腎臓の仕組みと働き

  • 作成:2023/12/06

腎臓について、どんなイメージをもっていますか?なんとなく「尿を作るだけの臓器」だと思っている方が多いかもしれません。 しかし、腎臓の機能はそれだけではありません。 腎臓は、「老廃物の尿への排泄」を担うだけではなく、 ・水分や電解質の再吸収 ・ホルモンの分泌、活性化 なども行う重要な臓器です。本記事では、腎臓がどのような働きをしているのか、腎臓の機能が悪くなるとどうなるのかなど、腎臓の仕組みについてご紹介します。

長澤 将 監修
東北大学病院 腎臓・高血圧内科 講師
長澤 将 先生

この記事の目安時間は6分です

<目次>

腎臓の仕組み

まずは腎臓をみていきましょう。

腎臓の仕組み

腎臓には毎分 800〜1,000 mL程度の血液が流れてきます。心臓から送り出された血液は、大動脈から枝分かれしてた腎動脈と流れ、さらに分枝していき、最終的には髪の毛の太さ程度の1/10程度太さの輸入細動脈にやってきます。この輸入細動脈は糸くずのようになっており、これを糸球体呼びます、糸球体から輸出細動脈が出て、いずれ静脈となります。

この糸球体をくるんでいるのがボウマン嚢呼ばれる袋状のもので、中は、糸球体で血液からろ過されてできた原尿(作られたての尿をこう呼びます)で満たされています。ボウマン嚢は尿細管とつながっており、原尿はボウマン嚢から尿細管に出ていきます。このとき、原尿の中には、老廃物だけでなく、体に必要なものも含まれています。尿細管は血管(輸出細動脈から静脈になったもの)と並んで走り、必要なものを静脈中に取りこみ、不要なものを排泄します。この動脈-糸球体-静脈と尿細管の組み合わせをネフロンと呼び、1つの腎臓あたり100万個程度あるといわれています(日本人の場合、やや少なく、60-70万個といわれております)。

eGFRとは、残っているネフロンの数です。そのためこのネフロンをいかに残すか、が腎機能を守ることになります。(大体の人ではeGFR=自分の残っているネフロンの数と捉えてOKです)

腎臓の役割

腎臓の役割は主に以下3つです。

1. 体に不要な老廃物の排泄
2. 体液のバランスを調整する
3. ホルモンを分泌する

それぞれ説明します。

1.体に不要な老廃物の排泄

例えば体に不要な老廃物として、「尿素窒素(UN)」や「不揮発性の酸」があります。
尿素窒素は、タンパク質を代謝した結果できるものです。
不揮発性の酸は、体中の細胞が代謝した結果としてできるものです。
(例)硫黄含有のアミノ酸 ➡ 硫酸
   リン酸含有アミノ酸 ➡ リン酸
   野菜果物の硝酸   ➡ 硝酸

これらの酸は体温では気体になりません。そのため、水に溶ける形(に近く)して、腎臓より排泄します。
体温で気体になるCO2などは肺から排泄されます。

2.体液のバランスを調整する

腎臓は上記の「ろ過機能」だけでなく、「再吸収機能」も持っています。腎臓の糸球体で原尿ができる際、不要な老廃物と合わせて身体に必要なもの(ブドウ糖、アミノ酸、重炭酸など)もろ過されます。これらの身体に必要なものは尿細管で再吸収され、体液の量・濃度・pHのバランスを整えます。SGLT2阻害薬という薬剤はこの腎臓のブドウ糖の再吸収を抑制し尿に糖を排泄するタイプの薬であり、現在では糖尿病、心疾患、腎疾患に広く使われています。

3.ホルモンを分泌・活性化する

腎臓は、上記の働きの他に、赤血球の数増やすエリスロポエチンや、血圧を調整に関わるレニンなどのホルモンも分泌しています。また、Caの代謝に関わるビタミンDの活性化もしています。エリスロポエチンの分泌やビタミンDの活性化は尿細管細胞の間にある細胞で行われるため、ネフロンが減少するとこれらの細胞も障害され機能低下します。

腎臓の働きが悪くなると

腎臓の働きが悪くなると、以下のようなことが起こります。

  • 腎臓の「ろ過機能」がうまく機能せず、老廃物が身体の中に溜まってしまう。
  • 「ろ過・再吸収」が適切に行われず体液のバランスが崩れてしまうこれにより、Cr、BUN、β2MGなどが上昇したり、高カリウム血症、高リン血症などを来したりします)。

また、ホルモンが分泌できないことによる障害が出てきます
(例) エリスロポエチン低下 ➡ 腎性貧血
ビタミンD低下     ➡ 低Ca血症

これらの状態を起こすような状態を「慢性腎臓病」と呼びます。(腎機能が低下すればするほど様々な問題を起こします)

腎臓病って何?

