糖尿病性腎症の症状と治療 透析になる?元に戻らない?
- 作成:2016/04/28
糖尿病の三大合併症の1つとして、「糖尿病性腎症」があります。これは、腎臓の機能が失われることで、透析が必要となる要因のトップをしめています。どのような症状かや治療を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
三大合併症の1つ腎症の症状
糖尿病は神経や血管に影響が出て、様々な合併症を引き起こします。糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害は三大合併症と呼ばれています。糖尿病性神経障害の頻度が最も多いと言われていますが、どの三大合併症も糖尿病患者の約10%に発症することが分かっています。
糖尿病性腎症の初期はほとんど症状がありません。ただ、糖尿病性腎症の進行により、腎臓の機能が正常な状態の30%未満に低下すると、水分や体にとって有害な尿毒素、過剰な電解質などを体の外に排出できなくなります。結果としてむくみ、全身倦怠感、かゆみなどの症状が出ます。また体内で赤血球をつくるために必要な「エリスロポエチン」という腎臓から分泌されるホルモンが低下するため貧血になります。腎機能が正常な場合は問題にならない「カリウム」が、腎機能障害時には異常に高い値になることがあり、不整脈を起こすだけでなく突然死を起こす危険もあります。
腎症はどういう人がなる?どれくらいなる?
糖尿病性腎症は、糖尿病を発症してから約10年で起こると言われています。しかし糖尿病の初期はほとんど症状がないため、気付かない間に年月が経っている可能性があります。そのため糖尿病と診断された場合には、定期的に尿蛋白(尿中微量アルブミン)と血液中のクレアチニンを測定します。
正常であれば、尿中に蛋白は出ないはずですが、糖尿病によって腎臓が障害されると最初はアルブミンと呼ばれる蛋白が、微量ですが尿中から確認されます。糖尿病性腎症が進行するとより多くの蛋白が排出されるようになり、腎臓の障害がさらに進行します。糖尿病性腎症は糖尿病患者の約10%に発症すると言われています。
腎症の治療概要
糖尿病性腎症が進行してしまうと元に戻すことは困難です。治療は糖尿病性腎症の進行をなるべく遅らせて透析を導入する状態にならないようにする、また腎機能障害に伴った様々な症状などを、食事や薬剤で調整するというものになります。具体的には塩分やたんぱく質の摂取制限、内服薬による高血圧やむくみのコントロール、血液中のカリウムやリンなどのコントロールを行います。もちろん血糖値のコントロール、適正体重の維持も糖尿病性腎症を進行させない治療として重要です。
腎症になった後どうなる?透析になる人も
糖尿病性腎症は進行を抑える治療を行わないと、数年で透析導入となることがあります。正常な腎機能を100%とすると15%未満に低下すると、自分の腎臓では水分や尿毒素、過剰な電解質を尿として排出できなくなり、透析が必要になります。腎臓の代わりとなる治療を腎代替療法と呼びますが、日本では血液透析、腹膜透析、腎移植を行うことができます。血液透析療法は腎不全患者全体の95%以上が受けており、腹膜透析は3%から4%です。腎移植は日本では生体腎移植といって健康な人からの移植に頼っているため、まだ全体の中では割合が少ない治療法です。また糖尿病性腎症は再発しやすいため腎移植には慎重な医療機関もあります。糖尿病性腎症は透析導入する原因となる病気の第1位であり、全体の約40%を占めます。糖尿病性腎症から透析にならないように生活習慣を改善し、食事療法や薬物療法を行うことが大切です。
糖尿病で起きる腎症についてご紹介しました。糖尿病の治療などに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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