わきがの治療、手術 薬に副作用は?保険適用?手術にリスクあり?ボトックス注射や再発可能性も解説
- 作成:2016/09/06
わきがの場合、はじめに、においを抑える薬を使うこととなりますが、重症な場合や希望する場合は手術をすることがあります。ボトックス注射などの手術の種類や再発可能性を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
- わきがの治療 処方薬で塗り薬はある?どんなもの?副作用は?保険は効く?
- わきがの治療 処方薬でのみ薬はある?どんなもの?副作用は?保険は効く?
- わきがの治療 手術の種類はどんなものがある?
- ボトックス注射とはどんなもの?
- 「ミラドライ」とは、どんな治療?痛みがある?
- わきがの手術治療の費用の目安
- わきがの手術のリスク 手術跡が残る?後遺症が残る?どんなんもの?生活に影響が出る?
わきがの治療 処方薬で塗り薬はある?どんなもの?副作用は?保険は効く?
わきがの治療で押さえておくポイントは2点です。常在菌を抑えることと、発汗そのものを抑えてしまうことです。
処方薬の塗り薬では、「クリンダマイシン」や「ニューキノロン系統」などと呼ばれる抗菌剤が。常在菌の増殖を抑える目的で処方されることがあります。しかし、長期間使用すると薬の効かない「耐性菌」が出てくることが懸念されますので、使用には注意が必要になるます。なお、「クリンダマイシン」や「ニューキノロン系統」などの薬剤を、わきがの治療に用いたときには、健康保険の適応とならないことがあります。
発汗抑制のためには「塩化アルミニウムアルコール」というものが、院内製剤(試薬を原料にして病院内で作った薬品)として処方されることがあり、連続して使用していると発汗が減ってきます。皮膚への刺激になる可能性もあり、そのような時には使用を止めることも必要ですが、薬の効果に満足であれば、連続使用することは可能です。なお「塩化アルミニウム製剤」は市販薬(商品名;テノール液)として販売されていますから、薬局で購入することもできます。
わきがの治療 処方薬でのみ薬はある?どんなもの?副作用は?保険は効く?
皮膚の常在菌に対抗して、抗生物質を長年飲んでいると、薬の効かない「耐性菌」が生じてくることがわかっています。これは医学的に許容しがたい不利益となりますので、わきがの治療で抗生物質の内服は通常行われていません。
アポクリン腺からの発汗は、精神的緊張で促されますから、精神的緊張を抑える薬が処方されることもあります。しかし、精神的緊張を抑える薬を飲むと、アポクリン腺からの発汗が抑制されるかどうかについては、きっちりとした研究結果は出ていません。精神的緊張を和らげる薬剤は眠気がでたりして、車の運転などの日常生活に制限ができてしまいますから、精神的緊張を和らげる薬を内服するべきかどうかは担当医とよく相談して決めることが必要です。
「抗コリン剤」という種類の薬剤があり、多汗症に有効であるとする医学論文がでています。しかし、現時点では、臭いそのものが改善するかどうかは不確定で、脇の発汗を抑えるのに必要な量を内服すると目や口が渇いたり、排尿困難となることがあります。
なお、精神的緊張を和らげる薬、抗コリン剤も多汗症やわきがの治療の目的では健康保険の適応はありません。
わきがの治療 手術の種類はどんなものがある?
わきがに関与するアポクリン腺は「真皮(しんぴ;皮膚の下層)」の深い部分から皮下組織にかけて分布しています。アポクリン腺の組織を何からの手段でうまく処理すれば治療は成功となります。
健康保険では、アポクリン腺のある脇の皮膚と皮下組織を全て切除するという手術を行うことができます。傷が小さければ、切った後そのまま周囲の皮膚を引っ張って縫いよせます。難しい時には周囲の皮膚に適切なデザインで切り込みを入れて無理なく引き寄せて傷を閉じる「弁作成術」という方法を併用します。この手術では、術後しばらく患部を安静にして皮下出血を起こさないように気をつかう必要があります。細菌感染などが起きていなくても、手術後10日間程度は、皮下にじわじわと出血して、血の塊(血腫)が皮下にできてしまうことがあります。大きな血腫ができると、傷が開いてしまって再縫合が必要となることがあります。
皮膚を切除するという手術以外では、脇の皮膚を線状に切開して、皮下のアポクリン腺のある組織のみを取り除く手術があります。皮膚は切り取りませんから、術後につっぱり感が起こることはありませんが、切り開いた線は残ります。同様にアポクリン腺のある組織を「脂肪吸引」という手法で取り除くことも行われています。アポクリン腺のある組織のみを除く手術では、どの範囲の組織を取り除くかなどの点で担当医によって治療成績が異なってきますので、術前に担当医によく話を聞くことが大切です。
ボトックス注射とはどんなもの?
