月経(生理)に伴うおなかや頭の痛み、吐き気、イライラ...これって「当たり前」?

  • 作成:2024/09/18

月経(生理)が来るとおなかや頭の痛みや吐き気、イライラに悩まされる、なんてことはありませんか?中にはひどい月経痛があっても「女性はみんながまんしている」などと思い、がまんしている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日常生活に支障を来すような症状が出る場合は「月経困難症」という病気の可能性があり、さまざまな治療法があります。また、月経困難症には、不妊につながるような病気が隠れていることも。本記事では、月経困難症の概要について解説します。

柴田 綾子 監修
淀川キリスト教病院 産婦人科医長・産婦人科専門医
柴田 綾子 先生

この記事の目安時間は6分です

月経(生理)に伴うおなかや頭の痛み、吐き気、イライラ...これって「当たり前」?

月経困難症とは

月経(生理)直前から月経中に下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、吐き気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂うつなどの症状が出ることを「月経困難症」といいます。
20〜49歳の女性1万人を対象に行われた疫学調査1)では、3人に1人が月経困難症という結果が出ています。また、月経前にイライラ、抑うつ、頭痛、腹痛などの症状が出る「PMS」を訴える女性は6割に及ぶという報告もあり、多くの女性が月経に伴って起こる症状に悩まされていることがうかがえます。

1)リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)から見た子宮内膜症等の予防、診断、治療に関する研究(総括研究報告書)

原因

月経困難症には、子宮内膜症/子宮腺筋症/子宮筋腫などの病気が原因で起こる器質性月経困難症と、原因となる明らかな病気がない機能性月経困難症があります。

■ 器質性月経困難症

器質性月経困難症の原因として多いのは、子宮内膜症や、子宮腺筋症、子宮筋腫です。初経後数年経過してから発症することが多いとされています。

■ 機能性月経困難症

機能性月経困難症は、初経から数年後から始まるとされます。

その原因は主に以下3つと考えられています。

  • 子宮口が狭い
    若い人や出産経験のない人は、子宮から腟につながる道(子宮頸管)が狭く、柔軟性もまだあまりありません。そのため、経血を送り出すことが難しく、痛みが発生しやすくなります。
    また、子宮口が狭いことで逆流した経血が、卵管を通過して骨盤内へ流れ込み、経血に含まれるプロスタグランジンによって痛みが出ることも考えられています。

  • プロスタグランジンの分泌が過剰
    プロスタグランジンは、子宮を収縮させるホルモンです。
    この物質が過剰に分泌された場合やホルモンに対する感受性が高い場合、子宮の収縮が強くなり、血流が減ることで、痛みが生じるとされています。

  • 心理的要因
    月経に伴う気分の変化でも痛みが発生するとされています。月経に対するネガティブな思いや、ストレスが痛みを悪化させる原因であることがあります。

診断

月経困難症の診断は、まず、問診で初経年齢や月経周期、痛みの種類や部位を確認します。その後、内診や超音波(エコー)検査で原因となる病気があるか(器質性か機能性か)を調べ、必要に応じて血液検査なども行って診断します。内診は行わない場合もあるので、不安な方は遠慮せずに医師に相談しましょう。

治療

月経困難症の治療は、主に薬物療法で行われます。薬物療法には、鎮痛薬(痛み止め)などの対症療法や、低用量ピルなどのホルモン療法があり、症状や状態によって選択されます。なお、器質性月経困難症の場合は、原因疾患の治療を優先することもあります。

月経困難症を放置すると…

月経困難症には、子宮内膜症などの原因疾患が隠れている場合があります。月経困難症のある女性は、将来の子宮内膜症の罹患率が高いことが報告されており、子宮内膜症をお持ちの方の、30~50%が不妊になると報告されています2)
また、月経困難症は、毎月のことでしかたないと慣れてしまっていても、仕事や日常生活に支障を来している可能性もあります。
月経に伴う症状に悩まされている場合は、隠れている疾患を早期発見・早期治療するため、よりよい生活を送るためにも、がまんせず、一度産婦人科(婦人科)を受診されてみてはいかがでしょうか。

2) 公益社団法人 日本産婦人科医会「(4)子宮内膜症性不妊への対応」(2024年7月閲覧)

2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。

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