コンドームは何歳まで必要?ピルは使い続けても大丈夫? 産婦人科医と考える「40代以降の避妊」
- 作成:2022/09/26
更年期は女性なら誰もが通過するステップ。しかしネガティブなイメージで捉えられがちで、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。まずは更年期を正しく理解することが大事。そこでAskDoctorsでは、産婦人科医の宋美玄先生に、更年期の過ごし方についてわかりやすく解説していただきます。今回のテーマは「閉経が近づいてきたら、避妊はどうする?」です。
この記事の目安時間は3分です
こんにちは、産婦人科医の宋美玄です。
妊娠を望まない場合、避妊はいつまで必要だと思いますか? 答えは閉経まで。しかし「もうすぐ更年期だから大丈夫」などと考えている人も少なくありません。確かに年齢とともに妊娠率は下がりますが、更年期でも排卵がある限りは妊娠の可能性はあり、避妊は必要です。
ただ、40代以降は避妊方法を少し考えたほうがいい場合もあります。
コンドームを使っている場合
コンドームを使っている場合は、40代以降もそのまま使い続けてかまいませんし、閉経後は避妊をやめてもOKです。ただし、いつが閉経なのか自分ではわかりづらいもの。医学的には「生理がなくなって1年以上経過」したら閉経ですが、生理が徐々に不順になって閉経に至ることが多く、その時期を予測するのは難しいんですね。「そういえば1年以上、生理がない」とあとから閉経に気づくパターンがほとんど。閉経したかどうか知りたい場合は、婦人科でホルモンの値を調べる採血検査を受けるといいでしょう。
低用量ピルを飲んでいる場合
低用量ピルには、2つの女性ホルモンが配合されています。一つは「卵胞ホルモン(エストロゲン)」で、不正出血をおきにくくしてくれます。もう一つの「黄体ホルモン(プロゲステロン)」は排卵を抑え、子宮内膜が厚くなるのを防ぎます。経血量を減らし、過多月経や月経痛にも効果があります。月経がなくなる場合も。
2種のホルモンのうち、エストロゲンは血管の中に血のかたまりができる「血栓症」のリスクがわずかながらあります。そのため40代以降は、プロゲステロンのみが入っている「黄体ホルモン製剤」がおすすめです。
黄体ホルモン製剤には、飲み薬タイプの「経口黄体ホルモン」と、子宮内に装着する「子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ)」の2タイプがあります。経口黄体ホルモンは毎日飲むことになります。一方、「子宮内黄体ホルモン放出システム」は医師に装着してもらう必要がありますが、一度装着すれば最長で5年間効果が持続し、手間や費用を抑えられます。
避妊目的で黄体ホルモン製剤を使う場合も、閉経を迎えれば使う必要はなくなります。とはいえ、黄体ホルモン製剤を使っていると生理がなくなる場合もあるので、閉経の判断がしにくいもの。ホットフラッシュなどの更年期症状が出てきたら、一度休薬したり、子宮内に装着した子宮内黄体ホルモン放出システムを取り出したりして、ホルモン量の検査を。その上で、今後も続けるかどうか医師と相談しましょう。
なお、黄体ホルモン製剤は避妊や月経困難症に使うぶんにはいいのですが、PMS(月経前症候群)を改善する効果は期待できません。
ピルとホルモン補充療法はどう違う?
さて、更年期はホットフラッシュやイライラなどさまざまな不快症状に悩まされる人が多く、治療としてホルモン補充療法が効果を上げています。よく「低用量ピルも女性ホルモン剤だから、更年期症状を抑制する効果がありますか?」と聞かれることがあります。
確かに、エストロゲンが含まれているタイプの低用量ピルであれば、更年期症状に対する効果はあります。しかし、更年期障害の治療を目的としたものではないので、ホルモンの量が多いんですね。また、先ほどもお話ししたように、40代以降は血栓症のリスクを考慮して黄体ホルモン製剤に切り替えることが望ましく、この製剤ではエストロゲンの補充はできません。
そのため、黄体ホルモン製剤を使っている場合は、貼り薬やジェルのような経皮薬(皮膚経由で薬効成分が浸透する薬)でエストロゲンを補充するといいでしょう。経皮薬は肝臓に負担がかからず、ホルモン量も少なめ。血栓症リスクが上がることもありません。
40歳を過ぎると、更年期障害の治療を始めたり、低用量ピルの薬を切り替えたり、婦人科系疾患の相談をしたりと、婦人科を訪れる機会は増えていくことでしょう。そうした時、相談しやすい婦人科医をもつことは大きな安心感につながります。ぜひ、早めにかかりつけ医を決めておいてくださいね。
1976年兵庫県神戸市生まれ。2001年大阪大学医学部医学科卒業。2010年に発売した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がシリーズ累計70万部突破の大ヒット。2児の母として子育てと臨床産婦人科医を両立。メディア等への積極的露出で女性の悩み、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
-
がまんせず、無理をせず、相談を‐産婦人科医からのメッセージ
生理痛(生理・月経の痛み)
-
生理不順へのピル、漢方薬の効果 市販薬やサプリも効く?価格は?LEP製剤も解説
生理不順・遅れ(月経不順)
-
「更年期=生理が楽になる」とは限らない! 出血が増え、生理痛が増す人も。その原因と治療を婦人科医が解説。
更年期障害の症状
女性
-
早発閉経の原因、症状、妊娠への影響、治療、予防可能性 何科に行く?何歳が目安?
生理不順・遅れ(月経不順)
-
更年期障害はがまんしなくていい。ほてり、息切れ、イライラを沈める治療法は、老化症状にまで効果あり!
健康・予防のお役立ち情報
女性
-
月経困難症の治療法
生理痛(生理・月経の痛み)
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。