慢性腎臓病ってなに?重症度や症状について
- 作成:2023/12/06
慢性腎臓病(CKD)をご存じですか?近年では「新しい国民病」とも呼ばれ、多くの人が患っているといわれています。 CKDは初期には症状がなく、気づいたときには重症化していることも少なくありません。そのため、早期発見と早期治療が大変重要な病気です。 本記事ではCKDの重症度や、進行すると出てくる症状などについてご紹介します。
この記事の目安時間は6分です
慢性腎臓病(CKD)とは?
慢性腎臓病(CKD)とは、慢性に経過している腎臓の疾患のことで、下記で定義されます。
【CKDの定義】
a尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在があきらかである(とくに尿タンパクの存在が重要)
b.GFR<60ml/min/1.73m2
※a,bのいずれか、または両方が3か月以上持続している。
現在日本国内では約1300-1500万人いるとされており、20歳以上の成人7-8人に1人に値することが予測されます。
CKDが進行し、末期腎不全となると、腎代替療法(血液透析や腹膜透析などの透析療法、腎移植)を行わないと生命が維持できなくなります。腎代替療法を受けている患者は国内で34万人弱おり、毎年40000人程度が腎代替療法を新規に導入され、腎代替療法を受けている患者のうち35000人強が死亡しています。腎代替療法の内訳をみると、日本では、血液透析が90%以上と圧倒的に多く、次いで腹膜透析が3%程度で、腎移植は2000人/年程度です。最近では腎代替療法を受けない選択である保存的腎臓療法(Conservative Kidney Management:CKM)を選択する人も増えてきています。
腎代替療法を新規導入患者数の増加2015年頃から頭打ちになり、死亡数が増えてきています。そのため、近い将来に腎代替療法を受ける患者数は減っていくと考えられています。
CKDは末期腎不全へ進行することを予想する重要指標であると同時に、心血管イベント(心不全、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症)のリスクの指標となります。
また、一時低下した腎機能が回復することはまれなため、早期発見、早期治療が重要になります。そのため健康診断などで
- eGFR
- 尿タンパク
などの異常値を指摘された場合には、医療機関の受診を強くおすすめします。
CKDの重症度
CKDの重症度は、原因(C)、腎機能(GFR:G)、タンパク尿(糖尿病の場合はアルブミン尿:A)を合わせたステージで評価され、原因とステージに応じて適切な治療が必要となります。(CGA分類)
腎機能はeGFRという指標でG1~G5に分類され、ステージが上がるにつれて腎機能が悪化します(表1)。
eGFRは運動や測定誤差などの影響で±7%程度は上下するゆらぎのある数値です。そのため、31(G3b)と29(G4)、16(G4)と14(G5)などで大きな違いはありません。G4、G5は明らかに健康に問題を起こす可能性が高い状態、G3(G3a、G3b)は高い確率でCKDの状態といったようなイメージでとらえていただき、eGFRが60未満なら受診をおすすめします。
また、G1、G2であっても尿タンパクが出ている場合には安心できません。尿タンパクが出ている人は腎機能(eGFR)が下がる可能性が高く、その量が多くなるほど腎機能低下速度が速くなります。
尿タンパクが0.2g/gCrを超える場合はCKDの可能性が高く、0.5g/gCrを超える場合にはほぼCKDだと考えられます。健康診断結果で1+や2+となっている人は0.2g/gCrを超えていると考えられるため、まず近くの内科を受診し、尿タンパクの量を測ってもらうこと(定量)をおすすめします。(尿タンパクが0.5g/gCreを超えている場合には腎臓内科専門医を紹介してもらうことが大事です)
eGFRは健康診断の結果に記載されていることがあるほか、血清クレアチニン値、年齢、性別をから下記の計算式から計算できます。
eGFR cre(男) = 194 * Scr^-1.094 * age^(-0.287)
eGFR cre(女) = eGFR cre(男) * 0.739
※日本腎臓学会のwebサイトなどには、年齢、性別、血清クレアチニン値からeGFRを計算できるツールがあります。
CKDの進行度別症状
CKDの初期には検査値に異常があるだけで症状が出ることがまれですが、CKDが進行してくると様々な症状が出てくることがあります。
■ eGFR > 40
通常、様々な症状が出てくる事はまれです。
■ eGFR<20-30程度になった場合
以下の症状が比較的多く見られます。
【ろ過機能低下によるNa、水の貯留が原因となるもの】
高血圧・浮腫
【尿の濃縮力低下によるが原因となるもの】
夜間の頻尿
【エリスロポエチン(造血ホルモン)の低下による貧血が原因となるもの】
労作時の息切れ
■ eGFR<10程度
末期的な状態で、毒素が溜まることから、上記に加え以下のような症状が現れます。
- 食思不振
- 意識障害
また、人によってはろ過機能が低下で電解質のバランスがくずれ、下記のような症状などがあります。
- 高カリウム血症による不整脈
- 低カルシウム血症による筋肉のつり
しかし、この段階では通常はきちんと治療されているのでそれほど心配はありません。(偶然高カリウム血症や低カルシウム血症が見つかった際に、CKDが指摘されることはよくあります)
ご紹介したように、CKDは通常重症になるまで目立った症状はあまりありません。そのため、「症状が出たときには透析間近」というのはあながち間違いではありません。症状のない早期から腎臓を大事にすることが必要です。
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2003年東北大学医学部卒。研修を経て、Medical College of Wisconsinに留学し、医学博士取得。2012年より石巻赤十字病院腎臓内科部長。2018年より東北大学病院、2019年より現職。RPGNガイドライン2020、腎生検ガイドブック2020などに参加。10冊以上の腎臓内科・透析の著書がある。(『長澤先生、腎臓って結局どう診ればいいですか?』(羊土社)、『Dr.長澤の腎問答』(中外医学社)、『この局面にこの一手!Dr.長澤直伝!腎臓病 血液透析の定跡』(金芳堂)など)
総合内科専門医、腎臓専門医・指導医、透析専門医・指導医、日本医師会認定産業医、医学博士
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