「飲むと太る」は本当?「ピル」の副作用を正しく理解すれば、生理痛対策が上手になる!
- 作成:2021/10/31
前回の記事では、生理痛にピルが効くということを解説しました。ただ、ピルは副作用が気になって躊躇している人は多いかもしれません。今回はピルを飲む際に知っておくべきリスクや、処方できないケースについて、産婦人科医が詳しく解説していきます。
この記事の目安時間は3分です
副作用の吐き気は1~2週間でおさまることが多い
ピルは避妊だけでなく、生理痛や月経前困難症(PMS)を軽減するためにも利用されている薬です。女性の強い味方と言える薬ですが、服用するには副作用を理解しておくことが大切です。
ピルを飲むと体重が増えるという噂は聞いたことがあるかもしれませんが、ピルを飲んでいるから必ず体重が増えるわけではありません。
ただし、ピルを飲むとむくみやすくなる方がいます。むくみというのは体に水分が溜まりやすいということなので、この水分量だけ体重が増えます。この場合はむくみが出にくいタイプのピルに変更することで改善する場合があります。
その他にピルを処方する時に皆さん気にされるのが吐き気です。実際にピルを飲み始めるとしばらく吐き気が出ることはあります。だいたい1週間から2週間でおさまることが多いのですが、中には吐き気が強くてピルを続けられないという方もいます。
時間が経てば消えていくものなので、気になる方は吐き気止めも一緒に処方してもらうこともできます。
ホルモン量が少ない生理痛用ピルでは吐き気が軽かったり、全然吐き気がなかったりする方も多い印象があります。避妊の効果は必要ないという方は、生理痛用ピルを服用することをお勧めします。
血栓症のリスクは、よく説明を聞くことが大事
ピルで問題となる副作用に「血栓症」があります。血管の中に血液の塊(血栓)ができ、血管が詰まってしまう状態です。血栓症はふくらはぎの血管にできることが多いのですが、まれに血栓が血液の流れに乗って移動し、肺の血管が詰まってしまうと「肺塞栓症」が起こります。そうなると胸が痛くなったり息苦しくなったり、重症の場合には命に関わることもあります。
日本でピルが認可された1999年あたりに欧米でピルによる血栓症の危険性が取り上げられたこともあり、日本でもピルはリスクの高い薬だとマスコミでも大きく報道されました。そのためピルは怖い薬というイメージが伝わってしまったという経緯があります。
たしかにピルを飲むと血栓症のリスクは上昇しますが、喫煙や肥満などリスクが高い方に処方しなければそれほど血栓症が起こる確率は高くないということが分かってきました。
万が一、血栓症が起こっても、早期に適切な治療を行えばほとんどの場合、血栓は消失します。そのためピルを処方する際には、足の痛みや腫れ、頭痛、胸の痛みや息苦しさがあればすぐに受診するように説明しますし、ピルを飲むことによって血栓症のリスクが高くなるような方には違う薬を勧めることもあります。
喫煙、肥満、偏頭痛…ピルが処方できないケース
例えば、35歳以上でタバコを1日15本以上吸っている方には、ピルは処方できません。習慣的に喫煙している状態でピルを内服すると血栓症や心筋梗塞のリスクがかなり上昇し、年齢と共にさらにそのリスクは上昇することが分かっています。そのため、喫煙している方は減煙や禁煙してからピルを内服することを勧めています。
体重も血栓症のリスクを上昇させます。特にBMI(Body Mass Index)が30以上の方は、ピルを飲むことによって血栓症のリスクが5倍に上昇します。医療機関によって体重の基準は違いますが、ピルを希望される場合は体重を落としてからの内服をお勧めしています。
「前兆のある片頭痛」を持っている方も、ピルを飲むことはできません。前兆のある片頭痛とは、目の前がチカチカしたり視野が狭くなったりする現象が起こり、その後片頭痛が起こることを言います。こういった方は脳梗塞のリスクが高くなると言われています。ピルの処方を希望する場合、片頭痛がある方は医師や看護師に必ず伝えるようにしてください。
正しい知識を持っていれば、ピルは怖くない!
なお、妊娠を希望されている方には、残念ながら避妊用ピルも生理痛用ピルも処方できません。妊娠するまでは鎮痛剤や漢方薬を内服してもらい、出産後も生理痛が強ければ次回の妊娠を希望するまでピルを処方することもあります。
この他にもピルが飲めない場合がいくつかあります。そのため、ピルの処方を希望される方には、副作用などのリスクが上昇しないかどうか医師から詳しくお話を聞くことがあります。他の薬の処方よりも少し時間がかかるかもしれませんが、大切なことですのでご協力をお願いします。
ピルは正しい知識を持って正しく内服すればそれほど怖い薬ではありません。今まで苦しめられていた生理痛や生理に関する症状から開放され、人生が変わったと言われる方もいます。
ただし、薬である以上は一定の確率で副作用が出る可能性もあります。副作用が出てもすぐに対処すれば大事には至らないことがほとんどですので、早めにかかりつけの婦人科へ相談をしてください。
また、ピルを飲んでも生理痛が改善しない場合は子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が隠れている可能性もありますので、婦人科での診察を受けるようにしてください。
婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。
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