多発性嚢胞腎の原因、症状、治療 治らない?半数が腎不全に?
- 作成:2016/09/14
多発性嚢胞腎とは、遺伝性の病気で、腎臓の機能が少しずつ低下していき、70歳ごろまでに半数の方が腎不全の状態となります。症状や治療などを含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
多発性嚢胞腎の原因
多発性嚢胞腎は遺伝性の病気で、「常染色体優性遺伝」という遺伝の仕方をします。常染色体遺伝とは、両親のどちらかから多発性嚢胞腎を発症する遺伝子を引き継いでいると、性別に関係なく発症する遺伝形式のことです。「PKD1」「PKD2」とよばれる遺伝子の異常が原因と分かっています。日本では約3万人の多発性嚢胞腎の患者さんがいて、遺伝性の病気の中では発症率が高いといわれており、約4000人に1人がかかっていると考えられています。
腎臓には尿を作る役割がある「尿細管(にょうさいかん)」と呼ばれる管がたくさんあります。多発性嚢胞腎の患者さんは、尿細管が異常に拡大することにより嚢胞(球場の袋)になると考えられており、年齢を追うごとに嚢胞の数が増え、正常な腎臓を圧迫し、腎臓の機能を低下させます。
30歳から40歳まではほとんどが無症状ですが、腎機能は徐々に低下し、70歳ごろまでには約半数の方が自分の腎臓がほとんど機能しない「末期腎不全」といわれる状態になります。末期腎不全になった場合には、血液透析や腹膜透析、腎移植などの自分の腎臓の代わりになる治療法を行わないと生きることができません。
多発性嚢胞腎の症状は?
多発性嚢胞腎の患者さんは、30歳から40歳まで、無症状のことがほとんどです。ただ、健康診断や人間ドッグで、腎機能低下や腎臓の多数の嚢胞を指摘される、家族に多発性嚢胞腎の方がいる、健康診断で高血圧や尿検査の異常を指摘される、などのきっかけで、病院を受診して診断されます。
多発性嚢胞腎の症状は、嚢胞の拡大や増加によって徐々に起こるようになります。腹痛や腰痛、血尿、腹部膨満感などはよく自覚する症状です。それらの症状がなく、高血圧や血尿を健康診断で指摘されることもあります。
また、多発性嚢胞腎は腎臓以外にもさまざまな合併症を引き起こします。脳動脈瘤や心臓の弁の異常、尿路結石、肝嚢胞などがあります。「脳動脈瘤」とは脳の血管にできるこぶのようなもののことですが、放っておくと破裂して脳出血を引き起こし死に至る危険があるため、1年に1回脳のMRIを撮影し経過をみます。腎臓の嚢胞に感染や出血を繰り返す方もいます。多発性嚢胞腎は遺伝性の病気ですが、家族間でも症状の出かたや病気の進行速度に違いがあることがあります。
多発性嚢胞腎の治療法は?予防法はある?
多発性嚢胞腎は遺伝性であり、進行性の病気と考えられています。しかし、諦めずに治療をすることによってなるべく進行を抑え、合併症を管理することが大切です。病気の進行を抑えるための薬としては、降圧薬(血圧を下げる薬)や、嚢胞を大きくする作用のある「バソプレシン」というホルモンを抑える薬があります。高血圧は腎機能の低下を早めることがわかっているので、なるべく血圧を正常にするように食事や運動、内服薬でコントロールします。バソプレシンを抑える薬は、新薬で効果に期待されていますが、副作用もあるため医師の慎重な観察のもとで内服する必要があります。
多発性嚢胞腎の進行を予防する方法は、一般的な腎臓機能の低下を防ぐ方法と同じです。過剰な塩分を控えて血圧が上がらないように努め、肥満にならないように適度な運動とバランスの良い食事を心がけましょう。
多発性嚢胞腎は治らない 何科に行けばいい?
多発性嚢胞腎は遺伝性の病気なので、症状が出てからは徐々に進行していくことがほとんどです。残念ながら、多発性嚢胞腎が治る可能性は現在の医療では難しい状況です。そのため再発の可能性があるというよりは、一度発症したらそのまま症状が進行していくと考えます。
多発性嚢胞腎は、腎臓内科や泌尿器科が専門になります。特に腎臓内科では、高血圧や合併症の管理を重視し、進行性の病気ではあるもののなるべく進行速度を遅らせるように患者さんと協力して治療を進めていきます。最近では、嚢胞が大きくなるのを抑える新薬も保険が使えるようになりましたので、医師に相談するようにしてみてください。
多発性嚢胞腎についてご紹介しました。家族が腎臓の病気になり、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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