秋から冬に増える、コロナに症状が似た感染性胃腸炎の注意点
- 作成:2021/11/02
集団生活の場で一人患者が出ると、次々と感染が拡がってしまう感染症。新型コロナウイルスを通して、“感染症で重要なのは予防対策”だと世界中が再認識しています。秋から冬にかけてピークを迎えるおなかのかぜ、ノロウイルスやロタウイルスによる「感染性胃腸炎」も同様に予防対策が重要です。
この記事の目安時間は6分です
嘔吐、下痢、発熱…症状が起こったら自己判断せず受診する
突然、嘔吐した。激しい腹痛と下痢におそわれ、熱も出た。急激な症状にあわててしまいますが、これは「感染性胃腸炎」の典型的な症状です。嘔吐は半日~1日、下痢は2、3日~1週間ほど続き、発熱、筋肉痛、頭痛、せきや鼻水など、よくあるかぜの症状を伴うこともあります。
ノロウイルスは、おとなも子どもも感染しますが、ロタウイルス感染は乳幼児に多く、年齢が上がると症状が軽くなる傾向があります。かぜに似た症状もみられる新型コロナが拡がっている現在、何らかの症状が起こったら自己判断せず、早急に医療機関を受診してください。
ウイルスに感染した人が十分に手を洗わず調理したものを食べたり、感染者の便や嘔吐物に接したりすることで感染します。ノロウイルスは、ウイルスを持ったカキなどの二枚貝を生や加熱が不十分なまま食べて感染することが多くみられます。感染者の嘔吐物には1g あたり約10万個、発症初期の便には1g あたり約10億個ものウイルスが含まれており、10~100個程度のウイルスが口に入るだけで感染するほど感染力が高いことが知られています。ウイルスは腸の中で増え、乾燥や熱にも強く、自然環境の中でも長期間生存が可能で、一度かかっても何度も感染する手強い相手です。
正しい手洗いと処理で二次感染を防ぐ
自分でできる感染予防の第一は、やはり手洗いです。外出後、トイレ後、調理や食事前、便や嘔吐物の処理後には、必ず手を洗います。石けんで30秒を目安に十分こすり洗いして水で流せば、ウイルスは大幅に減らせます。患者の便や嘔吐物など汚物の処理は慎重にしましょう。子どもが吐いてあわてて片付け、家族全員感染する例が数多くあります。下記の要領で素早く適切に処理します。
1. 処理する人は必ず使い捨てガウン、マスク、手袋などの防護具を着用する。
2. 処理する人以外は、汚物に近づかない。
3. 処理中、処理後は十分に換気。
4. ノロウイルスやロタウイルスはアルコール消毒剤や熱に対する抵抗力が高いので「塩素消毒液」を使う。
5. 汚物に含まれるウイルスが飛び散らないよう、使い捨てペーパータオルや布などで静かに拭き取る。拭き取ったあとは「塩素消毒液」で拭き、さらに水拭きする。
6. ウイルスは飛散し舞い上がりやすいので、広範囲の壁、床、ドアノブも清掃する。
7. 使ったペーパータオルや布、ガウン、マスク、手袋などは、ポリ袋に入れ塩素消毒液に浸し密封して処分する。おむつも速やかに閉じ同様に密封する。
8. 処理後は着替え、着ていたものは洗濯。手洗いうがいを行い、可能ならシャワーを浴びる。
注意したい脱水の重症化
今のところ、ノロウイルスやロタウイルスに対する特効薬はありません。治療は脱水を防ぐ水分補給や体力維持の栄養補給などが中心です。また、下痢止め薬は使いません。ウイルスを体外に排出するのを止めてしまい、回復を遅らせることがあるからです。ロタウイルスには、生後8週からの接種が推奨される“定期接種”※ワクチンがあります。
気をつけたいのは「脱水症状」です。体の水分量が多い乳幼児、喉の渇きを感じにくい高齢者は脱水を起こしやすいので要注意。皮膚・唇・舌の乾燥、食欲低下、脱力、倦怠感、意識障害、血圧低下、頻脈などの症状がないか観察します。乳幼児はぐったりしている、泣いても涙が出ない、尿の回数が減るなどのサインを見逃さないことが大切です。経口補水液などで水分を補いますが、脱水症状が重い場合は医療機関で点滴を行う治療が必要になります。
※定期接種:法律に基づいて市区町村が主体となって公費(一部自己負担)で実施される予防接種
家庭での「塩素消毒液」の作り方
①次亜塩素酸ナトリウム含む家庭用塩素漂白剤の製品をもとに、水で薄めて「塩素消毒液」を作る
②家庭用塩素漂白剤製品の「使用上の注意」をよく読み、濃度を確認。使用期限内のものを使用する。
③下記の表の通り、用途に応じ正しく計って作る
・壁、床、ドアノブ、調度品、食器などの消毒や拭き取りには200ppmの濃度の塩素消毒液を使う
・嘔吐物などを廃棄するときは袋の中で1000ppmの濃度の塩素消毒液に浸し密封する
④嘔吐物など酸性のものに原液をかけると有毒ガスが発生することがあるので注意する
⑤作った消毒液は一度で使い切る
参考
NIID国立感染症研究所
(https://www.niid.go.jp/niid/ja/)
厚生労働省
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000182906.pdf)
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html)
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/Rotavirus/index.html)
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/rota_index.html)
東京都感染症情報センター
(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/gastro/)
東京都感染症情報センター
(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/gastro/hitokuchi-joho.pdf?20201029)
防ごうノロウイルス感染
(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/gastro/pdf-file/p-familly.pdf)
日本感染症学会
(https://www.kansensho.or.jp/ref/d50.html)
長寿科学進行財団 健康長寿ネット 脱水症
(https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/dassui.html)
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
-
保育園でノロウイルスが大流行!登園自粛2日後でも元気ならもう大丈夫?
感染性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルス)
子育て
子育て(まんが)
-
ノロやロタなどの胃腸炎が子供へ感染する経路 予防できる?アルコールの効かないことも?
感染性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルス)
-
アトピー性皮膚炎の時の生活 乾燥、汗、脱毛、タバコは危険?運動、プール、温泉、睡眠の注意点は?
アトピー性皮膚炎
-
プール熱(咽頭結膜熱)の原因、感染経路、感染・潜伏期間、予防方法 流行時期、2回かかる可能性も解説
プール熱(咽頭結膜熱・アデノウイルス感染症)
-
二酸化塩素などの「空間除菌」商品は、新型コロナ感染対策として有効ですか?
健康・予防のお役立ち情報
-
コロナワクチン、接種したらすぐに元通りの生活をしても大丈夫?【医師監修】
かぜ・インフルエンザ
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。