健康寿命とは?定義、平均寿命との違い、データなどを解説 長い国、短い国の特徴は?

  • 作成:2016/09/07

健康寿命とは、簡単にいうと「病気や傷害の影響をうけずに生活できる期間の長さ」といえます。平均寿命は、病気の期間も含む点に違いがあります。長い国や短い国に特徴があるかどうかなどを含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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目次

健康寿命と平均寿命の違い

ある年の観察する集団(例えば日本人など)の各年齢の人が、あと何年生きられるかの平均を出したものが「平均余命(よめい)」といわれます。例えば、“50歳の日本人の平均余命は30年です”と表現されます。

「平均寿命」は0歳時点の平均余命で、すべての年齢の人の死亡率をもとに計算されていますので、その時点の集団全体として「何歳まで生きられるかの平均的な年数」ということになります。平均寿命は最も一般的な健康水準の指標として、とくに各国の国際的な比較にも、よく用いられています。

近年、日本は世界の中でも高い水準を維持し続け、とくに女性は1985年(昭和60年)から今日まで、世界第一位の座を守っています。成果の理由としては、日本の高い教育、経済および保健医療水準、生活習慣の改善などによってもたらされたと考えられています。

一方、「健康寿命」は日常生活に制限のない期間、あるいは健康な状態で生存する期間とされています。具体的には、平均寿命から、介護や病気で寝たきりの期間(自立した生活ができない期間)を引いたものが健康寿命になります。

平均寿命という指標が、「あと何年生きられるか」という生存期間(量)のみを測るものであったのに対して、健康寿命は「あと何年元気に生きられるか」を測るものであり、健康とQOL(Quality of Life;生活の質)をも考慮に入れた新しい健康指標として注目されています。

WHOと厚労省健康寿命の定義とは?違いあり?

2000年に、WHO(世界保健機関)は「健康に生きられる期間」というQOL(生活の質)を重視した概念を提唱しています。WHOの定義では、健康寿命は「疾病および/または傷害により完全に健康に生きられない期間を考慮した上での“完全に健康である平均余命”(期待値)」となっています。

健康寿命のような概念をあらわす指標には様々なものがあり、また測定方法は一般に、下記の2つに大別されます。

(1)疾病・傷害のない生存期間を測定する「障害のない平均余命(disability-free life expectancy;DFLE)」
(2)疾病・傷害の「質」に重み付けして生存期間を換算する「障害調整平均余命(disability-adjusted life expectancy;DALE)」

WHOでは定義にもあるように(2)DALEの方法が採られ、「健康度平均余命(healthy life expectancy;HLE or HALE)」が算出されています。WHO加盟国による国別あるいは大陸別など国際比較をする統計には有用で利用されています。

一方、日本の厚労省研究班による健康寿命の定義は、「健康な状態で生存する期間、あるいは、その指標の総称を指す」となっています。「その指標の総称」とは、前述したように健康寿命を測る複数の指標を使っているからです。方法は上記(1)のDFLEのうち、とくに「サリバン法」という方法が平成24年(2012年)に厚労省から出された「健康日本21(第2次)」では採用されています。

「サリバン法」は、基本的に年齢階級別の死亡率と“健康な人”の割合の2つの基礎データを用いて算定するために、「健康な人とはどのような人か」という定義が問題になります。健康日本21(第2次)では、「日常生活に制限のない」人を健康とみなした健康寿命を主指標に、「自分が健康であると自覚している」人を健康とみなしたものを副指標として採用しています。

WHOと厚労省の定義の違いは、疾病・傷害の質を考慮しているかどうかの違いになります。病気や傷害の質を考慮しているのがWHO、厚労省は病気や傷害の質に重きをおいていないといえます。

日本と世界の最新の健康寿命

WHOでは、「HLE at birth(0歳児における健康度平均余命)」が「健康寿命」の指標として使われています。WHOの国際健康観測(GHO)による2015年の最新データを示します。「世界」全体では平均寿命;71.4歳、「健康寿命;63.1歳」です。また、「健康寿命[平均寿命](歳;男女総計)」の上位10カ国は以下の通りです。

1位 日本;74.9[83.7]
2位 シンガポール;73.9[83.1]
3位 韓国;73.2[82.3]
4位 スイス;73.1[83.4]
5位 イスラエル;72.8[82.5]およびイタリア;72.8[82.7]
7位 アイスランド;72.7[82.7]
8位 フランス;72.6[82.4]
9位 スペイン;72.4[82.8]
10位カナダ;72.3[82.2]

