たいしたことがないと思っていても…月経困難症にひそむ病気

  • 作成:2024/09/11

月経困難症には、その原因となる病気が隠れている場合があり、中には不妊や流産の原因になる病気もあります。そのため、月経(生理)痛などの症状がひどい場合は、「鎮痛薬(痛み止め)でがまんできる」「みんながまんしているからしかたない」などと思わず、産婦人科(婦人科)を受診し、早期発見、早期治療を行うことが重要です。本記事では、月経困難症の原因となる主な病気を紹介します。

柴田 綾子 監修
淀川キリスト教病院 産婦人科医長・産婦人科専門医
柴田 綾子 先生

この記事の目安時間は6分です

たいしたことがないと思っていても…月経困難症にひそむ病気

子宮内膜症

子宮の内側には、子宮内膜という粘膜があります。月経(生理)は、排卵に合わせて厚くなった子宮内膜がはがれ落ちて血液といっしょに体の外に出たものです。子宮内膜症は、子宮内膜と似た組織が、子宮の外(卵巣、骨盤腹膜など)にできてしまう病気です。これらは、通常の子宮内膜と同様に、月経の影響ではがれて出血します。子宮内の子宮内膜は血液とともに腟を通って体の外に出ますが、子宮の外で増えた組織は出口がないため、おなかの中に溜まって周辺の組織に炎症や癒着を引き起こし、激しい痛みなどを引き起こします。これが子宮内膜症です。

子宮内膜症は良性の病気のため、予後は良好で、閉経後には改善することもあります。しかし、強い痛みで日常生活に支障を来したり、卵巣が腫れたり、卵巣がんになる可能性もあるので注意が必要です。また、子宮内膜症患者の30~50%%が不妊であり、不妊症患者の25~50%に子宮内膜症が認められるとされています1)

1)公益社団法人 日本産婦人科医会「(4)子宮内膜症性不妊への対応」(2024年7月閲覧)

治療法

    主に薬物療法を行います。対症療法とホルモン療法を用いつつ、長期的に経過を見る必要があります。症状が長引いたり悪化したりする場合には、手術をすることもあります。

子宮腺筋症

子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が、何らかの原因により子宮筋層内にできて増える病気です。子宮筋層内で、正常な子宮内膜と同じように増えてはがれてを繰り返すので、進行すると子宮筋層がどんどん厚くなり、子宮が大きくふくらんでいきます。
症状は月経痛や、過多月経およびそれに伴う貧血などです。痛みはかなり強く、月経が終わってからもしばらく続くこともあります。また、不妊や流産の原因にもなります。

治療法

    薬物療法と手術療法があります。症状が軽い場合は薬物療法で貧血や痛みを抑えますが、症状が重い場合は子宮全摘など手術の可能性もあります。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の壁(筋層)の中にできる良性の腫瘍(こぶのような塊)です。30〜50代の女性に発症することが多く、10〜20代にも見られることがあります。

子宮筋腫があっても症状がないこともありますが、強い月経痛月経の量が増える、レバーのような血の塊が混じって出るといった過多月経の症状が現れます。その結果、貧血、動悸、息切れなどにつながることもあります。また下腹部痛や腰痛などの痛みや、頻尿、排尿困難、便秘などの症状を伴うこともあります。

子宮筋腫は腫瘍といっても良性ですが、1%の割合でがんが混じっていることがあります。そのため筋腫の大きくなるスピードが速かったり、筋腫の内部出血があったりする場合には 注意が必要です。

治療法

    主な治療は薬物療法です。ただし、筋腫の大きさや部位によっては手術を行うこともあります。

まとめ

月経困難症には、その原因となる病気が隠れていることがあります。月経中の症状がつらいときや、薬を飲んでも症状が治まらないときは、一度産婦人科(婦人科)を受診していただければと思います。

2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。

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