子宮内膜症と吐き気

  • 作成:2015/09/28

子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)は、月経痛、腰痛などの症状がありますが、中には吐き気をもよおす方もいます。今回は、子宮内膜症の吐き気の症状や関連するホルモンについて解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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女性

子宮内膜症で吐き気、嘔吐をする方も

子宮内膜症は20代〜50代の女性にみられ、30代で最も多い疾患ですが、閉経するまでは、いくつであっても発症の可能性はあります。妊娠経験のある女性より、経験のない女性のほうが多く発生します。子宮内膜症の原因はいくつか説があるものの、いまのところはっきりわかっていません。

子宮内膜は、子宮の内腔を覆っている膜ですが、月経周期ごとに増殖して厚くなり、月経時剥がれて、剥がれて出血します。

子宮内膜症では、子宮の内側にしかないはずの子宮内膜に似た細胞組織が体のいろいろな場所にできてしまいます。この細胞組織も、月経周期により女性ホルモンの影響をうけて増殖し、月経時に剥がれて出血します。

子宮内膜症の症状は月経痛、下腹部痛、腰痛などの他、性交痛、排便痛、吐き気やおう吐をもよおす場合もあります。症状は程度に差があり、痛みがひどく動けなくなる人もいれば、症状がない人もいます。

また、子宮内膜症の患者さんも不妊でない場合の方が多いです。したがって、子宮内膜症は不妊症の一因となりえます。

下痢などの胃腸症状がでることも

子宮内膜に似た細胞組織ができる場所として、腹膜、卵巣、子宮筋層内、子宮と直腸の間のくぼみ(ダグラス窩)、子宮を支える靭帯、直腸、S状結腸、小腸があります。子宮筋の中に生じたり、まれに胸膜、肺、尿路などにできることもあり、月経の時には血痰や血尿などが出たりします。

また、卵巣にできた子宮内膜組織が出血し、血液が流れず卵巣に貯留して腫大したものはチョコレート嚢胞と呼ばれ、不妊症の原因になります。またチョコレート嚢胞は卵巣がんの前癌病変といわれています。

子宮内膜症では子宮内膜組織や組織からの出血で、周りの組織に炎症が起きることがあります。炎症が起きた組織は傷を修復しようとし、その結果、組織の間に線維状の組織の帯(癒着)ができ、臓器同士がくっつくこともあります。そうすると、臓器は本来の働きができません。例えば腸で癒着がある場合、他の臓器に腸が圧迫されたり、腸の動きが悪くなったりして便秘になることもあります。またプロスタグランジンの働きで腸や胃が収縮し下痢になったり、吐き気が出現することもあります。

子宮を収縮させるプロスタグランジンとは?

プロスタグランジンは、出産のときに陣痛をおこすなど、子宮を収縮する作用があります。また痛みを増強する作用もあります。

プロスタグランジンは、月経時、子宮内膜から出てくる物質で、月経時の痛みにも関連する物質でもあります。

プロスタグランジンは、特別な物質というわけではないのですが、子宮内膜症の人の場合、子宮内膜に似た組織があちこちに勝手にでき、その組織からもプロスタグランジンが分泌されます。そのため、通常よりもプロスタグランジンが多く分泌されることになります。そのため子宮の収縮は子宮内膜症でない人よりも強くなり、痛みも強くなります。

月経時に痛みがでるのは当然と思われがちですが、市販の痛みどめを飲んでも効かなかったり、月単位あるいは年単位でみた場合に、以前よりも月経時の痛みが増強してきている場合は一度病院で診てもらうと良いかもしれません。

子宮内膜症の診断について

正確な診断のためには腹腔鏡検査や開腹手術が必要です。しかし、実際には問診、内診、直腸診、超音波検査、血液検査などを行い、必要に応じてMRIやCT検査を実施します。不妊症などで特に必要な場合にのみ腹腔鏡検査や開腹手術が行われます。この場合には検査と同時に治療も兼ねる場合があります。

子宮内膜症は月経があるうちは発生の可能性があり、完治も難しいことから、いかに症状を取り除いていくかが治療の方針となり、かならずしも手術が必要ではありません。たとえば痛みの強さが、我慢できる程度であれば、痛みを抑える対症療法を行い、経過を見ていきます。

痛みが強く寝込んでしまうほどである場合は低用量ピルや女性ホルモンを抑える薬などで薬物療法を行い、効果がなければ手術をする場合もあります。

今回は子宮内膜症の症状のひとつ吐き気について解説しました。生理痛がひどくなっているだけでなく、く吐き気を感じるという方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?

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