【専門医に聞くVol.3】医師はどう考える?CKDの治療選択
- 作成:2023/12/06
慢性腎臓病(CKD)は一度腎機能が低下したら、回復する見込みのない予後不良の病気です。もし進行してしまった場合、どのような治療手段があるのでしょうか。 慢性腎臓病についてAsk Doctorsに寄せられた質問を、腎臓内科専門医である長澤将先生(東北大学腎臓・高血圧内科 講師)からわかりやすく説明していただく本特集。最終回は、進行後の治療について伺います。
この記事の目安時間は6分です
CKDの透析療法について
もしCKDが進行した場合、どのような治療となりますでしょうか。
腎臓病が進行してしまった方の治療は、おもに腎代替療法として①腹膜透析②血液透析③腎移植の3つが選択肢にあがります。
まず、腎機能がある程度良い方の場合は、腹膜透析を導入します。自身の腎機能を活かしつつ、腹膜透析をセットで行い、身体状態を保つ方法です。日本では腎代替療法患者の約1%くらいが腹膜透析を受けている印象です。血液透析と比べて通院期間や通院時間が少なくて済むのがメリットですね。頻度としては月1回の外来通院として、残りはセルフコントロールが出来れば、社会生活もしやすいので、治療方法として選択されることがあります。
実際に多くの方が受けているのが、血液透析ですね。医療機関への通院頻度は週3回となるため、多くなってしまいます。
腎移植は基本的には年齢が若い方には推奨されるのですが、高齢の方には積極的にはすすめません。働き盛りの世代にとってこれからも積極的に働きたい場合は、腎臓を誰からもらうことも視野に入れると良いかもしれません。そういう視点で臓器移植という方法がありますが、自分の運転免許の裏面に臓器提供の意思を記す事ができますが、一度は考えて欲しいです。また現在は在宅透析という方法も出てきています。自宅で透析を行うため管理トレーニングが必須となるのですが、自分の時間を大切にしたい若い世代には良い方法かもしれません。
CKDの保存療法について
在宅透析ということも出来るのですね。たしかにトラブルが起きたとき、正しく対処できるようにしておかなければならないと考えると、高齢な方は難しいかもしれませんね。「透析療法をしたくない」という人も中にはいると思うのですが、その場合はどうなりますか?
透析が必要な状態だと、すでにご自身の腎臓では体のバランスを保てない状況になっています。そのため。基本的には透析を行わないと合併症のリスクがどんどん上がってしまい、最終的には死に至ります。これは末期の心不全も、悪性腫瘍でも同じです。
血液透析の場合には、医療機関へ物理的に通えない方や、介護力がない場合もありますし、本人の死生観も重要です。
透析療法には物理的な要因や家族の介護力も関係してくるのですね。
はい、透析は通院する必要もあるため、その他の要因で続けられない場合も多いです。もし「透析をしない」という選択をした場合、私たち医師は保存的腎臓療法も重要視して説明します。
実際に予後が限定的な場合や、地方だと移動の不便さ、介護力の状況などが関わる要因ですね。最近では若い方でも「透析療法が自分のポリシーに合わない」などで保存的腎臓療法を選ぶ方がいます。
あくまで治療法の決定権は患者の皆さんにあるため、私たち医師は出来るだけ多くの情報を提供して、患者へ選択肢を与える必要がありますね。
まとめ
本記事では腎臓内科専門医であるからCKDの経過や透析療法などの治療法についてお話を頂きました。
CKDは生活習慣に気をつけていても進行してしまう病気です。もし進行してしまった場合はライフスタイルへの影響も大きいことから、納得のいく方針の下で、医療機関と相談しながら治療を進めていくことが良いでしょう。
長澤将(ながさわ・たすく)先生
東北大学病院腎・高血圧・内分泌科講師
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2003年東北大学医学部卒。研修を経て、Medical College of Wisconsinに留学し、医学博士取得。2012年より石巻赤十字病院腎臓内科部長。2018年より東北大学病院、2019年より現職。RPGNガイドライン2020、腎生検ガイドブック2020などに参加。10冊以上の腎臓内科・透析の著書がある。(『長澤先生、腎臓って結局どう診ればいいですか?』(羊土社)、『Dr.長澤の腎問答』(中外医学社)、『この局面にこの一手!Dr.長澤直伝!腎臓病 血液透析の定跡』(金芳堂)など)
総合内科専門医、腎臓専門医・指導医、透析専門医・指導医、日本医師会認定産業医、医学博士
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