たくさん種類があり、理解が難しいかと思いますが、ポイントは「腎臓病の原因は何か」「現在どの状態か」「どのくらいのスピードで進行しているか」の3点です。

腎臓病の原因は何か

腎臓病は、その原因によって腎機能低下のスピードや心血管病の発症率がかなり異なります。また、原因に応じた治療が必要になることもあります。そのため、腎臓が悪くなった原因を確定することが重要です。
実際の臨床上では、原因はひとつでなく、2つ、3つが合わさっていることがしばしばあります。

現在どの状態か

腎臓病の状態は、eGFRと尿タンパク(糖尿病の方は尿アルブミン)の量のふたつの面から分類します。そのため、尿タンパクの定量(量を測定すること。一方、尿試験紙で行う、尿タンパクが出ているか出ていないかの検査を定性といいます)が重要になります。尿タンパクを定量していない場合は、尿タンパクの定量も必要ではないか、主治医に聞いてみましょう。

どのくらいのスピードで進行しているか

腎臓病には、eGFRと尿タンパクによる分類のほかにも、進行のスピードによる分類もあります。

数時間から数日のうちに腎臓が悪くなる・・・急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)
数週間程度で腎臓が悪くなる       ・・・急速進行性糸球体腎炎(Rpid Progressive Glomerulonephritis:RPGN)
腎臓が悪い状態が3ヶ月以上続く      ・・・慢性腎臓病(CKD)

これらのほかに、AKIとCKDの間の概念の急性腎臓病(Acute Kidney Disease:AKD)や腎機能が廃絶している末期腎不全(ESKD:End Stage Kidney Disease)などの分類があり、それぞれの状態に応じて適切な治療が必要となります。
以下でそれぞれについて紹介します。

急性腎障害(AKI)
数日のうちに腎機能が悪化するものです。軽症のものは、脱水や薬剤性の原因でしばしば生じます。重症のものは、心臓病や大きな手術、敗血症などの生命に関わる状態などによく合併します。(重症例は、基本的に入院患者で生じることが多いです)

慢性腎臓病(CKD)
腎臓が悪い状態を指すことが多いです。原因は問いませんが、糖尿病や高血圧、IgA腎症などの腎炎などが原因で腎機能が低下していることは比較的多いです。あります。AKIなどを起こした後に回復しきらず、CKDになることもしばしばあります。

急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
腎臓に炎症が生じ、数週間から数ヵ月程度で末期腎不全になる廃絶していく可能性のある疾患です、しばしば、全身状態の変化微熱や倦怠感,貧血などを伴います。ANCA関連血管炎や抗GBM型糸球体腎炎、ループス腎炎などが原疾患であることが多いですが、発症初期からしばらく、長引く感冒(風邪)だと思い、経過を見ていたところ本疾患だったという事があります。これらをふまえて感冒のときに尿検査をするかかりつけ医は非常に心強い医師です。(このような疾患を念頭に置くため)

急性腎臓病(AKD)
CKDとAKIの期間の間を埋めるための概念です。

末期腎不全(ESKD)
自身の腎臓によって恒常性(簡単に言えば体の機能のバランスをとること)を保てなくなり、何らかの腎代替療法(透析療法もしくは腎移植)を必要とする状態をさすことが多いです。

原疾患と現在の状態が重要

適切な治療を行うためには「腎臓病の原因は何か?」「現在どの状態か?」を把握することが重要です。腎臓専門医では多くの場合、腎生検まで行って確定診断し、

  • 原疾患の確定
  • 今後の腎機能低下の速度の予想
  • 適切な治療選択のアドバイス

などを行います。
かかりつけ医から「大きな病院で見ていただいて」といわれた際には、受診を腎臓専門医の受診をおすすめします。

2003年東北大学医学部卒。研修を経て、Medical College of Wisconsinに留学し、医学博士取得。2012年より石巻赤十字病院腎臓内科部長。2018年より東北大学病院、2019年より現職。RPGNガイドライン2020、腎生検ガイドブック2020などに参加。10冊以上の腎臓内科・透析の著書がある。(『長澤先生、腎臓って結局どう診ればいいですか?』(羊土社)、『Dr.長澤の腎問答』(中外医学社)、『この局面にこの一手!Dr.長澤直伝!腎臓病 血液透析の定跡』(金芳堂)など)
総合内科専門医、腎臓専門医・指導医、透析専門医・指導医、日本医師会認定産業医、医学博士

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