鉄不足が原因でない腎性貧血とは?原因、症状、薬など治療も解説
- 作成:2016/03/28
腎性貧血とは、腎臓の機能が不十分なために起きる貧血です。よく知られた鉄分が不足する貧血と症状が違う部分もあります。腎性貧血について、治療や行くべき診療科も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
腎性貧血の原因とは?
一般的に「貧血」と聞くと「鉄分が足りないことが原因では」と考える人も多いのではないでしょうか。体内の鉄が不足することによって起こる貧血は「鉄欠乏性貧血」と呼ばれ、鉄分が多く含まれる食品や鉄剤を内服すれば症状は改善します。
対して、「腎性貧血」は、腎臓の機能が低下することにより起こる貧血のことです。腎臓は体内の水分や電解質、老廃物を、体の外に尿として排出する臓器ですが、他にもビタミンDの活性化や「エリスロポエチン」と呼ばれる赤血球を刺激するホルモンの分泌を行っています。腎臓の機能低下によりエリスロポエチンの分泌、結果として赤血球への刺激が低下し貧血になることを腎性貧血と言います。
血液検査で貧血の状態と腎機能を調べて診断します。腎機能が低下している人の中には、鉄欠乏性貧血も同時に起こしている人もいるため血液検査では鉄に関しても調べます。またがんや炎症性疾患でも貧血になる可能性があるため、全身を調べる必要があるときには、全身のCTを行うこともあります。貧血の原因には鉄欠乏、腎性だけでなく、血液疾患や炎症性疾患によるものもあるため総合的に診断することが大切です。
腎性貧血の症状とは?
貧血の時には、様々な臓器へ酸素を運んでいるヘモグロビンが低下します。そのため少し動いただけでも息が上がる、動悸がする、疲れやすいなどの症状が出ます。ただ、腎性貧血は通常、腎機能の低下と共に慢性的に症状が進行するので、めまいやふらつきなどは起こりにくいと考えられています。貧血によってめまいやふらつきが起きるのは、出血などにより急激にヘモグロビンが低下した場合や、貧血に血圧低下が伴った場合が多いと言われています。
腎性貧血の治療とは?
腎性貧血の治療では、腎機能低下によって不足しているエリスロポエチンを補充します。私たちの体から産生される天然エリスロポエチンに似た構造を持つペプチド製剤を注射によって補充します。この治療薬は「エリスロポエチン製剤」と呼ばれ、以前は短期間しか効果を期待できませんでした。最近では研究開発が進み、効果時間を延長することができるようになっています。そのため週に1回、または2-4週間に1回の投与など患者さんの状態に合わせて調整することが可能になりました。患者さんが病院に通って、腎性貧血を治療するためには理想的な製剤と言えます。
血液透析患者さんの場合には、週に3回透析のために病院に通うため、必要であれば透析ごとにエリスロポエチン製剤を投与することができます。エリスロポエチン製剤によって腎性貧血を改善することは、貧血だけでなく腎機能障害の進行を抑えることが明らかになっています。
腎性貧血は腎機能低下により起こるため、腎性貧血の予防法は腎機能低下を防ぐことです。遺伝も含めて腎臓自体に病気が発生する場合は、腎機能低下の予防は難しいですが、現代に増加している肥満、糖尿病、高血圧も腎機能障害の原因になります。これらの生活習慣病により腎機能障害は日頃の食生活や運動によって予防できます。腎性貧血は腎機能低下に伴って徐々に進行していくため、腎機能低下が一時的なものでない限り、一度完治したのに再発するということはありません。多くの場合、継続的にエリスロポエチン製剤の投与が必要になります。
腎性貧血は何科に行けばいい?
貧血の原因が鉄欠乏か腎性か、それ以外かを自分で判断することは難しいです。医師も採血やCTなどの検査を行い、最終的に診断します。そのため実際には、貧血に伴う動悸、息切れ、疲れやすいなどの症状を感じ病院に行くことが多いと予想されます。まず近くの内科を受診し、血液検査によって原因を明らかにすることが必要です。もし鉄欠乏性貧血以外、つまり腎性貧血やその他の疾患による貧血が疑われる場合には、専門の医師がいる病院へ紹介状を作成してくれるはずです。腎性貧血の場合には、腎機能低下をすでに伴っているので腎臓内科で貧血の治療に加えて、末期腎不全への進行を抑制するための治療も行います。
腎性貧血の原因や症状などについてご紹介しました。腎臓に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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