?MRIも使う?

  • 作成:2016/08/09

てんかんでは、脳において電気的な異常が起きるため、脳波の検査を実施するほか、他の病気の可能壊死を否定するためにも血液検査をすることがあります。診療科や診断基準と合わせて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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目次


てんかんには、大きくわけて、原因で2種類、脳の異常の起きる部分で2種類に分けられ、それぞれの掛け合わせで、4種類にわかれます。記事を読むうえで、注意をお願いいたします。詳しくは、こちらで解説しています。

症候性全般てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳全体のもの
症候性部分てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳の一部のもの
特発性全般てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳全体のもの
特発性部分てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳の一部のもの

てんかんの診療科は?

てんかんの診療は、小児の領域では主に小児科医や小児神経科医が、成人および高齢者の領域では、神経内科医をはじめ、脳神経外科医、精神科医、神経放射線科医などが関与することになります。日本では、成人を対象としたてんかんの専門医の数が少なく、小児てんかんの患者さんが成人した後に続く治療を元々の小児科病院で、担当の先生に診てもらっている場合も珍しくないようです。また、成人の患者さんについては神経内科、脳神経外科、精神科のいずれの診療科が、てんかんを担当するのかも不明確なことも多いため、地域の一般診療医から専門医につながる一貫したてんかんの診療モデルが形成されていないのが実情となっています。

本来、てんかんは、てんかんの専門医に診てもらうことがもっとも望ましいとされています。何故なら、てんかんは人によって症状が大きく異なり、その治療には生活上の問題、長期の治療を受け入れなければならないこと、治療終了の決定を下す難しさなど、さまざまなことを広く考えて、長い期間にわたって治療を受ける必要がある病気だからです。さらに、患者さんばかりでなく、医師にとっても、深い経験と幅広い知識が要求される病気です。もし、一般診療の段階で、診断や治療が困難なときは、現在、日本の各地に「てんかんセンター」がいくつか設置されていますので、そちらから紹介してもらうのもよいかもしれません。2013年8月現在のデータでは、日本精神神経学会による精神科専門医の数が、およそ10,000名に対して、日本てんかん学会のてんかん専門医は435名となっていて、数が多いとは言えません。

てんかんの検査 脳波を調べる?MRIを使う?

てんかんの検査は、脳がけいれんをはじめとするてんかんの発作を起こしやすい(異常興奮しやすい)素質があるかどうかをみる「脳波検査」と、てんかんの原因となる脳の構造や物理的な異常(正式には「器質的病変」といいます)である病気を特定するための「脳の画像検査」に大別されます。

(1)脳波検査;
てんかんの診断には、脳波検査が最も重要とされます。頭皮に電極を装着し、脳の電気的な活動を増幅(ぞうふく)させて記録するのが脳波検査です。一般に、起きている(覚醒)時と眠っている(睡眠)時の両方を記録しますが、特に睡眠時は、てんかん波が非常に出現しやすいので、睡眠時脳波を記録する事は、てんかんの診断においてはとくに重要です。通常は、検査前日の睡眠時間を減らしてもらって眠れる状況につくりますが、どうしても自然に眠れない場合には、軽い睡眠導入剤(「トリクロリールシロップ」や「エスクレ坐薬」など)を使うこともあります。また、実際に発作を起こしている時の症状と、脳波の変化の関係を見るために、「ビデオ脳波同時記録」や「終夜睡眠脳波」などというものも行われます。

(2)脳画像検査;
脳のCT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査( は、両方とも脳の器質的病変(脳の物理的な異常)を調べる検査で、特に症候性てんかん(病気が原因のてんかん)の診断の場合には重要となります。CT検査は短時間で検査できることが利点で、脳の石灰化(せっかいか;てんかんの焦点、つまり異常の起こる部位となっていることがあります)を検出するのにはMRI検査より優れています。一方、MRI検査は30分程度の検査時間はかかりますが、脳の詳細な構造を調べるためにはCTよりはるかに優れていますので、難治性てんかんの場合には必須の検査といわれています。

「SPECT検査」(CTの1種)は、診断に必須ではありませんが、手術療法を考える時などに行われます。SPECT検査は、( 脳の血流を測定したり、脳の抑制性伝達物質(脳の電気的活動を抑える伝達物質)のレセプターを検査する「脳核医学検査」と呼ばれる検査で、てんかんの病巣の部位診断に役立ちます。てんかんの焦点部位は疲労していて、脳血流が低下 していることが多いため、脳血流低下を示す部位がてんかん病巣と考えることが可能です。また、てんかんの焦点では抑制性伝達物質レセプターが減少、つまり異常な電気的興奮を起こしやすいと考えられています。

てんかんは、血液検査でわかることがある?

