疥癬の治療、治療期間 副作用は?市販薬あり?ステロイドはNG?
- 作成:2016/06/17
疥癬(かいせん)の治療では、塗り薬と飲み薬を場合によって使い分けることがあります。かつては、オイラックスという薬が使われていましたが、最近では新しい薬が出てきています。薬の副作用、市販薬の有無、ステロイドの可否を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
疥癬の検査と診断
疥癬の治療薬の種類と副作用 オイラックス?
安息香酸ベンジルローションとは?
イベルメクチン(ストロメクトール)とは?
疥癬の薬は市販されている?ステロイドはだめ?
市販の飲み薬はない
疥癬の治療は薬以外もある?
疥癬の治療期間はどれくらい?
疥癬の検査と診断
疥癬の症状は、湿疹(皮膚の炎症)の症状によく似ています。かゆみがあって、小さいブツブツが多くできている場合に、見た目だけでこの2つの病気を区別することは難しいのです。湿疹体質ではなくて、今まで湿疹が出たことはないのに、少しずつブツブツの数が増え、範囲も広がり、特に夜間にかゆいという時には、疥癬の可能性があります。是非、皮膚科を受診してください。
皮膚科では、最近「デルモスコープ」という特殊な拡大鏡を使って診察します。これを使うと、表面が拡大して見えるだけではなく、もう少し皮膚の深い部分の情報も得られます。ヒゼンダニは皮膚の柔らかいところに、「疥癬トンネル」という穴をほって、そこに潜んで卵を産みます。デルモスコープで、疥癬トンネルと、そのトンネルの先端部に潜んでいるヒゼンダニを見つけると診断は確定します。この検査は観察するだけの負担の少ない検査で、痛みや出血はありません。
この他に、角質の一部をピンセットなどで摘みとり、顕微鏡で調べて、ヒゼンダニやその卵を確認するという検査を行うこともあります。ヒゼンダニやその卵を確認できれば、診断は確定しますが、ヒゼンダニはかゆいブツブツの全てに潜んでいるというわけではないので、疥癬であっても、1回の検査でヒゼンダニやその卵が必ずみつかるというわけではありません。この検査は、角質をつまみ取って行う検査ですから、少し出血することもあり、痛みもあるため、多くの個所の検査を行うことできません。そのため顕微鏡の検査で「陰性」という結果で出ても、疥癬ではないと断定することはできないのです。
疥癬の治療薬の種類と副作用 オイラックス?
2014年に「スミスリンローション(一般名:フェノトリン)」という塗り薬が発売されました。疥癬に有効性が高く、副作用が少ないため、疥癬の塗り薬の主流となっています。通常は1週間間隔で、2回塗ることになります。液体の薬であるため、かき傷などに塗るとピリピリするなどの刺激作用がありますが、塗る回数が少ないため、刺激作用が問題となることはほとんどありません。
2014年以前は、長い間皮膚科では「オイラックスクリーム(一般名:クロタミトン)」という塗り薬を使って疥癬を治療することが一般的に行われてきました。オイラックスクリームは、湿疹(皮膚の炎症)や蕁麻疹(じんましん)の痒みを抑える薬剤ですが、有効成分である「クロタミトン」という成分がヒゼンダニに効果があります。
オイラックスクリームによる治療では、薬を首から下の全身に2週間から3週間にわたって、毎日塗ることになります。オイラックスクリームの効果は、あまり強くないため、塗り忘れた部分があったり、十分な期間ぬりを続けなかったりすると、治療に失敗することがあります。この薬は湿疹の治療薬として健康保険で認められた薬ですが、ジクジクしているなど皮膚の状態が悪いところへ塗ると、刺激作用のために湿疹が悪化するデメリットがあります。湿疹体質の人が、疥癬になって皮膚をかいているうちに、湿疹が悪化してしまうと、オイラックスクリームでの治療は難しくなります。
なお、ステロイド剤を配合した「オイラックスHクリーム」という塗り薬も発売されていますが、間違って疥癬の治療に用いると、ステロイドの作用で疥癬は悪化します。
安息香酸ベンジルローションとは?
