ネフローゼ症候群の原因、再発可能性 全て難病?背景にある病気は?

  • 作成:2016/10/15

ネフローゼ症候群は、病気の名前でなく、症状の名前です。原因となる病気は多様で、「一次性」と「二次性」にわかれます。再発する可能性も含めて、専門医師の監修記事で、解説します。

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「ネフローゼ症候群」は病名でない

ネフローゼ症候群は、「症候名」、つまり症状の名前であり、原因となる病気は様々です。ネフローゼ症候群とは、原因となる病気により腎臓が障害され、正常であれば尿に出ないはずの蛋白(たんぱく)が大量に排出され、そのことによって血液中の蛋白成分が低下し、血圧の低下や浮腫(ふしゅ、むくみのこと)を引き起こす病態のことです。

原因には「一次性」と「二次性」があり、年齢によっても原因となる病気の傾向に違いがあります。一次性とは「原発性」とも呼ばれ、腎臓自体に病気が発症することを言います。二次性とは「続発性」とも呼ばれ、糖尿病や膠原病などの全身に影響の出る病気が原因で腎臓が障害されることを言います。

「ネフローゼ症候群診療指針」(日本腎臓学会)によると、年間で新規発症のネフローゼ症候群は約4000件と推定され、その中で治療が効果を発揮しにくい、「難治性ネフローゼ」は約25%を占めるそうです。成人ではネフローゼ症候群の発症年齢は男女ともに50歳から80歳にピークがあり、男性では10歳から20歳にも多いことが分かっています。原因としては一次性(原発性)が61%と最も多く、次に二次性の1つである糖尿病性腎症が10.7%を占めています。

ネフローゼ症候群の原因となる多様な病気

ネフローゼ症候群の原因で一次性(腎臓に直接障害が出るタイプ)のものは、「微小糸球体変化」「膜性腎症」「膜性増殖性糸球体腎炎」「半月体形成性壊死性糸球体腎炎」「IgA腎症、」「巣状分節性糸球体硬化症」などという病気があります。

また2次性の原因には、糖尿病性腎症、全身性エリテマトーデスという膠原病によるループス腎炎、全身にアミロイドと呼ばれる物質が沈着するアミロイド腎症、紫斑病性腎炎、溶連菌やブドウ球菌などの感染後に発症する感染症関連の腎炎、長期にわたる高血圧により発症する高血圧性腎硬化症、肺出血やその他の全身炎症を引き起こしANCA関連抗体が陽性になる疾患による「MPO-ANCA陽性腎炎」と「PR3-ANCA陽性腎炎」などといった専門的な病気が多くあります。他には血栓による腎症や移植腎などが、二次性のネフローゼ症候群の原因に含まれます。

各年齢層の原因となる病気を比較すると、どの年齢層でも一次性疾患がほとんどを占めますが、20歳に比べると、65歳以上では二次性疾患の比率が高いことが分かっています。これは糖尿病や高血圧などの生活習慣病、加齢による影響が大きいと考えられます。一次性疾患に関しては、40歳未満の若年では「微小糸球体変化」が多く、40歳以上になると「膜性腎症」の割合が増加することが明らかになっています。

ネフローゼ症候群はすべて難病?

ネフローゼ症候群の中で明らかな全身性の疾患がない、つまり一次性腎疾患によるもので、重症と診断されたものは、厚生労働省によって「難病」と認められ。病気の必要な医療費に対する助成が出ます。重症とは「治療効果が乏しい」「再発または増悪するためステロイド治療をやめられない」「治療をしても頻回に再発する」「治療しているにも関わらず大量の蛋白尿が出続けている」「腎機能障害を伴っている」などの条件を満たす場合です。

医師が一次性ネフローゼ症候群で「重症」と診断したことを証明する書類を提出し、国に認められた場合にのみ助成を受けることができます。また更新するためには、医師が記入した症状や治療効果などに関する書類を毎年1回提出する必要があります。

ネフローゼ症候群の再発可能性

ネフローゼ症候群は再発することが多いと言われています。最もステロイド治療で効果が出る「微小変化型ネフローゼ症候群」でも、30%から70%と高い確率で再発します。全体では約4%で再発し、65歳以上の高齢者に限ってみると12.8%と高率であることが分かっています。2年以上の長期にわたって免疫抑制剤による治療を必要とする症例も全体の44%と高率です。また膜性腎症や巣状糸球体硬化症などは、治療を行ったとしても蛋白尿が出続けたり、腎機能障害が進行することが多く、治すのが難しいと考えられています。

ネフローゼ症候群について原因となる病気などをご紹介しました。腎臓に不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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