けいれんなどの発作や発作の重積状態を起こす病気は、てんかん以外にも多数あります。てんかん以外の原因による発作は、「急性症候性発作(きゅうせいしょうこうせいほっさ)」とよばれ、てんかんと鑑別(区別すること)して、診断することが重要とされています。急性症候性発作とは、具体的には「急性全身性疾患」「急性代謝性疾患」「急性中毒性疾患」「急性中枢神経疾患(感染症、脳卒中、頭部外傷、急性アルコール中毒、急性アルコール離脱など)」などによって起こる発作ですが、急性症候性発作とは「時間的に密接に関連して起こる発作」と定義されています。急性疾患と同時にけいれん発作が1回のみ起こることが多いのが特徴です。

原因を調べるために、血液検査や尿検査などが行われます。血液や尿の検査などでわかる原因には、感染症(炎症反応など)、代謝の異常(電解質、アンモニア、血糖、アミノ酸・有機酸、血液ガス、乳酸・ピルビン酸など)、脳血管障害(凝固検査など)、薬剤(血中濃度)などが挙げられます。低血糖症、低カリウム血症などが急性症候性発作の代表例です。血液検査は、急性症候性発作と、てんかんを区別するために、有用と言えます。

血液検査のもう1つの目的は、薬の副作用を調べるための定期的なチェックを行うことにあります。抗てんかん薬は長期間にわたって服用することも多いため、自覚症状などがなくても、貧血や肝臓の機能のチェックすることが必要になります。また、抗てんかん薬の投与量が適当かどうか、血液中の薬の濃度の検査も行います。投与された薬の量が適当なのか、過剰・不足していないのか、検査結果に基づいて、ひとりひとりの体の状態に合わせて治療計画を立てられます。血中薬物濃度は、服薬してから採血するまでの時間によって著しく変化する薬もありますので、医療者は指定された時間に採血できるよう協力してもらうようお願いしています。

てんかんの診断基準

てんかんの診断は、一般的に次のような手順で行われます。

1.第一に (a) (b) の十分な情報を収集すること、および身体的診察;
(a) 病歴;①既往歴(きおうれき;これまでの病気)、②現病歴(現在の病気)、③家族歴(家族の病気など)、④出産歴、⑤職歴など
(b) 発作の状況;①起始部(きしぶ;発作の始る部位)、②左右差、③意識状態、④持続時間、⑤経過など。また、発作の現場を目撃することは、てんかんの診断に最も有用とされています。主訴(しゅそ;最も中心となる症状、患者が病気だと感じる部分)は多くの場合に、けいれん発作(非けいれん発作の場合もありますが)ですが、てんかんと診断するためには、少なくとも2回以上の発作が必要とされます。

2.てんかん発作およびてんかん(症候群)の分類診断;治療や予後の推測にも必要とされ、必須となっています。
(A)発作分類;脳の以上が起きる部分に応じて①部分発作、②全般発作、③分類不能の3つに大別されます。
(A-①)部分発作;(a)単純部分発作(意識消失なし)、(b)複雑部分発作(意識消失を伴う)、(c)部分発作から全般性強直・間代発作へ移行する発作(「2次性全般化」。脳の一部で始まった異常が全体に日炉があること)の3つに分かれます。
(A-②)全般発作;①欠神、②ミオクロニー、③間代、④強直、⑤強直・間代、⑥脱力発作の6つに分類されます。
(B)てんかん(症候群);①局在関連(部分)てんかん、②全般てんかん、③未決定てんかんの3つに大別されます。
(B-①)局在関連てんかん;(a)特発性(原因が不明なもの)、(b)症候性(病気が原因のもの)、(c)潜因性(脳に原因が潜んでいる可能性のあるもの)に分類されます。
(B-②)全般てんかん;(a)特発性、(b)潜因性または症候性、(c)症候性に分類されます。

特発性全般てんかんは年齢に関連して発症するので、診断においては年齢を考慮します。「潜因性(せんいんせい)」とは基盤となる原因は推定できるものの、確定していないものを指しています。

3.脳波検査;てんかんの診断に最も有用な検査とされます。
十分な情報収集のもと、およその診断(てんかんか、てんかんでないか。発作や症候の)を考慮して、脳波検査をオーダーすることがすすめられています。種々の「賦活検査(ふかつけんさ;光刺激、過呼吸、睡眠などで“てんかん脳波”を誘発するものです)」を的確に利用します。

4.神経画像検査;
てんかん疑いの患者さんは原則、MRIまたはCT検査を受けるべきとされています。両者のいずれをも選択可能な場合、MRIが推奨されます。しかし、明らかに原因不明なてんかんの場合、器質的異常(身体のなんらかの異常)の頻度がきわめて低いので、画像検査は、必ずしも必要としません。


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てんかんの検査や診断基準についてご紹介しました。自身や近いが「てんかんかもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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