お腹に10cmのコブができることも…。ひどい生理痛や過多月経を招く「子宮筋腫」は、早めに婦人科の受診を!
- 作成:2022/03/17
子宮筋腫とは子宮の筋肉からできる硬いコブのような良性の腫瘍であり、生理痛がひどくなり生理の出血量が増えることもあります。筋腫ができる場所やサイズによっては妊娠や出産にも影響することもあり、女性のライフスタイルに大きな影響を与える病気です。今回は子宮筋腫について婦人科医が解説していきます。
この記事の目安時間は3分です
筋腫の場所やサイズによって、症状の現れ方が違う
子宮筋腫は20~40代の日本人女性のうち、20~30%にみられると言われています。他の国では人種によって70~80%の女性にみられるとも言われており、子宮や卵巣にみつかる腫瘍の中では最も頻度の多いものです。
子宮筋腫がなぜできるのかは今のところ解明されていません。生理がある間は大きくなったり数が増えたりして、一度子宮筋腫ができてしまうと自然に消えることはありません。閉経後は大きくならず、サイズはそのままか少し小さくなりますので、女性ホルモンが影響することだけは分かっています。
子宮筋腫は小さければ症状が出ることはほとんどありません。大きくなると生理痛が強くなり、過多月経といって生理の量も多くなっていきます。ただし、大きくなれば必ず症状が出るとも限らず、子宮筋腫ができる場所によって症状が出やすい場合と出にくい場合があります。
子宮の外側に飛び出すようにできる「漿膜下筋腫」(しょうまくかきんしゅ)は、生理痛や生理の量にはあまり影響することはなく、サイズが大きくなっても症状が全く出ないこともあります。逆に、子宮の内側に飛び出すようにできる「粘膜下筋腫」は、1cmほどの小さな子宮筋腫であっても貧血になるくらいに生理の量が増えてしまうことがあります。子宮の筋肉の中に埋もれるようにできる「筋層内筋腫」も、大きくなれば大きくなるほど生理痛が強くなり、過多月経にもなります。
子宮筋腫は1つだけが大きくなることもありますし、いくつもできることもあります。どちらにしても子宮筋腫が大きくなることによって子宮も引き延ばされて大きくなっていきます。正常な子宮は鶏の卵よりも少し大きいサイズですが、子宮筋腫がどんどん大きくなれば5cm、10cmと大きくなり、場合によってはさらに大きくなることもあります。
小さな子宮筋腫はお腹を触っても分かりませんが、大きくなれば横たわったときにお腹を押さえると硬いものが触れることもあります。
根治には手術が必要。妊娠希望の女性は筋腫だけ切除するが…
子宮筋腫を薬で治すことはまだできません。根本的な治療は手術によって取り除くしかありません。妊娠を希望する場合は子宮を温存して子宮筋腫だけを切除しますが、しばらくしてまた子宮筋腫ができてしまうことがあります。完全に再発を予防するには子宮ごと切除するしかありません。
手術以外では「UAE」(子宮動脈塞栓術)があります。これは血管の中に細いカテーテルを進めていき、子宮筋腫へ血液を送っている動脈を一時的に詰めて子宮筋腫への血流を減らすことで子宮筋腫を小さくする方法です。うまくいけばお腹を切らずに、痛みや出血量を改善させることができます。
生理の痛みが強い場合は鎮痛剤を内服します。鎮痛剤が効かない場合や過多月経もある場合は、ピルなどのホルモン剤を使います。これらの薬は症状を軽くすることはできますが、子宮筋腫を小さくする効果はありません。子宮筋腫が大きくなれば薬が効かなくなることもあり、その場合は手術やUAEが必要となる場合もあります。
閉経した場合は卵巣から女性ホルモンがほとんど分泌されなくなり、子宮筋腫が大きくなることはありません。生理がなければ痛みも出血もないため、子宮筋腫による症状はなくなります。子宮筋腫のサイズが大きな場合は、筋腫の部分に痛みが出ることもあります。痛みが続く場合は手術をすることもあります。
子宮筋腫は生理痛や過多月経の原因として頻度の高い病気ですが、婦人科で診察しなければ分からないことがほとんどです。妊娠が判明した時にはすでに子宮筋腫が大きくなっていて、妊娠中や出産においてトラブルの原因となる可能性もあります。生理痛や過多月経の症状が強い場合は子宮筋腫が隠れている可能性もありますので、一度婦人科を受診し診察を受けてみてください。
婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。
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