コロナワクチン、接種したらすぐに元通りの生活をしても大丈夫?【医師監修】
- 作成:2021/07/03
日本でもmRNAワクチンの接種が進んでいますが、ワクチン接種をすればすぐに元通りの生活をしても良いのかどうかは気になるところです。
この記事の目安時間は3分です
Q.ワクチン接種をすれば、もう感染対策はしなくて良いでしょうか?
A.ワクチン接種をしても、基本的な感染対策は続ける必要があります。
ワクチンを接種したからといって、その日からいきなり完全無敵状態になれるわけではありません。十分な免疫が機能するまでの間や、地域で流行している間は、これまで通りの感染対策を続けることが重要です。
ワクチンの効果が十分に発揮されるのは、2回目接種の2週間後から
日本で接種されているファイザー社製・モデルナ社製のmRNAワクチンには、感染・発症を90%以上抑えるという大きな効果が確認されています1,2,3)が、この数字通りの効果が発揮されるのは、2回目の接種から2週間が経過してからです。1回接種しただけの状態や、2回目接種の直後には、まだ期待されている防御効果は十分に得られていません。1回接種しただけでは全くの無意味・・・というわけでもありませんが、たとえばファイザー社製のmRNAワクチンでは1回目接種から2~3週間が経過した段階でも、まだその防御効果は55~70%くらい4,5)と、本来の効果よりは大きく劣ることが確認されています。
そのため、2回目の接種から2週間が経過するまでの間に、「ワクチンを打ったからもう大丈夫だろう」と感染対策を緩めることはまだ危険です。
ワクチン接種で100%無敵になれるわけでもない
確かに、ワクチンはウイルスに接触してしまった際の感染・発症・重症化・死亡といったリスクを大きく軽減してくれるものではありますが、その全てを100%完璧に防いでくれるわけではありません。そのため、ワクチンを2回接種してから2週間が経った後でも、新型コロナウイルスに接触すると感染・発症してしまうことは十分に起こり得ます。そのため、そもそものウイルスへの接触機会を減らすという感染対策が引き続き重要であることには変わりありません。
このとき大切なのは、必要な感染対策だけをしっかりと行い、不必要な対策や雑貨にお金や労力を費やさないことです。たとえば、流水と石鹸を使った手洗いは、新型コロナウイルス感染症だけでなく、普通の風邪の予防にも役立ちます6)ので、これからも習慣として継続していくことをお勧めします。また、感染源になった人の95%以上がマスクをつけていなかったという日本の調査もある7)ことから、ワクチンをまだ接種していない人が周囲に多い場所でのマスク着用は、引き続き重要と思われます。
※正しい手洗いの方法
厚生労働省:手洗いPDFポスター
一方、同居家族以外との飲食を控えることや、人が集まるイベントの制限などは、感染対策としては非常に重要ですが、同時に我々の生活に多大な悪影響を及ぼしています。感染状況やワクチン接種の進み方に応じて、少しずつその制限は解除されていくものと考えられますので、その時々での行政の方針に従っていただければと思います。
なお、消毒液の噴霧は効果が期待できないどころか人体に害を及ぼす恐れがあり8)、また「空間除菌」を謳う雑貨や空気清浄機も大部分が感染対策にはなり得ず、むしろ誤飲事故9)や皮膚炎10)の原因となったことも報告されていることから、今後もこうしたものを利用する必要はありません。
元通りの生活には、いつ戻れる?
日本でもワクチン接種が進み、ほとんどの人が発症しない、もしごく少数の人が発症してしまったとしても重症化する人は滅多におらず、医療体制の逼迫が起こる心配もない・・・という状況になれば、新型コロナウイルス感染症が疫学的に「ただの風邪と同等に扱える感染症」となる日は来るかもしれません。こうなれば、ほぼ元通りの生活が可能になると思われます。
しかし、現状ではワクチン接種がどこまで進むかわからないことや、今後の流行によってはワクチンが効きにくい新たな変異株が現れる可能性なども残っていることを踏まえると、2021年の夏時点では「ワクチンを接種したからもう元通りの生活をして良い」と言える状況ではありません。
(参考文献)
1) N Engl J Med . 2020 Dec 31;383(27):2603-2615. PMID:33301246
2) N Engl J Med . 2021 Apr 15;384(15):1412-1423. PMID:33626250
3) N Engl J Med . 2021 Feb 4;384(5):403-416. PMID:33378609
4) JAMA Netw Open . 2021 Jun 1;4(6):e2115985. PMID:34097044
5) Lancet . 2021 Apr 23;S0140-6736(21)00790-X. PMID:33901423
6) J Sch Health. 2016 Dec;86(12):873-881. PMID:27866386
7) 北國新聞 2021年6月12日「コロナ感染させた人 マスクなし96.4% 金沢市調査」
8) 厚生労働省「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)」
9) 日本小児科学会 こどもの生活環境改善委員会「傷害速報 2013年5月」
10) 国民生活センター「首から下げるタイプの除菌用品の安全性-皮膚への刺激性を中心に-」
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。