透析患者の医療費と患者数 1カ月でいくら?公的補助あり?
- 作成:2016/03/01
透析患者は全国で、30万人を超えています。医療費は、日本全体の総額では1兆円を超えていて、医療費の約4%を占めています。それでは、実際に患者はいくらを負担することになるのでしょうか。専門医師の監修記事で、透析患者の医療費や患者数などを、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
増え続ける透析患者数
腎臓には、血液の老廃物をろ過し老廃物を尿として体外へ排泄するなどの機能があり、ます。腎臓が働かなくなった状態を「腎不全」と呼び、原因は糖尿病、高血圧、腎炎、膠原病など様々です。一度腎不全になると腎機能は改善しないため、「腎代替療法」が必要になります。
腎代替療法には血液透析療法、腹膜透析療法、腎移植があり、日本では血液透析療法を行っている方がほとんどで95%以上を占めています。透析療法とは血液透析療法と腹膜透析療法のことを指します。まだ数は少ないですが、最近では在宅でできる血液透析療法も行われるようになっています。
日本透析医学会の「慢性透析患者に関する基礎集計2014」(http://docs.jsdt.or.jp/overview/)によると、透析患者数が増加傾向であることがわかります。
患者数は統計開始時の1968年には215名でしたが、2011年末に初めて30万人を越え、2014年末には32万人以上と増え続けています。日本の全人口に対する比率では、2014年では国民396.5人に1人が透析療法を受けていることになります。また、男性患者が女性の約2倍、男女とも60歳から84歳で多くなっており透析患者においても高齢化が進んでいます。なお、65歳から69歳が最多となっています。
外来でも年間480万円かかる計算
通常、透析療法を受ける場合、医療費は、外来治療の場合1か月約40万円程度ですので、年間480万円かかる計算となります。入院して治療を実施する場合は1か月100万円程度かかります。透析の医療費は1兆円を超え、日本国民全体の医療費の約4%を占めています。
透析療法が日本で行われるようになったのは1960年代ですが、当時は多額の費用がかかるために治療費を負担ができない患者が多く存在し、治療を受けられないこともありました。
公的な補助で自己負担が1万から2万円に
治療が受けられない状況を解決するために、公的補助制度ができました。個人で医療保険に加入している方でも、医療負担額が高くなる傾向があり、透析療法が長期にわたることも含めて、公的補助制度が設けられています。
長期にわたり高額な治療費が必要となる疾病を「特定疾病」といい、特例として現在3つの疾病がその対象となっています。対象となる疾患は、「人工腎臓を実施している(透析療法のことです)慢性腎不全」「血友病」「抗ウィルス剤を投入している後天性免疫不全症候群(AIDS)」の3つです。
特定疾病の1つに該当する透析患者は、「特定疾病療養受療証」という証明書を提示することで、1か月の窓口負担額が、70歳未満で報酬月額53万円未満の方は1万円、70歳未満で報酬月額53万円以上の方は2万円、70歳以上の被保険者は1万円で済みます。ただし公的補助で患者の負担が軽減されても、負担は国民の税金が担う仕組みであることから、透析の医療費を問題視する声があるのも事実です。
透析にならないために気をつけること
腎臓に関する疾患は、自覚症状がほとんど出ないため、ある程度進行してからでなければ、腎臓の機能不全や疾患を発見することができません。高血圧は腎不全以外にも、様々な疾患(動脈硬化、心疾患、脳疾患など)の要因となっているため、血圧を自宅で測定し自分の血圧を把握する習慣をつけることが1つの予防方法です。高血圧の原因に塩分摂取が多いことが1つ挙げられますので、思い当たる方は塩分を控えるようにしてみましょう。また透析導入疾患では「糖尿病性腎症」(糖尿病が原因となる腎臓の病気)が最も多いので、定期的に健康診断を受けて血糖値を調べるようにしましょう。糖尿病にならないように日ごろから肥満や運動不足に気を付け、バランスの良い食事を摂るように心がけることも大切です。
人工透析について患者数や医療費などをご紹介しました。高血圧や糖尿病、メタボリック症候群を健診などで指摘されたことがある方、透析になるのではないかと不安に感じている方は医師に相談してみるようにしてください。
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