わきがの原因、予防、疑問 遺伝?うつる?何歳で発症?「汗臭い」との差は?発症は突然?
- 作成:2016/09/05
わきがとは、わきから独特のにおいがして、まわりに「悪臭」として認識される状態です。海外では一般的ですが、日本では、においのする方が少ないため、「病気」として認識する傾向が強いようです。「汗臭い」との違いなどの疑問を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
- わきがとは何か?
- わきがと多汗症は何が違う?
- わきがと「汗臭い」はどう違う?
- わきがになる原因は遺伝?遺伝以外でもなる?
- わきがは他人にうつる?
- わきがは男性でも女性でもなる?
- わきがはいつからなる?子供でも発症する?
- わきがは突然発症する?
- わきがの人の割合 外国人は多い?日本人は少ない?
- わきがは予防できる?
わきがとは何か?
「わきが」とは脇に汗をかくことで特有の臭いが生じて、その程度が強くいため、周囲の人に不快な感覚を与えるものを指しています。医学用語では「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれています。
脇の臭いには個人差があり、ある程度は誰にでもあるものです。わきがの診断には特に検査はなく、臭いが強くて周囲の人の多くが不快に感じるものが、「わきが」というものであり、気にするのが本人のみであって周囲の人が不快に思わないものは「わきが」ではありません。
脇の臭いの強さは民族により違っており、西洋人や黒人では脇の臭いの強い人が多数派で、日本人では脇の臭いの弱い人が多数派です。このため、臭いの強さは同じであっても、どのような社会で生活しているかで、「わきが」であるかどうかの判断は変わってきます。世界的な基準と比較すると、日本では臭いに敏感な人が多いようです。
わきがと多汗症は何が違う?
「わきが」は臭いの問題であり、「多汗症」は発汗量の問題ですから、この二つは本来は全く異なる疾患です。しかし、この二つの疾患には関連性が認められています。というのは、わきが原因は脇の「アポクリン腺」というところから出てくる汗に含まれている脂肪酸を、皮膚の常在菌(常に存在している菌)が分解して、臭いのある物質に変化させることにあり、発汗がほぼ完全になくなればわきがの症状を改善できる可能性があるからです。
一方、わきがの臭いの強さを減らすには、発汗量を減らすことより、常在菌を減らす方が有効であるという研究があり、汗の量を少し減らすことで、わきがを完全に良くすることは難しいと考えられます。
わきがと「汗臭い」はどう違う?
「わきが」は脇のアポクリン腺から出てくる汗に含まれる脂肪酸が、皮膚の常在菌により分解されてできる物質の臭いによるものです。一方「汗臭い」と表現されるものは、運動したり体温が上がった時に、アポクリン腺でなく、全身の皮膚にあるエクリン腺から出てくる汗と関係しています。エクリン腺から出てくる汗は、本来無臭ですが、汗のために皮膚の角質がふやけると、角質成分である「ケラチン」という物質が皮膚の常在菌により分解されて、汗臭い臭いを発するようになります。したがって「汗臭い」のは入浴して体を洗って、清潔な衣服に着替えて涼しいところで安静にしていると即座に治ります。
一方、「わきが」の原因になるアポクリン腺からの発汗は、交感神経を刺激する精神的緊張などで促されます。アポクリン腺からの発汗は、涼しいところにいても起こり、困ったことに自分の脇の臭いを気にして緊張すると、ますます発汗して悪化してしまうということになります。
アポクリン腺は脇だけでなく、外陰部(性器周辺)、乳輪部、耳道部の皮膚にあり、このうち脇、外陰部、乳輪部のアポクリン腺は思春期以降に発育してきて、本来フェロモンとしての性質を持っています。アポクリン腺から出てくる汗には脂肪酸が含まれていますが、その脂肪酸が皮膚の常在菌により分解されて、強い臭いを持つ揮発性(常温で液体から気体になる性質)の物質となります。全身に分布するエクリン腺の汗には脂肪酸が含まれていないのでから、悪臭の原因とはなりません。
わきがになる原因は遺伝?遺伝以外でもなる?
