漢方薬なら妊娠中に飲んでも大丈夫?注意が必要な漢方薬は
- 作成:2022/01/22
妊娠中は、口にするものの安全性がいろいろと気になりますが、薬はなおさらです。できれば薬を使わずに体調を整えたいという気持ちを抱くのも、ごく自然なことでしょう。漢方薬なら安心と考える人もいるかもしれません。しかし、実際は「漢方薬だから安心」というわけではありません。
この記事の目安時間は3分です
「漢方薬=妊娠中でも安全」・・・とは限らない
漢方薬は、いわゆる西洋薬に比べて効き目が穏やかで、副作用も少ない、というイメージを抱いている方は多いと思います。確かに、漢方薬は他の薬に比べると副作用は少ない傾向にあるため、副作用を避ける目的で選ばれることも多いですが、決して副作用が存在しないわけではありません。そのため、たとえ漢方薬であっても、他の薬と同じように副作用には気をつけて使う必要があります。
これは、妊娠中の薬の選び方としても同様です。薬の中には、妊婦さんが使うとお腹の中の胎児に悪影響を与えてしまう恐れのあるものがたくさんありますが、このリスクは「漢方薬であるかどうか」とはあまり関係がありません。漢方薬の中にも、妊娠中でも使えるものもあれば、妊娠中は避けた方が良いものもあるからです。「漢方薬であれば安心」と油断して自己判断で薬を選ぶと、思わぬ事態を招くこともありますので、必ず医師・薬剤師に相談の上で使うようにしてください。
妊娠中には注意が必要な漢方薬の例
漢方薬の中でも、妊婦さんが使うと子宮に作用したり、流産・早産リスクを高める恐れがあったり、副作用が出やすかったりするような生薬を含むものは、注意が必要です。薬のパッケージや説明書には、必ずどんな成分が配合されているのかが明記されているため、確認するようにしてください。特に、ドラッグストア等で一般用医薬品を購入する際は、妊娠中の使用に対して注意喚起がされている下記のような漢方薬を使うのは、避けた方が無難です。
※妊娠中のリスクが指摘されている生薬の例
- ダイオウ、ボウショウ(子宮を収縮させる作用がある)
- ボタンピ、トウニン、ゴシツ(流産・早産リスクを高める可能性がある)
- ブシ(副作用が出やすい)
これらの生薬を含む漢方薬の例
大黄甘草湯(ダイオウ)、防風通聖散(ダイオウ、ボウショウ)、桃核承気湯(トウニン、ダイオウ、ボウショウ)、加味逍遙散(ボタンピ)、桂枝茯苓丸(トウニン、ボタンピ)、牛車腎気丸(ゴシツ、ボタンピ、ブシ)、真武湯(ブシ)、麻黄附子細辛湯(ブシ)
※ここに挙げられたものが全てではありません
妊娠中に限らず、薬を使うかどうかは、その薬を使うことで「得られるメリット」が「負うべきリスク」を上回るかどうかで判断します。この「メリット」や「リスク」は、薬を使う人の状況やタイミングなどによって大きく変わるため、薬を「使って良い」か「使わない方が良い」かも、時と場合によって変わることが多々あります。
そのため、「常に絶対に使ってはいけない」ようなものは非常に稀で、上記に挙げたような漢方薬であっても、病院では医師がメリットとデメリットを総合的に評価した結果、必要だと判断して処方する、といったことは十分に起こり得ます。もし不安や疑問を感じた際は、その旨を医師・薬剤師に相談することをお勧めします。
「天然由来の成分なら安心」という油断は危険
漢方薬に限らず、天然由来、自然のものから作られたものは身体にやさしく安全・・・というイメージは強いようです。そのため、身体のために天然由来の健康食品やサプリメントを積極的に摂る、という方も多いと思います。しかし、天然由来であることと、安全であるかどうかには、基本的に関係がありません。
たとえば、猛毒として知られるフグ毒「テトロドトキシン」や、トリカブトの毒などは、天然由来のものですが、ほんの僅かな量でも人を死に至らしめるほど非常に危険な物質です。一方、水素と酸素から人工的に合成して作った「水」は、普通の水と同様に飲んでも人体に影響はありません。人体にとって危険かどうかは、その物質の性質によって決まるため、天然か人工かの区別はあまり重要ではない、ということです。実際に、天然由来の食品やサプリメントで健康被害が起きたという報告1,2)はたくさんあります。「天然由来のものなら安全なはずだ」と思い込み、なかなか病院で相談しないことによって、健康被害が重症化してからでないと見つからない3)といったことにも繋がりかねません。
妊娠中は、いろいろと口にするものの安全性が気になることと思いますが、「天然由来=安全」と安直に判断せず、もしわからないことがあれば医師・薬剤師に気軽に相談をしてもらえたらと思います。
1) Clin Res Hepatol Gastroenterol. 2017 Sep;41(4):e39-e42.
2) 肝臓.46(3):142-8,(2005)
3) Clin Gastroenterol Hepatol. 2018 Sep;16(9):1495-1502.
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