透析とは?導入となる原因、シャントの意味、必要性を解説 移植はできない?
- 作成:2016/01/15
透析とは、腎臓の機能が失われる(腎不全)ことが導入の原因となります。患者に対して、血液中の有害物質を体外の機械を使って、排除する方法です。透析にあたっては、血液の流れを確保するための「シャン」トと呼ばれる措置が必要となります。透析の患者生活への影響も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
尿毒素を人工的に取り除く「透析」
様々な原因で腎臓の機能が低下し、自分の力で尿として体の外へ有害物質(尿毒素)や水分を排出できなくなることを「腎不全」と言います。腎不全の状態が長く続くと、体に尿毒素が溜まった結果、倦怠感、嘔吐、下痢、眠気、かゆみなどを引き起こすだけでなく、けいれんや意識障害を起こし死に至る可能性もあります。そのため、透析と言って週に3回、4時間ずつ、尿毒素や水分を取り除く処置が必要になります。
日本の透析患者さんは2011年に30万人を越え、現在も増加傾向にあります。日本透析医学会は毎年全国の透析患者さんのデータを集計しており、1年間に約4000から5000人の透析患者さんが増えていると言われています。透析医療においても高齢化が進んでおり、現在透析をしている患者さんで65歳以上の割合は、男女ともに約60%以上となっています。また日本の医療費の約4%の1兆5000億円が透析医療に使われています。透析は患者数の増加、高齢化や医療費の圧迫など様々な問題の原因となっていますが、腎不全の患者さんにとっては生きるために必要な治療法です。
シャントとは何か?なぜ必要か?
血液透析をするためには血管に針を刺し、1分間に約200mlの血液について、機械で有害な物質や水分を取り除いて、体に返す必要があります。私たちの体の中には静脈と動脈があり、病院や健診で採血に使用するのは静脈です。静脈は動脈に比べて圧力が低いため、しばらく指で押さえておけば止まると思いますが、血液透析に必要な血液の流れを確保するには動脈のような高い圧力が必要です。しかし、動脈に毎回針を刺すのは大出血を起こす危険もあるため推奨されません。そこで、自分の静脈と動脈を手術でつなげることで、静脈の圧力を保てるようにしたものがシャントです。シャントの手術は局所麻酔で日帰りでも行えますが、血液透析で使用できるようになるまでに2-3週間かかるので早めに準備しておくことが必要です。
腎臓の病気は、透析が必要になる可能性あり
腎臓の機能を徐々に低下させて腎不全を引き起こす病気は全て、透析が必要になる可能性があります。腎機能を低下させる原因は様々で、先天性に腎機能が低下している病気や「アルポート症候群」(腎炎の1種)や「多発性嚢胞腎」などの遺伝性の病気、明らかな発症機序は不明で誰にでも起こる可能性がある「IgA腎症」、「巣状糸球体硬化症」、「膜性腎症などの腎炎」、リウマチなどの膠原病による腎臓病、また生活習慣病である糖尿病、高血圧、肥満などによる腎臓病が挙げられます。中でも糖尿病による腎不全患者さんが増加しており、透析導入原因の病気で最も多いため、糖尿病発症予防、発症後の進行予防が重要と考えられています。
日本は腎臓移植が少ない
腎不全に至った時の治療法として、今まで説明した血液透析療法の他に、腹膜透析と腎移植という治療法があります。日本では全治療法の95%以上を血液透析が占めており、自分のお腹の膜を使用して行う腹膜透析は3から4%、腎移植は2%以下と、とても少ないです。アメリカでは腎移植が40%以上を占めます。腎移植は全ての治療法の中で唯一、透析治療がいらなくなります。生涯にわたって免疫抑制剤の内服が必要となったり、感染のリスクはありますが、自分で尿を出すことができ、体にとっては一番生理的で良い治療法です。
日本では腎移植が少ない率うは、献腎移植の数が少ないからと言われています。脳死や心停止後に臓器を提供することを献腎移植と呼びますが、日本人の考え方や倫理観などが影響して、その数が少ないのではないかと考えられています。そのため日本の腎移植のほとんどは、6親等内の血族からの生体腎移植に頼っています。
透析やシャントについて基礎知識をご紹介しました。腎臓に不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
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