妊娠中は湿布薬や塗り薬にも注意を 妊娠中に使える痛み止めは何がある?
- 作成:2021/10/07
妊娠中に飲む薬を気にする方は多いですが、中には「貼り薬であれば大丈夫」といって、痛み止めの湿布薬を使う方もいらっしゃいます。これは、本当に大丈夫なことなのでしょうか。
この記事の目安時間は3分です
Q. 湿布薬であれば、妊娠中でも使える?
A. 湿布薬でも、妊娠中は避けるべき薬がたくさんある
貼り薬や塗り薬だからといって、妊娠中でも安全に使えるわけではありません。病院で処方される薬に限らず、ドラッグストア等で購入できる貼り薬や塗り薬であっても、その薬の内容によっては胎児に悪影響を及ぼしてしまうものがあります。妊娠中に薬を使う際は、必ず医師・薬剤師に相談するようにしてください。
貼り薬や塗り薬であっても「大丈夫」とは限らない
腰や肩の痛みによく使われる痛み止めの貼り薬・塗り薬には、医療用・一般用を含めて色々なものがありますが、これらの薬の多くは妊娠中(特に28週以降の後期)においては“禁忌”に指定されています。
実際に、「ケトプロフェン」のテープ剤を妊娠後期(28週以降)に使ったことで、飲み薬と同じように胎児の動脈にトラブルが起きた事例が複数報告されています1)。飲み薬に比べて、貼り薬や塗り薬は副作用や体への影響が少ない、というイメージで使われる方は多いですが、必ずしもそうとは限らないということを、知っておいていただければと思います。
家族・友人間での“使い回し”に注意を
痛み止めの貼り薬や塗り薬は、家族・友人間での“使い回し”がよく起こる薬です。病院で処方された薬であっても、湿布薬くらいであれば使い回しても問題ない、と考えている人が6割以上にのぼる、という調査もある2)ほどです。しかし、病院で処方された薬を、処方された本人以外(たとえ家族や友人であっても)が使った場合、それで何かの副作用が起きたとしても、補償の対象になりません(病院で処方されたお薬、友人にあげても良い?【医師監修】 )。特に、パートナーに処方された痛み止めの貼り薬や塗り薬を、妊婦さんが自己判断で自身に使う、といった使い回しは、非常に危険ですので 絶対に止めてください。
なお、ドラッグストア等で購入できる一般用医薬品は、病院で処方される薬と違って、家族間で共有することは禁止されていません。しかし、「購入時には妊娠していなかった」、あるいは「家族の他の人が購入してきた」といった理由で、妊娠中には使えない薬が手元にあるケースも少なくありません。妊娠中に薬を使う際は、ドラッグストアで買ったものだから大丈夫、と油断することなく、改めてどの薬を選べば良いかを医師・薬剤師に相談することをお勧めします。
妊娠中でも使える痛み止めは?
では、妊娠中に腰や肩が痛くなった場合に使える薬はないのか、というと、そういうわけでもありません。たとえば、痛み止めの貼り薬や塗り薬の中でも、「サリチル酸メチル」や「サリチル酸グリコール」といった薬は、胎児にもほとんど影響することはないとされ、禁忌の指定もされていません。これらの薬はもともと副作用の少ない薬3)のため、日常的な痛み止めとして非常に良い選択肢になります。
また、飲み薬の痛み止めでは、「アセトアミノフェン」が妊娠中でも使える薬です4)。「アセトアミノフェン」というと、頭痛や生理痛に使うイメージが強い痛み止めですが、腰や肩・膝の痛みにも効果のある薬です5,6)ので、選択肢として考えることができます。
ただし、「サリチル酸メチル」や「サリチル酸グリコール」、「アセトアミノフェン」といった薬は、いずれも効き目は少しやさしめです。これらの薬で十分に痛みが治まらない場合は、薬の量や回数を勝手に増やしたり、あるいは自己判断で別の薬を使ったりはせずに、主治医にその旨を相談して対応を考えるようにしてください。
1) Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information No. 312 April 2014
2) 医薬品情報学.22(1):30-4,(2020)
3) J Altern Complement Med. 2014 Apr;20(4):219-20. PMID: 24116881
4) カロナール錠 添付文書
5) BMJ. 2015 Mar 31;350:h1225. PMID: 25828856
6) J Orthop Sci. 2018 May;23(3):483-487. PMID: 29503036
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