下位3カ国は以下の通りです。いずれもアフリカ大陸の国です。

・中央アフリカ;45.9[52.5]
・アンゴラ;45.8[52.4]
・シエラレオネ;44.4[50.1]

その他、主要国は以下の通りです。

21位 イギリス;71.4[81.2]
23位 ドイツ;71.3[81]
39位 アメリカ;69.1[79.3]
41位 中国;68.5 [76.1]
81位 ブラジル;65.5 [75]
126位 インド;59.5 [68.3]

厚労省の健康日本21(第2次)の概要の中に、「健康寿命(日常生活に制限のない期間)」と平均寿命の年次的推移のデータがあります。2001年(平成13年)から3年おきに、2004年、2007年、2010年、2013年(平成25年)までのデータがあります。

日本の健康寿命の3年毎の伸びの平均が「男性0.45歳、女性は0.39歳」、12年間の伸びは「男性1.79歳、女性は1.56歳」で、同期間における平均寿命の伸びの「男性2.14歳、女性は1.68歳」に比べ小さくなっています。平均寿命の伸びより、健康寿命の伸びが短いということは、寿命は長くなっていても、人生の中で健康に生活できる期間の割合が下がっているともいえます。

2013年(平成25年)の健康寿命は「男性71.19歳、女性は74.21歳」となっています。2013年(平成25年)における健康寿命と平均寿命との差(男性9.02歳、女性12.4歳)は、前4回における差の平均(男性8.96歳、女性12.6歳)と比べ男性は微増、女性は微減となっています。

健康寿命が長い国や短い国に特徴はある?

前項のWHO健康寿命ランキングのワーストの3カ国は、アフリカの内戦をくり返した、あるいはクーデターによる政情不安の続いた国で、平均寿命でさえ50歳少しに留まっています。さらに、ワースト10もすべて、サハラ以南のアフリカ国家で多くの社会問題を抱えた発展途上国であり、公衆衛生も未整備または整備途上にあり、「健康寿命の概念」には未だ至っていないと考えられそうです。健康寿命の長短に関しては、ある程度に高齢化の進んだ国の中の特徴から見ていきましょう。

WHO健康寿命トップ10のメンバーは、東アジアとヨーロッパの先進国が中心となっています。一般的に寿命は、生物としての健康度だけでなく社会経済的指標、格差、教育程度などにより規定されるといわれています。具体的には、「1人あたりGDP(国民総生産)」、「ジニ係数(所得分配不平等指数、社会保障の行き渡りなどを考える際に使う値)」などの影響が取り上げられることがあります。

2015年の「GDP/人」において、「ルクセンブルク1位」、「スイス2位」、「ノルウェー4位」などが上位で、健康寿命も長い(上位20位以内)国といえますが、人口が比較的少ない小国であり、ジニ係数も低い(30%以下)グループにあります。1人あたりの所得が多く、再配分が平等に行われ、社会保障が全体に行き渡っていることが考えられます。一方、1国の経済規模(2015年GDP)の上位である「アメリカ1位」、「中国2位」、「インド7位」、「ブラジル9位」などでは、「GDP/人」はアメリカ(6位)を除き70位以下と低位なうえに、ジニ係数はインドの37%を除き、45%から52%とかなり高くなっています。健康寿命も70歳には及ばず伸び悩むのは、各国とも人口も多い大国であり、全体への医療制度はもちろん健康概念の普及にも時間がかかるのかもしれません。

健康寿命はどうやったら伸びる?国はどうやって伸ばそうとしている?

健康寿命を伸ばすには、「健康寿命と平均寿命との差」、すなわち「日常生活を制限する不健康(病気、傷害、要介護など)期間」をできるだけ短縮していくことになります。

一般的な方針としては、「疾病予防」、「健康増進」、および「介護予防」が挙げられます。疾病予防に関して、とくに心疾患や脳血管疾患など循環器病については、「ADL(日常生活動作)障害」および「要介護」に大きく影響するため、生活習慣の改善、高血圧などのリスクファクターの管理、発症時の対応などの一層の充実を図ることが必要になるでしょう。

厚労省は平成25年度(2013年度)から平成34年度(2022年度)までの健康日本21(第2次)で、平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加を目標にしています。具体的には、「健康寿命をのばそう!スマート・ライフ・プロジェクト」において、「運動」、「食生活」、「禁煙」の3分野を中心としたアクションを設定し、加えて「健診・検診の受診」をテーマとして、産業界を巻き込んで推進しています。

健康寿命についてご紹介しました。疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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