月経困難症の治療法
- 作成:2024/09/30
月経困難症には、鎮痛薬(痛み止め)で痛みを抑えるといった対症療法だけでなく、月経困難症の原因に働きかけ、痛み以外の症状も抑える治療法があります。本記事では、月経困難症にどのような治療法があるかを解説します。
この記事の目安時間は6分です
月経困難症の治療の進め方
月経困難症は、子宮内膜症などが原因となる「器質性月経困難症」と、原因となる病気が明らかではない「機能性月経困難症」にわけられ、そのどちらかによって、優先される治療内容がかわります。そのため、月経困難症で受診すると、問診、内診、超音波(エコー)検査、血液検査などにより、月経困難症が器質性か機能性かを診断します。
器質性月経困難症の場合は、原因となる病気の治療が優先されることもあり、場合によっては手術を行うこともあります。また、心理的要因により月経痛が増すこともあり、そのような場合はカウンセリングが行われることがあります。
機能性月経困難症の場合は、主に薬物療法が行われます。薬物療法には、大きく分けて、主に痛みを抑える「対症療法」と、痛みを含めた症状の発生原因となる卵巣の働きや子宮内膜の増殖を抑える「ホルモン療法」>があり、症状や状態によって選択します。
以下で、それぞれの薬物療法について詳しく紹介します。
対症療法
- 鎮痛薬(痛み止め)
月経困難症の痛みは、子宮の中に分泌されて子宮の収縮を促す「プロスタグランジン」が増えすぎることにより起こると考えられています。そのため、プロスタグランジンが作られにくくすることで痛みを抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が第一選択になります。市販されている鎮痛薬の中にはNSAIDsだけでなく、アセトアミノフェンなど 、NSAIDsではない鎮痛薬も多いです。よくわからない場合は薬局や病院で相談してみましょう。 - 漢方薬
漢方薬にも月経困難症に対する効果が期待できるものがあります。芍薬甘草湯は筋肉に対する抗痙攣(けいれん)作用があり、子宮の筋肉が収縮する痛みに対する効果が期待されます。そのほか、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、当帰建中湯などが状態に合わせて用いられることがあります。 - 鎮痙薬
子宮筋の収縮を抑えることで痛みをやわらげる薬です。月経痛の原因によっては有効な場合があります。
ホルモン療法
- 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)
エストロゲンと黄体ホルモン(プロゲスチン)というふたつの女性ホルモンが含まれた経口薬で、低用量ピルとも呼ばれます。毎日飲み続けることで、排卵や子宮内膜の増殖を抑え、月経に伴う症状を軽減させます。ただし血栓症リスクが高い人は注意が必要です。
経口避妊薬として用いられるOCとほとんど同じ成分ですが、自由診療のOCと異なり、LEPは月経困難症などの治療を目的とした保険適用薬です。 - 黄体ホルモン製剤
毎日飲み続けることで子宮内膜の増殖を抑え、月経に伴う症状を軽減させます。低用量ピルに含まれるエストロゲンが含まれておらず、血栓症の副作用がないため、血栓症リスクが高い人には第一選択とされています。 - 黄体ホルモン放出子宮内システム(IUS:Intra Uterine System)
子宮内に挿入する、黄体ホルモンを持続的に放出する小さな器具です。経口薬を毎日飲み続けるのが難しい人や、血栓症のリスクが高い人の場合に有用とされています。
まとめ
月経困難症の治療には、市販の鎮痛薬も有用ですが、病院を受診しないと受けられない治療もあります。一度受診し、自分に合った治療を受けると、想像しなかったほど楽になることもあります。月経に伴う症状で困っている場合は、一度産婦人科(婦人科)を受診してみるのをおすすめします。
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2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。
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