オイラックスより強力な塗り薬として、「安息香酸ベンジルローション」という薬があります。即効性が必要な場合は、皮膚科では、スミスリンローションの発売以前に、疥癬の治療に利用されてきました。なお、安息香酸ベンジルローションは正式に薬剤として発売されたものではなく、試薬を原料として、各医療機関で調剤して作成したものであるため、今後は活用の機会は減るものと考えられます。この他、イオウがヒゼンダニに有効であるため、一部の医療機関ではイオウ軟膏を作成して疥癬の治療に用いています。
イベルメクチン(ストロメクトール)とは?
「ストロメクトール(一般名:イベルメクチン)」という薬は、疥癬に有効な唯一の飲み薬です。1回のんで、必要であれば1週間後にもう1回追加で内服します。体重によって飲むべき錠数が変わりますから、1回に指示通りの錠数を内服してください。うまく行けば、疥癬は1カ月後には治癒します。内服すると、寄生しているヒゼンダニが一気に死滅し、その反応で一時的にかゆみが増すことがあります。皮膚炎がひどくなるようなことがあれば、薬剤に対するアレルギー反応という可能性もありますが、皮膚炎の悪化がなく、その他の問題もないようならば、落ち着くのを待ちましょう。ただ、皮膚の炎症が明らかに悪化するようなら、薬疹(薬の利用自体が原因となる発疹)である可能性もありますから、早めに担当の医師に相談してください。
また、イベルメクチンは、他の薬と一緒に飲むと、効果が大きく変動する可能性があります。また薬剤の吸収が食事の影響を受けて大きく変動しやすいので、空腹時に水で飲むのが良いとされています。
疥癬の薬は市販されている?ステロイドはだめ?
疥癬に、ステロイドが配合された薬を塗ると疥癬は徐々に悪化します。疥癬の治療につかう「オイラックス」にはステロイドが配合されたタイプがありますから、注意が必要です。具体的には、「オイラックスA」「オイラックスPZ」「オイラックスデキサS」という塗り薬が市販されていますが、これらはステロイドが配合されているため、疥癬の治療として塗るのは不適切です。なお病院で処方される「オイラックスH」にもステロイドが配合されていますので、疥癬の時には塗らないでください。
市販されている「オイラックスソフト」には有効成分であるクロタミトンが配合されており、ステロイドは配合されていませんから、疥癬の時に塗っても良いでしょう。ただし、オイラックスソフトはジクジクした部分、ひどいかき傷などに塗ると刺激反応で皮膚炎が悪化する可能性がありますので、塗ったあとに皮膚の状態がかえって悪くなった時には中止してください。
「イオウ(硫黄)」が配合された塗り薬が「イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏」という名前で市販されており、疥癬に有効です。ただ、この薬もオイラックスと同様に皮膚の状態が悪いところへ塗ると刺激になることがあります。
市販の飲み薬はない
疥癬に有効な飲み薬は市販されていません。かゆみを和らげる飲み薬として「抗ヒスタミン剤」というタイプの薬が市販されていますが、ヒゼンダニを抑える効果はなく、かゆみの症状に対する対症療法となります。しかし、慢性蕁麻疹があって皮膚をかくと、どんどん赤くなってかゆくなるという方は、抗ヒスタミン剤を飲むとかゆみが改善します。
疥癬の治療は薬以外もある?
疥癬治療にはイオウが有効ですから、イオウを含んだ入浴剤が有効であると思われます。ただ、以前よく使われていた「ムトーハップ」は、硫化水素を発生させることによる自殺者が相次ぎ、現在、発売が中止となっています。
疥癬の治療期間はどれくらい?
疥癬の治療期間は、どのような治療方法を取るかで変わってきます。古くから使われている塗り薬であるオイラックス(一般名:クロタミトン)を使う場合は、少なくとも2週間から3週間程度、毎日ぬることが必要です。スミスリンローション(一般名:フェノトリン)では、通常1週間隔で、2回のぬることとなりますが、3回から4回塗る必要がある場合もあります。担当医の指示に従ってください。
ストロメクトール(一般名:イベルメクチン)という飲み薬による治療では、1週間間隔で2回の内服となることが多いのです。ただ、爪が厚くなってそこにヒゼンダニが寄生している場合などでは、他の治療を併用も含めて、もう少し治療が必要となることがあります。
疥癬は治療に失敗すると再発して感染が拡大します。いずれの治療でも治療終了の時期は担当医に判断してもらうことが大切です。
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疥癬の治療や治療期間などについてご紹介しました。体のかゆみに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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