小学生の娘の生理痛がひどい。婦人科に連れて行くべきタイミングは?内診はするの?
- 作成:2022/01/30
小中学生の子どもが生理痛が強いと言ったとき、婦人科に連れて行かず、とりあえず様子をみよう……、そう思っている保護者の方もいるかもしれません。しかし、この考え方は間違っています。子どもだから症状が軽いという訳ではなく、生理が始まれば大人と同じように生理痛や月経前症候群(PMS)などの症状が現れます。痛みが強くて鎮痛剤を飲んだり、授業や学校を休んだりする子どももいます。修学旅行などのイベントに参加できなかったり、スポーツの大会や受験で実力を発揮できなかったりすることもあるかもしれません。ひょっとすると病気が隠れているという可能性もあります。今回は、小中学生で生理痛が強い場合の対処方法、婦人科を受診するタイミングなどについて解説します。
この記事の目安時間は3分です
婦人科の「内診」は性行為の経験のある人だけ
小学生でも中学生でも高校生でも、生理痛が強くて困っていれば婦人科を受診するべきです。婦人科というと、体が成熟した女性がいくところというイメージがあるかもしれませんが、特に年齢制限はなく、女の子が受診しても大丈夫です。
これは生理痛に限ったことではなく、生理前にイライラしたり気分が落ち込んだりするPMSや、生理の量が多い過多月経で困っている場合も同じです。何歳であろうが生理の症状で困っていれば婦人科で相談をしてください。
ただ、大人でも婦人科を受診することに抵抗がある方は多く、小中学生であれば尚更です。その一番の理由はやはり診察でしょう。婦人科の診察は「内診」といって、腟から指や超音波の機械などを挿入して診察を行います。子宮や卵巣の周りには腸があるため、お腹からの超音波では見えにくい場合がありますが、腟からの超音波だと子宮や卵巣がはっきりと見えるため異常を発見しやすくなります。そのため婦人科では基本的に腟からの診察を行います。
子どもでも内診を受けるの? と心配し、婦人科の受診を躊躇されている方もいるかもしれません。でも、腟からの診察は性行為の経験がある方に限ります。性行為の経験がなければ腟からの診察は痛みを伴うためです。性行為の経験がない方で診察が必要であれば、お腹からの超音波を行います。子宮や卵巣が見えにくい場合は肛門から超音波を入れることもあります。
小中学生の場合は特に異常はなく生理痛が強いことが多いのですが、稀に子宮奇形といって生まれつき子宮の形に異常があり生理痛が強くなることがあります。こういった異常を見逃さないためにも、一度は診察を受けた方がいいでしょう。
子どもでも、ピルを飲んで生理痛を治療することが可能
十分な栄養や睡眠を取って体調を整え、体やお腹を温めることで生理痛が軽くなることもあります。それでも痛みが強いのであれば、子どもでも我慢せずに鎮痛剤を内服したほうがいいでしょう。鎮痛剤によっては15歳未満には使用できないものもありますので、使用する際には医師や薬剤師に相談するようにしてください。
鎮痛剤を内服しても痛みが強いのであれば、漢方薬やピルを使用します。「子どもがピルを飲んでも大丈夫ですか?」と保護者の方からよく質問を受けますが、基本的には生理が始まっていればピルを内服することは可能です。ピルは生理痛以外にも、PMSや月経不順、過多月経やニキビを改善させる効果もあるため、これらの症状で困っている中学生や高校生にはピルを処方することもあります。
生理痛の強い思春期の女性の約2/3に子宮内膜症があったと報告されています。子宮内膜症とは生理痛がひどくなる病気の一つですが、放置すれば不妊症の原因となり、卵巣が腫れて手術が必要になる可能性もあります。
ピルは、この子宮内膜症の進行を抑える効果があります。鎮痛剤を飲んでも生理痛が改善しない方は子宮内膜症の可能性もありますので、ピルを内服したほうがいいでしょう。ピルで生理の日を調整することもできますので、学校のイベントや受験などと生理の日が重なってしまうことを避けることも可能です。
大人も子どもも生理痛が辛いのは同じ
思春期に生理痛が強くなる方は、「機能性月経困難症」といって診察しても特に異常が見つからないことが多いです。先ほど「生理痛が強い思春期の女性の約2/3に子宮内膜症があった」と書きましたが、これは手術をしてお腹の中を直接観察して子宮内膜症が見つかったものであり、通常の外来診察ではわからないようなごく初期の小さな病変です。
子宮内膜症があれば徐々に悪化して、生理痛がひどくなっている可能性も考えられます。徐々に生理痛がひどくなっているようなら、早めに婦人科を受診してください。なお、子宮内膜症がなければ、徐々に生理痛がひどくなる可能性は低いです。
大人も子どもも生理痛が辛いのは同じです。子どもだから生理痛は我慢しなければならないという医学的な根拠はありません。生理痛が強い場合は子宮の異常や子宮内膜症が隠れている場合もあり、放置すればさらに生理痛がひどくなり、妊娠しづらくなったり手術が必要となる場合もあります。娘さんや知り合いのお子さんが生理痛で困っていたら、婦人科を受診することを勧めてあげてください。
婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。
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