新型コロナ「若くても重症化」、軽症でも怖い「後遺症のリスク」
- 作成:2021/08/31
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が続いていますが、「若い人は重症化しないから怖くない」といった言説もよく耳にします。これは本当でしょうか?
この記事の目安時間は3分です
Q. 若い人は、新型コロナウイルス感染症に罹っても重症化しないから、怖くない?
A. 「重症化しなければ平気」と考えているのであれば、大きな勘違いです。
新型コロナウイルス感染症は、若い人では重症化しにくい傾向があるというのは事実ですが、重症化しにくいからといって“発症しても数日で元の生活に戻れる”といった認識でいると非常に危険です。また、そもそも“重症化”の意味を正しく理解できていないことも多い点に注意が必要です。
若い人でも問題になる“様々な後遺症”のリスク
新型コロナウイルス感染症は、高齢者ほど死亡・重症化リスクが高い傾向にあります1)。しかし、このことは「若い人なら死なないし重症化もしない」ということを意味しているわけではありません。あくまで「死ににくい」「重症化しにくい」というだけなので、感染・発症する人が増えれば、亡くなる人や重症化する人も必ずどこかのタイミングで出てくることになります。実際、変異株の影響もあって、沖縄では20代でも12.8%、30代でも19.4%が中等症以上に悪化して入院しているというデータが出ています2)。
また、「重症化しなければ、発症しても数日で元の生活に戻れる」という認識も、間違っています。新型コロナウイルス感染症を発症した場合、疲労感や呼吸困難・関節痛、味覚障害などの後遺症が何ヶ月ものあいだ残り3)、こうした後遺症によって生活の質(QOL)が低下する4)、元の仕事に戻れない5)といったトラブルの原因となることが知られています。
こうした後遺症は、なにも高齢者にばかり現れているわけではありません。事実、新型コロナウイルス感染症の症状が軽症だったために自宅療養をした30歳以下の若い人たちでも、半数以上の人が味覚や嗅覚の喪失、呼吸困難、集中力の低下、記憶障害といった後遺症に6ヶ月以上も苦しんでいることがわかっています6)。つまり、自宅療養ができるほどの軽い症状で済んだとしても、その後に6ヶ月以上も元の生活には戻れないリスクがある、ということです。
そもそも「重症化」の意味を間違えている人も多い
さらに、ここで使われている「重症化」の意味を誤解している人も少なくありません。「重症化」とは、38℃を超える熱が出たり、強い関節痛や筋肉痛・頭痛が現れたりしている状態のことではありません。平たく言うと、人工呼吸器などの現代医療のおかげでなんとか死なずに済んでいるという“瀕死”の状態のことを意味します。
一方、40℃の高熱が出て、ひどい咳と強い関節痛・筋肉痛で夜も眠れず、食事も全く喉を通らない・・・という状態であっても、呼吸困難の症状がなければ「軽症」に分類されます。多くの健康な若い人に、人生で最もしんどかった状況を思い出してもらうと、インフルエンザなどに罹って39℃を超える高熱が出たときを挙げる人は多いと思いますが、それは「中等症」ですらないということです。
つまり、「若い人は重症化しにくい」というのを、「若ければしんどい目に遭うことはない、ちょっとした風邪程度の症状にしかならない」と認識しているのであれば、それは大きな間違いです。
機会が回ってきた時点で、ワクチンの接種を
こうした「重症化」を防ぐには、ワクチン接種が極めて有効です。いま問題となっているデルタ株に対しては、ワクチンの効果がやや弱まっている傾向にはありますが、それでも全くの無意味になったわけではありません。2回接種から2週間が経過すれば、80%近い高い予防効果が得られることがわかっています7,8)。そのため、機会が回ってきた時点で、ワクチンの接種を済ませておくことを強くお勧めします。
なおワクチン接種後、特に2回目接種の翌日~翌々日には38℃を超える発熱が現れることがあります(※こうした副反応による発熱は、通常3日ほどで治まります)ので、その日は仕事などをお休みにしておくと良いでしょう。
1) 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2021年7月版)」
2) 沖縄タイムス 2021年8月6日「コロナ入院率に変化 20~50代増加し70代以上は大幅減」
3) Nat Med.27(4):601-615,(2021) PMID:33753937
4) JAMA.324(6):603-605,(2020) PMID:32644129
5) Ann Intern Med.174(4):576-578,(2021) PMID:33175566
6) Nat Med . 2021 Jun 23. doi: 10.1038/s41591-021-01433-3. Online ahead of print. PMID:34163090
7) Lancet.26;397(10293):2461-2462,(2021) PMID:34139198
8) N Engl J Med.385(2):187-189,(2021) PMID:33951357
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。