脇の皮膚にボトックスを注射すると、1回の治療で3カ月からカか月間、脇の発汗量が大幅に減ります。ボトックスは、脇の多汗症で困っている方では健康保険の適応となります。ボトックスは顔の皺の治療でよく使われており、適正に使うと全身的副作用が出る心配はないものと思われます。発汗の低下が目的ですから、わきがが満足できるレベルまで治るかどうかは事前には確信を持てないの側面がありますが、ボトックスによる治療経験の多い施設で試してみるのも一つの手段です。
「ミラドライ」とは、どんな治療?痛みがある?
高周波を用いた治療にて脇の多汗症が改善するという報告がありますが、臭いの改善効果については明確ではありません。通常痛みがありますので局所麻酔を用いての治療となります。それぞれの医療機関にて様々な名称の機械を導入して治療に用いており(「ミラドライ」というのはこのうちの一つです)、保険適応はなく自費診療となります。治療前に治療費、必要な治療回数、効果の持続性、瘢痕(跡が残ること)となる可能性などについて十分に説明を受けたうえで、どのような治療を受けるか決めましょう。
わきがの手術治療の費用の目安
わきがの健康保険での手術は3種類に分類されており、2016年診療報酬点数表(医療機関への支払い金額を定めたもの)によれば、5730点、3000点、1660点となっています。
・脇の毛のある部分の皮膚を切除して皮弁を作って閉じる手術が5730点 ・脇の毛のある部分の皮膚を切除してそのまま縫い寄せる手術が3000点
「1点10円」で計算されていますので、健康保険での3割の保険であれば手術料だけでそれぞれ17190円、9000円、4980円になります。実際にはその他に薬代などがかかることになります。
健康保険の適応でない手術は自費診療となり、各医療機関が自由に料金を設定しています。
わきがの手術のリスク 手術跡が残る?後遺症が残る?どんなんもの?生活に影響が出る?
皮膚を切る手術の場合、術後しばらくの間、患部を安静にして皮下出血を起こさないように気を使う必要があります。脇は止血のための圧迫があまりできる部位ではありませんから、手術後10日間程度は十分に注意しておかないと、皮下にじわじわと出血して血の塊(血腫)が皮下にできることがあります。大きな血腫ができてしまうと、縫合したところが開いてしまって再縫合が必要となることがあります。術後どの程度まで患部を動かして良いか、自分でガーゼ交換をして良いかなどを手術前に担当医に確認しておきましょう。
皮膚科や形成外科では、手術のでき上がりを美しくすることも目標の一つですから、できるだけ傷跡が残らないように配慮して手術を行います。しかし皮膚を切除したり、切開したりした線状の傷跡はどうしても少しは残ります。
また、皮膚を切り取って縫い寄せる手術の場合は、術後数カ月の間は、皮膚がつっぱる感じがすることがあります。そのような場合でも、皮膚はやがて馴染んできて、つっぱり感はなくなることが多いようです。
また、脇のアポクリン腺のある皮膚は脇の毛のある部位ですから、その部位を全て切除するという手術を受けると、脇は無毛となります。これは永久脱毛となりますから、見た目などを考慮して問題ないと思えるならば良いのですが、毛がある方が良いというのならこれは一つの後遺症といえるでしょう。
わきがのは手術後の再発する?
わきがの手術でアポクリン腺のある皮膚と皮下組織を完全に切除しても、「その後にわきがが再発した」という訴えが時々あります。一度全て切除された後に、再びアポクリン腺が作られてくることはないと考えられます。また皮下組織などを切除したあとに「再発した」と訴えがある場合、実際には悪臭は他の人には感じられないことがほとんどです。つまり再発したのは「自己臭恐怖症」であって、術前に訴えのあった臭いの正体も「自己臭恐怖症」であったという可能性があるのです。手術して治ったという安心感で精神的に落ち着いていた自己臭恐怖症の症状が、何らかのきっかけで再発したということが考えられます。
ただ、「再発」とされるものは、思い込みだけでない場合もあります。脇の皮膚を線状に切開して皮下のアポクリン腺のある組織のみを取り除く手術や、脂肪吸引にての治療は、医師が取り除くべき組織を手術中に経験的に判断することになりますので、治療成績が医師により異なります。取り残した範囲が大きければ、効果があまり得られないという可能性があります。また、アポクリン腺の再発のリスクもないわけではありません。手術を受ける方や検討している方は、事前に治療成績を調べたり、十分に説明を受けるようにしましょう。
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わきがの治療や手術などについてご紹介しました。もしかしてわきがかもしれないと不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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