透析で起きる合併症 アミロイドーシス?血圧低下?症状は?
- 作成:2016/03/01
透析が原因となって起きる合併症は少なくなく、高血圧、便秘が起きることもあります。透析アミロイドーシスや血圧低下の内容やメカニズムも含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
透析アミロイドーシスとは?対応は?
腎臓の機能が低下し、体の中の水分や尿毒素などを尿として自力で排泄できなくなると透析療法が必要になります。透析には「血液透析」と「腹膜透析」があり、日本では95%以上が血液透析を行っています。
細胞が壊された後に「β2ミクログロブリン」という物質が出るのですが、それらは健常な方であれば、腎臓の「尿細管」という部分で再吸収され分解されます。しかし。透析を必要とするような高度な腎機能障害があると、うまく分解することができずに体の中に蓄積していきます。蓄積する場所は関節や骨、神経の周囲など体の様々です。例えば関節にたまると、しびれや痛みを自覚するようになり、骨にたまると骨が破壊され、骨折の原因にもなります。
このように「β2ミクログロブリン」が沈着し、体の様々な場所に障害が出ることを「透析アミロイド―シス」といいます。体に炎症が起きると、「β2ミクログロブリン」は、より沈着しやすいと言われているので、透析アミロイド―シスを予防するためには、透析に使用する水をできる限りきれいに上窩し、透析に用いる透析膜を良い性能のものにして透析効率を上げることが大事です。また、透析ごとの血流量や、透析時間の延長も有効だと言われています。
以前よりも日本の透析システムは改善したので、重症な透析アミロイド―シスは減少傾向にありますが、「ばね指」や「手根管症候群」などは、まだよく起こっています。「手根管症候群」はアミロイド―シスにより、手首を走っている神経が圧迫されて。しびれや痛みが出る病気ですが、症状が日常生活に支障がある場合には、圧迫を解除する手術が行われます。
透析で起きる血圧低下とその対応
血液透析中は、体の中の水分を除去しているので、血管を通る液体の容量が低下するので、血圧低下を起こしやすくなっています。特に自律神経の機能が低下している高齢者や糖尿病の方の場合には、透析中の血圧低下がなかなか改善せず、透析を中止しなければならないこともあります。
血圧低下が起きると体が反応し、倦怠感、冷や汗、あくび、吐き気などの症状が出るので患者さん自身が自分で気付くこともありますが、そのまま透析を続けるとさらに血圧が低下し、意識がなくなってしまうことがあるので注意しなければいけません。血圧低下した場合には、透析療法を一時中止し、脚部分を高くして、生理食塩水の点滴を行います。
血圧低下が起きた場合、透析時に設定している「除水量(除く水分の量)」が適正であるかを確認することが再発予防になります。透析を続けている際の体重増加が多いと、透析で除去しなければいけない水分量も増加し、体に負担が大きく血圧低下の原因になるので、食べ過ぎや飲みすぎにも注意しなければいけません。透析中の血圧低下を予防する短期的な昇圧効果を持つ薬剤もあるので、透析前や透析開始直後などに内服をすることもあります。
不均衡症候群とは?
透析中には様々な合併症が起きることがあります。透析を始めたばかりの時には、「不均衡症候群」と呼ばれる合併症が起きる可能性があります。不均衡症候群とは、体の中の毒素が透析により除去され、急激な循環の変化に体が適応できずに、頭痛や吐き気を自覚することです。不均衡症候群は2回から3回透析をすれば改善することが多いので、頭痛に対しては鎮痛薬、吐き気に対しては制吐剤などを使用して対応します。透析導入時には不均衡症候群を防ぐために、血流量は少なく、透析時間も短めで開始します。
透析に関連したその他の合併症には、貧血、高血圧、かゆみ、便秘、心不全、感染症、脳梗塞や心筋梗塞、骨代謝の異常など幅広いです。腎臓から「エリスロポエチン」という赤血球を刺激するホルモンが分泌されていますが、腎不全になるとこれが不足し貧血傾向になります。また透析をしていると血液中の鉄分も失われやすいため、鉄不足も貧血を助長します。定期的に採血をして、エリスロポエチン製剤や鉄剤の投与で貧血にならないように調整します。
高血圧、便秘 他にもある合併症
透析に関連した合併症は、他にも多くあります。以下主なものを紹介します。
高血圧:透析治療を継続中に体重増加が多い場合や塩分の摂取量が多い時に高血圧が確認されることがあります。進行すると心不全の原因にもなります。高血圧や心不全は、食事療法で改善する可能性があるため、塩分制限食の指導を行います。食事や透析時の体重設定の調整だけで改善しない場合には、降圧薬が処方されます。
便秘:また、透析をしていると体の中の水分量が低下し、皮膚の乾燥からくるかゆみや便秘を起こすことがありますが、これに対しては、保湿剤や下剤で対応します。
感染症:また透析患者の方はウィルスや細菌、結核菌などに対して、抵抗力が弱いため感染症を起こしやすい傾向があります。インフルエンザワクチンなどは、予防のために接種することが推奨されています。
動脈硬化:透析をしている方は背景に糖尿病や高血圧と言う基礎疾患を持っていることが多いので、動脈硬化が進行している可能性があります。透析患者の方の死亡原因の1位が心血管疾患ということから分かるように心筋梗塞や狭心症という合併症を起こすことが多いです。血圧や血糖値を正常に保つことが大切です。 二次性副甲状腺機能亢進症:腎臓にはビタミンDを活性化する機能もあり、腎不全によりその機能が低下すると、血液中のカルシウム濃度が低下します。また肉や魚などのタンパク質や乳製品、加工食品に多く含まれているリンを摂取すると、腎不全の場合には体に蓄積してしまいます。このように「低カルシウム血症」「高リン血症」になると、副甲状腺ホルモンが正常にしようと調整し骨にカルシウムを出すように命令します。この状態を透析患者に特有の合併症である「二次性副甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)」と呼びます。この状態を放置していると骨折だけでなく、動脈硬化も進行させてしまうため様々な薬剤によってカルシウム、リン、副甲状腺ホルモンを正常値に調整します。
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