出血量が減る!生理を数ヵ月に1度に減らせることも!避妊だけではない、知らないと損をする「ピル」の話
- 作成:2021/10/19
ピルと言えば、避妊のために飲むクスリのイメージが強いのではないでしょうか? でも、ひどい生理痛や、生理前のイライラや頭痛などにも効果を発揮します。知っているようで知らないピルについて、産婦人科医が詳しく解説していきます。
この記事の目安時間は3分です
海外では「ピル=経口避妊薬」として通じない
生理痛に鎮痛剤が効かない場合、我々婦人科医はピルを勧めることが多いです。でも「いきなりピルを飲みましょう」と言われても、ピルについて何も知らなければやっぱり怖いですよね。
もともとピル(pill)とは英語であり、単なる「錠剤」という意味です。海外ではピル=経口避妊薬としては通じません。しかし、日本ではピル=経口避妊薬という意味で使っていますし、婦人科医も患者さんに説明する時にはピルという言葉を使います。そのため今回は「ピル」という言葉はそのまま使って説明していきます。
「低用量ピル」の「低用量」ってなに?
ピルは1960年に経口避妊薬としてアメリカで承認されました。ピルは排卵を抑えることができ、女性が自ら確実に避妊できると大きな反響を呼びましたが、一方で副作用による吐き気が強く、内服できないという女性も多かったようです。
この吐き気は、ピルに含まれるホルモンが関係しています。ピルには女性の卵巣から分泌される2種類のホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が含まれています。
このホルモンの量が多いと吐き気が出やすいことが分かり、徐々にホルモンの量が少ないピルが開発されていきました。現在日本で発売されている避妊用のピルは、低用量ピルと言われています。この「低用量」とは、含まれているホルモンの量が少ないという意味です。
避妊用として使用されていたピルですが、飲んでいる女性から「生理痛が軽くなった」「生理の出血量が減った」との声が相次ぎました。その後ピルが生理痛に対して効果があるということが分かり、現在のように避妊だけでなく生理痛に対してもピルが使われるようになったのです。
生理用ピルは保険で処方してもらえることも!
日本で現在使用できるピルは大きく分けて2種類あり、自費診療で処方する避妊目的のピル(ここでは避妊用ピル)と、月経困難症や子宮内膜症による痛みに対して保険診療で処方するピル(ここでは生理痛用ピル)があります。
どちらも生理痛には効果がありますが、生理痛用ピルには低用量ピルよりもさらにホルモンの量を減らした「超低用量ピル」もあり、飲み始めの吐き気や頭痛が出にくいものもあります。また生理痛用ピルには数ヶ月に1度だけ生理が起こるようにするタイプもあり、ライフスタイルに合わせたピルの選択も可能となっています。
生理痛用ピルは避妊用としては認められていないため、避妊の効果が必要な場合は避妊用ピルを処方します。
生理前のイライラ、頭痛、吐き気にもピルは有効
ピルを飲むことによるメリットをいくつか挙げてみましょう。
生理痛に関しては鎮痛剤を飲んでも痛みが改善しないような方でも、ピルを飲めば生理痛が改善したり、痛みがほとんど感じなくなったりすることもあります。生理痛は子宮の内側に存在する子宮内膜から産生される物質プロスタグランジンが原因ですが、ピルはその産生を抑制することが分かっています。また、子宮内膜が厚くなることも抑えるので、生理の出血量も減少し、痛みの改善につながります。
ピルは生理痛以外にも生理に関する症状を緩和してくれます。生理前にイライラしたり気分が落ち込んだり、頭痛や吐き気といった症状が起きる「月経前症候群」(PMS)にも効果があります。種類によってはニキビや肌荒れに効果があるピルもあります。
毎月生理を起こすタイプのピルであれば生理が来るタイミングが分かりますので、生理不順で次の生理がいつ来るのか分からず困るという方にもピルを処方します。
避妊用ピルはもちろん避妊の効果もありますので、希望しない妊娠を防ぐ効果もあります。
さて、今回はピルのメリットについて解説しました。次回はピルの副作用や、処方できないケースについて解説します。
婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。
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