糖尿病の完治可能性、寿命への影響 患者数と医療費負担も解説
- 作成:2016/07/13
糖尿病は、基本的に完治することがない病気です。糖尿病自体が死因になることはまれですが、他の健康な方と比べて、寿命が短い傾向があります。患者数や医療費の目安も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
糖尿病は完治する可能性がある?
糖尿病は一度発症すると一生闘病生活を続けなければならない病気だと言われています。糖尿病には1型と2型があり、1型はウィルス感染後などに発症し、2型は日々の生活習慣によって発症します。1型糖尿病では、自分の膵臓で血糖値を下げるインスリンを分泌できないため、健常な膵臓を移植しない限り、生涯にわたって、インスリン注射が必要です。2型糖尿病は、遺伝による因子も大きいとは言われるものの、糖分や総カロリーの摂取過剰、肥満などによって引き起こされます。軽度の糖尿病であれば完治する可能性もありますが、食事療法や運動療法のみで改善することは少なく、多くの場合に内服薬やインスリン注射が必要です。
1型糖尿病が完治しない原因は、ウィルス感染などによって膵臓の「β細胞(べーたさいぼう)」が破壊されてしまうからです。私たちは、この細胞から分泌されるインスリンによって血糖値を下げることができています。1型糖尿病を完治させるためには、正常な膵臓を移植する方法しかありません。2型糖尿病がなかなか完治しない原因は、悪い生活習慣を是正することが難しいからです。日々の食事や運動習慣は、急に改善しようと思ってもうまくいかないことがほとんどです。しかし2型糖尿病は心臓病や脳卒中、腎臓病、がんなどさまざまな合併症のリスクが高いため、できる限り生活習慣を改善することが期待されます。
糖尿病患者の寿命はどれくらい?
日本糖尿病学会の2007年の報告によると、糖尿病を患っている男性の平均寿命が68.0歳、女性が71.6歳という結果になっています。つまり、一般的な日本人の寿命と比較すると、男性の平均寿命は9.6歳短く、女性では13.0歳寿命が短くなるということです。学会の報告を見る限り、糖尿病を患っている人は普通の人より寿命が短くなると言えるでしょう。
気になるのは死因ですが、糖尿病が直接的な原因で死亡することはまれです。死因の多くががんや血管障害で、普通の人とさほど変わりありません。ただ、普通の人より、これらの病気にかかりやすくなることで糖尿病患者の寿命が縮まっていると言えます。その理由は糖尿病を発症すると免疫力の低下や動脈硬化の促進が起きるからです。糖尿病による高血糖や低血糖で意識障害を起こすことがありますが、すぐに治療を行えば救命できることがほとんどです、命にかかわることは多くありません。
糖尿病患者は日本にどれくらいいる?
厚生労働省の2012年の報告によると、糖尿病と糖尿病予備軍の合計数は2,050万人と言われています。実質的に、国民の5人に1人が糖尿病かそれに近い状態だという言うことです。その中で、実際に糖尿病の治療を継続的に受け続けている糖尿病の患者数は600万人程度で、糖尿病の疑いがある人の大半が治療を受けていないということになります。
糖尿病の患者数は年々増え続けており、高齢者になるほど増える傾向にあるため、今後も増え続けると考えられています。生活習慣によって起こる糖尿病は初期の段階であれば食事・運動療法によって投薬なしの生活を送ることができるため、早い段階で治療を開始する事が大切です。
糖尿病患者の医療費はどれくらいかかっている?
糖尿病患者の治療は一度発症すると長期間または一生治療を継続しなければいけないことが多いです。そこで気になるのが治療にかかる医療費です。しかし、糖尿病の進行具合によって治療方法は異なっており、投薬があるケースと無いケースでは医療費に大きな差があります。
糖尿病ネットワーク(http://www.dm-net.co.jp/)の試算によると、食事・運動療法のみで投薬がない場合は3割負担で月額3,500円前後、血糖値を下げる経口薬による治療を受けている場合は月額7,500円、重度の糖尿病でインスリン療法を受けている場合には月額11,000円前後の費用がかかると計算されています。投薬のいらない食事・運動療法に比べて、糖尿病の重症度が高くなるにつれて医療費が高くなっていることが分かります。さらに、投薬が必要なレベルの糖尿病の場合は、糖尿病以外の病気を発症するリスクも高まるので医療費はより高額になる可能性があります。
経口薬で済む段階であればまだ良いですが、重度の糖尿病患者で必要とされるインスリン治療は1日3回かそれ以上の皮下注射が必要であり、注射を忘れると命に関わることもあります。糖尿病は、医療費だけではなく患者の精神的な負担も大変重い病気といえます。
糖尿病の完治可能性などについてご紹介しました。血糖値に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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