人の脇の皮膚には個人差はあるものの、必ずアポクリン腺が存在していますが、その発育の程度は遺伝により決まっています。わきがの人は、アポクリン腺の数が多く、そのサイズも大きいため、アポクリン腺から分泌される汗の量も多くなっています。
わきがの遺伝形式は「優性遺伝」であることがわかっています。「優性遺伝」とは、なんらかの特性が、表れやすい特徴と、表れにくい特徴が混在している場合、特性として表れることです。したがって、わきがの人には、両親や兄弟にわきがの方がいる可能性が高いことが分かっています。
わきがは他人にうつる?
わきがの発生には皮膚の常在菌が関与することが明らかになっています。常在菌は誰の皮膚にも存在しますから、わきがは、他の人から感染したというものではなく、他の人にうつしてしまうということもありません。家族内にわきがの人が複数いることがありますが、これは一緒に住んでいるうちにうつったわけではなく、わきがは「優性遺伝」で遺伝しして、性質が表れやすい特徴があるからと考えられます。
わきがは男性でも女性でもなる?
わきがは男性でも女性でも発症しますが、男性の方がアポクリン腺の活性(化学反応がおこりやすいこと)が高いので、わきがはやや男性に多い傾向があります。
わきがはいつからなる?子供でも発症する?
わきがは、アポクリン腺という汗腺の活性が高い人に起こります。体のアポクリン腺の活性は小児期にはなく、思春期になると高まってきて中年期まで持続します。このため、わきがになるのは思春期(10歳前後)になってからです。やがて加齢によりアポクリン腺の活性は衰えてきますので、老年期にはわきがはなくなってきます。
わきがは突然発症する?
わきがの発症は、思春期に入って、脇の皮膚のアポクリン腺の活性が徐々に高まることが原因となります。これは生物学的現象ですから、ある日急に始まるというものではなく、体の成長により少しずつ起こってくる現象です。しかし、ある日友人に脇の臭いを指摘されたことがきっかけになって、その日から気になってくるということがあります。「突然発症」というイメージをもたれる方がいるのは、指摘後に気になり始めるようなことが、背景になっているものと思われます。
わきがの人の割合 外国人は多い?日本人は少ない?
黒人、西洋人にはわきの臭いの強いが多く、日本人などの東アジア人には少ないことが分かっています。しかし、わきがと診断される頻度は日本において高く、米国では少ないようです。これはわきがの定義は、「周囲にいる人が不快に感じる程度のわきの臭いを持つこと」であるからです。様々な人種の人が混在して生活している米国では、わきに臭いがあることの方が普通であるため、 「bromhidrosis (わきが)」と診断されることは少ないのです。
もしわきがで悩んでいて、現存するすべての治療を試しても納得できないというような場合には、考え方を変えて、米国などの外国で暮すことを将来の目標にして生活を設計していくことが、問題の解決となる可能性があります。
わきがは予防できる?
わきがは、皮膚の常在菌がアポクリン腺の汗に含まれる脂肪酸を分解して、悪臭のある物質が生じることにより発生します。したがってその予防には次の4項目を考えましょう。
1)汗を減らすこと
脇のアポクリン腺の汗は温度刺激ではなく、精神的な緊張などで出てきます。したがって暑いところへ出て行かないで、涼しいところにずっといるという戦略は、有効ではありません。むしろ、市販の制汗剤などを使ってみることなどをお勧めします。もしそれが有効であった場合には、脇の発汗を大幅に抑えることのできる「ボトックス治療」という治療を病院で受けることを考えても良いと思います。
2)脇の毛を処理して汗が脇にたまらないようにすること
脇に毛があることにより、出てきた汗がそこに貯まってとどまるようになると、毛は常在菌の繁殖の場となります。したがって、脇の毛を剃ったりレーザー脱毛などで処理しておくことは、わきがの改善につながります。
3)汗をかいたら早めに下着を交換すること
脇の汗が衣服につけば、衣服が乾いても衣服から臭いがするということになります。したがって汗のついた下着などは早めに交換しましょう。
4)皮膚の常在菌を減らすこと
医薬品、スキンケア商品などを塗って常在菌を減らすことは可能です。また入浴した時に抗菌剤配合のボディソープなどを使って洗浄するようにしましょう。
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わきがの原因や予防方法、疑問などについてご紹介しました。もしかしてわきがかもしれないと不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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