うまくいけば5年間も生理痛や生理の出血から解放される!「ミレーナ」のメリット、デメリット
- 作成:2021/11/14
生理痛や生理の出血量を減らすには、ピルを服用する以外に、子宮の中に器具を入れる方法もあります。最近タレントの方がSNSで紹介したこともあり「ミレーナ」という名前を目にしたことがある方もいるかもしれません。もともと避妊用に開発されたものですが、生理痛や生理の量が多い過多月経にも効果があるため保険適応にもなっています。ミレーナとはどういうものなのか、どういう時にミレーナを使うべきなのか、メリットやデメリットなど婦人科医が解説していきます。
この記事の目安時間は3分です
月経困難症、過多月経は保険適用で「ミレーナ」を使える
ミレーナは「子宮内黄体ホルモン放出システム」といって、黄体ホルモンが少しずつ放出される器具の商品名です。T字型をした小さな器具で、子宮の中に留置すると黄体ホルモンによって子宮内膜が薄くなります。薄くなった子宮内膜では妊娠することができないため、避妊用として使用されていました。正しく使用した際の避妊の失敗率は、ピルを服用した場合は0.3%、ミレーナは0.2%です。ミレーナの避妊の効果はピルと同程度となっています。
子宮内膜が薄くなれば生理の量が少なくなり、さらに生理痛の原因となる物質「プロスタグランジン」の分泌も減少するため、生理痛も改善します。そこで日本では2014年から月経困難症、過多月経に対して保険適応となりました。
5年間入れっぱなし。ピルのような血栓症のリスクがない
ミレーナは1度子宮の中に留置してしまえば5年間は入れっぱなしです。入院の必要はなく、外来で留置することができます。ピルは毎日決まった時間に内服する必要がありますが、ミレーナは薬を飲む必要はありません。また、ミレーナにはピルのように血栓症や脳梗塞などの副作用のリスクがないため、ピルを内服することができない方でも、ミレーナで生理痛や過多月経を改善することができます。
一方で、子宮筋腫などがあり子宮が大きい方や、子宮の内側の空間がゆがんでしまっている方は、ミレーナを入れても抜け落ちてしまうこともあります。ミレーナを留置することができるかどうかは婦人科で診察を受けてから判断することになります。
ミレーナを留置すれば生理の量が減ると書きましたが、数ヶ月すれば多くの方が生理の出血はほんの少しあるか、ほとんどなくなります。生理がなければもちろん生理痛もありませんので、痛みや出血からは解放されます。ただし、ミレーナを留置すれば全員生理がなくなる訳ではありません。以前よりは量は減ったものの毎月生理がある方もいますし、稀ではありますがミレーナを留置しても痛みや出血が改善しないという場合もあります。
使用開始時に痛みを感じることもあるが、短期間で消える人が多い
ミレーナを留置する際に少し痛みを感じることがあります。これまで出産を経験されていない方は子宮の出口が狭いため、ミレーナを挿入する際に痛みが強くなりやすい傾向にあります。ミレーナを留置した後しばらくは軽い痛みや違和感がでることがありますが、ほとんどの方は1~2週間でそのような症状は消えます。中には痛みが強くて途中でミレーナを抜かなければならないこともあります。
ピルは生理痛や過多月経の他にも、生理前にイライラしたり気分が落ち込んだりする月経前症候群やニキビ・肌荒れにも効果があります。一方、ミレーナから放出される黄体ホルモンは子宮にしか作用しないため、月経前症候群やニキビ・肌荒れには効果がありません。
ミレーナを使用することにより、うまくいけば5年間は生理の出血がほとんどなく、生理の痛みや出血から解放されます。ピルの副作用に不安がある方や、毎日ピルを飲むことが難しい方にとっては有用な手段となります。生理痛や過多月経があれば保険適応となるため、留置する時に支払いが必要となりますが、月々に換算するとピルよりもコストは安くなります。
生理痛に対する治療には様々な選択肢がありますので、我慢せずに婦人科を受診し相談をしてください。
婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。
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