子宮内膜症の自覚症状をチェック 生理の腹痛と違う?
- 作成:2015/09/28
子宮内膜症(ないまくしょう)は、本来は子宮にあるべき内膜が子宮以外の場所に定着し、生理のたびにはがれて出血する病気です。生理と時以外の腹痛などが特徴です。正しい知識を得て、早期発見し、対応ができるようにしましょう。
この記事の目安時間は3分です
子宮内膜症とは?
子宮内膜症は女性の10人に1人がなる可能性のある病気なので、珍しいものではありません。また患者さんの数は増加傾向にあります。その理由は、子宮内膜症が生理のたびに進行していく病気ということに強く関係しています。
以前の女性は、初経(初めての生理)くらいの年齢で結婚し、妊娠、出産を閉経まで自然に繰り返していたため、生理は一生涯で50回程度ということも珍しくありませんでした。しかし、現代の女性の社会進出に伴い、晩婚化、初産年齢の低下などから妊娠、出産をしない女性や子供を多く持たない女性も増えてきました。そのため経験する生理が400回以上になることもあり、自然に子宮内膜症の症状に悩む女性が増えたと考えられています。
子宮内膜症は、本来子宮にあるべき内膜が、卵巣、腹腔、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)などに逆流し、そこで生理のたびに出血と剥離を繰り返すことが原因と言われています。
ただ生理の時の子宮内膜の逆流は90%の女性で起こっていると言われているため、なぜ逆流した内膜がそこで定着してしまうかはまだ分かっていません。
どのような症状がでるの?主な症状をチェック
子宮内膜症は卵巣や腹腔、ダグラス窩に逆流した子宮内膜が生理のたびに出血、剥離を繰り返すため生理のたびに下腹痛を起こします。また下腹痛は、生理を繰り返すたびにどんどんひどくなっていきます。症状が進行すると生理以外の時にも下腹痛や腰痛がしたり、性交時や排便時などにも痛むようになっていきます。排便時に痛みを伴うため、排便を我慢して便秘になってしまう女性もいます。
子宮以外の場所で出血を繰り返すため、徐々に周囲の組織と癒着(ゆちゃく)をしてしまいます。癒着とは組織がくっついてしまうことです。卵巣内で癒着を繰り返すとチョコレート嚢胞(のうほう)と言って、強い腹痛を起こすだけでなく、時に卵巣が破裂して大出血を起こすこともあります。
なぜチョコレート嚢胞という呼ぶかについてですが、手術の時に卵巣内に溜まった血液を観察するとチョコレートのような色をしているからです。
また、チョコレート嚢胞は排卵障害を起こす可能性があるため不妊の原因になることもあります。生理のたびに腹痛が増強してきており学校や会社を休んでしまうことがある、鎮痛薬の内服量が増えている、生理以外の時の腹痛、性交時や排便時の腹痛がある時は要注意です。
子宮内膜症のホルモン療法
子宮内膜症は、生理を経験するほど病気が進行していくので、ホルモン療法によって生理を止めてしまえば病気の進行を抑えられます。
ホルモン療法には、GnRHアナログ療法、偽妊娠療法(低用量ピル)、黄体ホルモン療法があります。
GnRHアナログ療法は、完全に生理を止めてしまい閉経したような状態にします。この治療は、閉経後と同じ副作用、いわゆるほてり、頭痛、のぼせ、骨粗鬆症などの症状が出てしまいます。そのため現在は低用量ピルや黄体ホルモン療法が主流になり、子宮内膜症の手術前の短期間などでしか行いません。
偽妊娠療法では、経口避妊薬でもある低用量ピルが使用され、排卵と子宮内膜の増殖が抑えられます。副作用も少なく、妊娠の予定がしばらくないけれど将来は妊娠を希望している女性の症状コントロールに有効な治療法です。症状が進むほど不妊になる可能性は高いため、そのリスクを抑えられますし、内服を中止すれば排卵も再開し妊娠可能です。
黄体ホルモン剤も子宮内膜の増殖を抑えられますが、副作用として不正出血が起こりやすいです。
子宮内膜症の手術について
内服による治療では症状が軽減しない、または卵巣の大きさが増大傾向で5cmを越える場合は手術を検討します。
子宮内膜症の手術は、妊娠を希望するかしないかでも方針が異なります。
妊娠を希望する場合は癒着部分をはがしたり、病変がある卵巣の一部を切除するだけで卵巣と子宮を温存する保存的手術を行い、妊娠を希望しない場合は卵巣と子宮を摘出する手術を行います。
また内視鏡手術と開腹手術があり、内視鏡手術の方が傷が小さく、退院までの日数が短くて済みます。具体的には、お腹に小さい穴を3か所開けて、内視鏡というカメラでお腹の中を観察しながら手術をします。ただ内視鏡手術は開腹手術と違って直接お腹の中を観察できないので、出血が止まらなかったり、内視鏡手術では限界と判断されると開腹手術になることもあります。
今回は、子宮内膜症の自覚症状について解説しました。生理痛がひどくなってきた、下腹部痛や腰痛の症状が出てきたという方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
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