子宮内膜症による腰痛 腸と癒着すると激しくなる?
- 作成:2015/09/28
子宮内膜症(ないまくしょう)は、本来は子宮の内腔のみにある内膜細胞が、他の場所にできてしまう病気です。重い生理痛などの症状がありますが、腰痛になる方もおり、腸との癒着(くっつくこと)が起きると腰痛が激しくなる上、他の悪影響も出ます。今回は、子宮内膜症と腰痛について解説します。
この記事の目安時間は3分です
腰痛の原因にもなる子宮内膜症
月経とは、女性の子宮にある内膜がはがれ落ち経血として体の外に出ることです。
内膜は、本来は子宮の内側のみにあるものですが、他の場所にできてしまうことがあります。これが子宮内膜症です。子宮内膜症の原因はわかっていません。子宮の内側以外に内膜とよく似た細胞ができると、女性ホルモンの影響を受けると次第に大きくなり、月経中も体の外に出されずにとどまってしまいます。
子宮内膜症の主な症状は、主として月経痛で、月経時の大量の出血、レバー状の血の塊などがみられる事も有ります。月経時以外にも、下腹部の痛み、腰痛、排便のときの痛み、腹部の膨らみなどがみられることがあります。
子宮内膜症ができやすい場所は、子宮の外側、卵巣、卵管、子宮を支える靭帯、およびダグラス窩と呼ばれている骨盤の一番深い部分などですが、進行すると膀胱や直腸、小腸など骨盤の中にある臓器全体へ広がり、その病巣を中心として、子宮が腸や腹膜など他の臓器とくっついてしまうこともあります。腸全体が癒着してしまう事も有ります。そうなると、激しい腹痛や腰痛だけでなく臓器の働きにも悪影響が出てしまうため、手術が必要な場合があります。さらに特殊な例では肺や全身の色々な部分にまで広がることもあります。
子宮内膜症は、症状がまったくない人もいますが、多くの場合は年々痛みがひどくなり、また、不妊の原因ともなるため、月経痛や月経時以外の腰痛や下腹部の痛みがひどく仕事や家事などにも支障がある場合は、我慢せずに早めに婦人科医に相談しましょう。
子宮内膜症が起こる箇所
子宮内膜症は、できてしまう場所によって症状の現れ方や程度が異なることがあり、もっとも多いのが腹膜や子宮などの臓器の表面にできる腹膜子宮内膜症です。腹膜子宮内膜症の場合は、できたばかりの部分は痛みが激しい一方で、古い部分は比較的痛みが少ないといわれています。
卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)とは、卵巣出来た袋の中で出血が繰り返され、徐々にチョコレートのような色に変化していった状態です。卵巣チョコレート嚢胞は、他の臓器とくっついてしまったり、袋が破裂すると激しい痛みが起こるため緊急手術が必要な場合があります。
深部子宮内膜症は、腹膜の内部にできた状態で、子宮と直腸がベッタリくっついてしまうと、立ったり座ったりするときにおなかの中で一番底になる狭いくぼみのダグラス窩(ダグラス窩:子宮と直腸の間のくぼみ)という場所にできることが多いです。排便や性交のときにも激しい痛みが起こりますが、体の奥に隠れていることが多いため発見しにくいのも特徴です。
この他にも多くないものの他臓器子宮内膜症といい、肺、へそ、直腸など全身のさまざまな場所で起こる場合があります。肺にできると月経時に血を吐くことがあり、直腸の内側にできると下痢や出血があるため、他の病気と区別がつきにくい事もあります。
子宮内膜症が多い年代
子宮内膜症は、女性ホルモンの影響を受けて次第に大きくなるため、月経が始まってからからの年数が長いほど起こりやすくなります。10代で子宮内膜症になる人はわずかですが、20代から次第に増え30〜40代でピークを迎え、閉経後は女性ホルモンの減少とともに症状も治まります。
また、子宮内膜症は、月経期間が長く、周期が短い人の方が子宮内膜症になりやすいといわれており、妊娠中や直後は月経がないため一時的に症状の進行が抑えられます。
子宮内膜症が多い年代は妊娠を希望される人も多いですが、子宮内膜症は不妊の原因となります。そのため、妊娠を希望する場合は早めに治療をすることが大切です。
診断と治療方法
子宮内膜症の診断では、内診に加え、必要に応じて直腸診や超音波検査を行うこともあります。治療は、女性ホルモンの働きで一時的に月経と排卵を止めるホルモン剤やピルなどの他、痛みや吐き気などの症状を抑える薬、体質改善を目的とした漢方薬などを一緒に使うことがあります。
また、卵巣に大きな嚢疱ができている、子宮と他の臓器とくっついているなど、内膜症の大きさと場所によっては、手術が必要な場合があります。卵管や卵巣の周囲が癒着してしまい不妊の原因となっているときも手術を行います。
ただし、子宮内膜症は、どの治療法を選んでも病巣を完全に消す事は難しく、再発する可能性が少なくありません。そのため、一度治療をしたからと安心せず定期的に婦人科を受診することも大切です。
今回は子宮内膜症の症状のひとつである腰痛について解説しました。生理痛が重いだけでなく腰が痛くなってきたという方やこの病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。