新型コロナ、“軽症”であれば大丈夫だと思っていませんか?
- 作成:2022/04/18
新型コロナウイルス感染症について「感染者」や「重症者」の数が日々報道されていますが、この“重症”とは具体的にどのような状態のことを意味するか、正確に認識している人は少ないのではないでしょうか。マスコミでの報道やSNSなどで“軽症”であれば大したことないという論調もよく目にしますが、本当にそうでしょうか。いま一度、この“軽症”や“重症”の意味を確認していきましょう。
この記事の目安時間は3分です
ほとんどの人が誤解している!“重症”=“瀕死”の状態
たとえばインフルエンザにかかったときのことを思い出してみてください。39度近くの熱が出て、全身が筋肉痛や関節痛で倦怠感がひどい、頭痛や喉の痛みに加えて咳が出て夜も眠れない、ろくに食事もできない…といった症状を経験したことのある人はおられると思います。特に何か大きな病気やケガでもした経験がない限り、“病気で最も大変な状態”と言われて思い浮かべるのは、およそこのような状態かと思います。
そのため、なんとなく“重症”と聞くと、このくらいの症状を思い浮かべてしまうかもしれません。そのような状態を“重症”とするならば、“中等症”というのは38.5℃を超えるくらいの発熱があって、ちょっと食事や睡眠に問題があるくらい、“軽症”というのは、37.5℃くらいの発熱で、ちょっと咳や喉の痛みといった症状があるくらい…まさにちょっとした風邪をひいたくらい、という風に思ってしまうかもしれません。
しかし、上記に挙げた症状は、新型コロナウイルス感染症でもインフルエンザでも、通常すべて “軽症”に分類されるのです。“重症”というのは、基本的に生命の危機に陥っている状況…つまり現代医学の力でなんとか死なずに済んでいる状態、いわば“瀕死”の状態を意味するからです。
実際、新型コロナウイルス感染症の重症度分類についても、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」を見てみると、「呼吸困難の症状や肺炎の所見がある」「酸素投与が必要である」という状態になって初めて“軽症”ではなく“中等症”に分類されます。つまり、39℃を超える高熱が出て、夜も一睡もできなくて、食事も喉を通らない…という状況であっても、呼吸困難がなければ基本的に“軽症”に分類される、ということです。
そして“重症”というのは、そこから更に悪化してICU(集中治療室)に入室しているか、あるいは人工呼吸器をつけられている状態です(※)。この段階では、基本的に本人はもう眠らされていて意識がないケースがほとんどです。つまり、意識がしっかりとある状況で死を覚悟する、多くの人にとって人生でもっとも大変な目に遭っていると“自覚できる”のは“重症”になってからではなく、“中等症”の段階だということです。
このことから、「“軽症”であれば大したことない」というのは、確かに“命までは落とさない”という意味では一理ありますが、自分が発症した場合に軽症で済む保証はありませんし、そもそも軽症で軽快し重症化しなかったとしても、それは“ちょっとした風邪程度”で済むという意味でもありません。新型コロナウイルス感染症の情報を見る際には、まずこの言葉の定義に注意するようにしてください。
※“重症“と”中等症“の基準は、国や自治体によって多少の違いがあります。たとえば、東京都では人工呼吸器やECMO使用が”重症“の基準ですが、日本の国基準ではICUに入室した時点で”重症“と評価されます(重症者数に違いがあるのはこれが理由です)。なお、海外では「酸素投与が必要」な時点(※日本では中等症2に該当)から”重症“に分類されるのが一般的です。つまり、定義違いの問題で、日本では海外よりも”重症者の数は少なめ“に評価される傾向がある、ということです。
(参考)
- 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き(第6.1版)
- CDC:Clinical Spectrum of SARS-CoV-2(Infectionhttps://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/overview/clinical-spectrum/ )
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