コロッと死ねない人生100年時代 “ピンピンコロリ”で生き抜くために大切なこと
- 作成:2021/12/23
日本人の寿命は年々延び、その中で生まれた言葉が「人生100年時代」。人生100年と言っても、30代の人であれば「あと70 年もあるのか」、50代の人であれば「折り返し地点になった」くらい漠然としたものでしょう。しかし、現状のまま100歳を迎えられるわけではありません。心身ともにどんどん衰えていきます。 つまり、いかに現状に近い状態で100年を生きるかが重要になるのです。そこで、この連載では、寝たきり予防のためのライフデザインドッグを開設した横山啓太郎先生にお話を伺っていきます。
この記事の目安時間は3分です
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あなたは「100年」を切実に考えていますか?
人生100年と言っても長生きすることで、認知症や寝たきりにはなりたくない程度にしか考えていない人が多いのではないでしょうか。自分がまさかリアルに100歳まで生きるとは思っていないのです。
ところが、2020年厚生労働省の発表では、平均寿命は男性がおよそ82歳、女性が88歳。働き盛りの今の30代40代の男性では、明らかに90歳近くまで延びますから、限りなく100歳に近づいています。
それでは平均寿命に達したとき、みなさんどうなっていると思いますか? 80歳を超えると急激に認知症になる頻度が増加し、およそ15%、4人に1人は認知症になっています。みなさんは自分が80歳を超えて生きていくことを実感できないと思いますが、多くの人が80歳では亡くなりません。そして認知症のリスクは平均寿命の長い女性ははるかに高く、2人に1人は認知症と付き合うことに。さらに95歳まで生きたとすると、自分自身が70%の割合で認知症になるのです。
コロッと死にたくても現実はそう甘くない
自分が認知症になることなど、みなさんまったくと言っていいほど考えていないでしょう。しかし、医療の発達した現代では、なかなかコロッと死ぬことはできず、先にも述べたように多くが認知症と付き合わなければならなくなります。
下の図を見てください。縦軸が身体機能、横軸が生きる年数です。
Aは理想とするピンピンコロリタイプ。急激に機能が低下してほどなく命を落とします。
Bは心不全などを起こすタイプ。心筋梗塞を1回起こしても死ねないので、一段機能が下がる。そして、次に脳梗塞などを起こしてまた下がる。するとさらなる機能低下で骨折を起こすなどして寝たきりになり、長い間、誰かの世話を受けることに。これが多くの人に起こっていることです。
そして、Cは認知症・老衰タイプ。機能は徐々に低下して認知症になり、最終的には老衰で死に至ります。認知症の間には、徘徊をしたり、家族の顔がわからなくなったりすることもあるのです。
死に至る3つのタイプ
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みなさん圧倒的にAタイプをめざしていますよね。Aタイプになるためには、90歳になったとき、体と脳の認知度の両方が維持されていなければなりません。脳はしっかりしているのに体が先に機能低下して車椅子だったり寝たきりになったり、体はピンピンしているのに認知機能が低下し徘徊したり、これではめざすピンピンコロリとはいきません。
健康寿命を延ばすために考え、行動する
ここでひとつ、数字で実感できるデータを示します。平均寿命のほかに、“健康寿命”というものがあります。この健康寿命が平均寿命と≒(ニアリーイコール)の場合、前項のピンピンコロリにあたります。データとしては5年ほど前のものですが、平均寿命と健康寿命を比較したものが、下のグラフです。
平均寿命と健康寿命の間に、男性ではおよそ9年、女性ではおよそ12年開いています。つまりこの期間は、心不全などを起こすタイプか、認知症・老衰タイプになっているということです。
この期間を縮めるためにも、リアリティを持って真剣に健康を考え、マネジメントしなければいけないのです。健康マネジメントは50代、60代からでは遅いくらいです。「まだ早い」ということはありません。若いうちから真剣に考え、準備しておくことが大切なのです。
平均寿命と健康寿命の推移
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出典:厚生労働省ホームページ「平均寿命と健康寿命の推移」より
1958年生まれ。1985年東京慈恵会医科大学医学部卒業。国立病院医療センターで内科研修後、東京慈恵会医科大学第二内科、虎の門病院腎センター勤務を経て、東京慈恵会医科大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)講師、准教授、教授。2016年、大学病院として日本初の「行動変容外来」を開設、診療医長に。2019年には寝たきりのリスクを減らす新型人間ドック「ライフデザインドック」を慈恵医大晴海トリトンクリニックにてスタートさせた。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本腎臓学会認定専門医、日本透析医学会指導医。主な研究分野は、慢性腎臓病の進展制御と合併症研究、Ca制御機構に関する研究、血管石灰化研究、生活習慣病行動変容。2021年から東京慈恵会医科大学 大学院 健康科学教授。
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