38歳でCKDと診断。忙しく働きながらの減塩と体重管理は難しく、50代で透析に…。

  • 作成:2024/12/12

慢性腎臓病(CKD)は進行するまで自覚症状がほとんどなく、気づいた時には腎機能が大きく低下している「サイレントキラー」とも呼ばれる病気です。本記事は、38歳で「慢性腎不全」と診断され、10年後には透析が必要になった50代男性の体験談をご紹介します。腎機能が低下すると減塩や体重管理などで生活が変わり、透析が始まるとさらに水分制限まで必要になったと語ります。

この記事の目安時間は6分です

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外食や旅先での塩分管理が障壁に

慢性腎臓病(CKD)と診断された経緯をお聞かせください。

20年ほど前、30代前半の時に職場健診で高血圧を指摘され、内科に通院していました。しばらく腎機能は正常だったのですが、少しずつクレアチニン値が上がってきてeGFRは50~60、尿蛋白の値は「1+」に。38歳で「慢性腎不全」と診断され、腎機能を保護する薬が処方されました。

CKDになって困ったことはありましたか?

やはり塩分制限は大変ですね。

もともとラーメンが大好きで週1回は食べていたのですが、栄養相談を受けた際に「麺類はやめた方がいい」と言われ、月1回に減らしています。

普段の食事は、妻の協力を得て減塩しょうゆに切り替えたり、減塩レシピを参考にした料理を作ってもらったりしています。ただ、実際に何グラムの塩分を摂取したのかは素人にはなかなか計算できないので、どれだけ減塩できているか、不安はあります。また、塩の選び方ひとつをとっても、岩塩がいいとか、普通の塩でいいとか様々な情報があって、いったい何が正しいのか? と混乱しました。

CKDの患者さんは、1日の食塩摂取量6グラム以下が推奨されていますが、通常の食生活だとすぐにオーバーすると言われます※1

そうですね。今のところ家族は薄味でも大丈夫と言ってくれています。でも、本当は塩気のあるもののほうがおいしいでよね。これから先ずっと、味の薄い食事なのか…とも思います。

外食の時は、メニューに塩分の表示がない場合もありますし、特に困るのは旅行ですね。旅先では、どうしてもおいしいものにひかれて、食べてしまいます。「減塩しなければ」という意識と「今日ぐらいは好きなものを食べたい」という気持ちが葛藤して、心から楽しめないこともあります。

※1 塩分量の例…ラーメン6.0~7.0g(汁を残すと4.0~5.0g)、ハンバーグ2.4g、みそ汁1.5g、カレーライス3.7g。(出典:厚生労働省 健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ「知っていますか?食塩のとりすぎ問題)

自覚症状がない「サイレントキラー」。対策をしても手応えが感じられない

食事面のほかにも、生活の変化や大変だったことはありますか?

体重制限もなかなか難しいと感じています。30代で高血圧が見つかった時からずっと「減量するように」と医師に言われていました。減塩のためにおかずの量を減らしたら体重も4kgは減ったのですが、それ以上は減らなくて。運動もした方がいいのですが、仕事で疲れてそこまでできないのが正直なところです。

ほかには、夜間頻尿にもなりました。一晩に3回はトイレに起きています。また、腎機能が低下した影響で貧血になりました。ヘモグロビン値が10にまで下がって、医師から「フラフラしませんか?」と心配され、一時期は貧血の治療薬を飲んでいました。

でも、CKDの一番困るところは「自覚症状のなさ」だと思います。自分なりに食生活に気をつけていましたが、体が痛む病気ではないので手応えが感じられません。じわじわと腎機能が下がり、診断から10年後には透析が必要になりました。まさにサイレントキラーです。

水分は1日500mℓしか飲めない!氷をなめてしのぐ毎日

透析が必要と言われた時、どのような気持ちでしたか。

「そんなに悪くなっていたのか」というのが第一印象ですね。覚悟はしていたもののショックでした。私は自宅で腹膜透析をする方法を選びましたが、これもまた大変なものです。昼間は仕事があるため、夜間7~8時間かけて腹膜透析をするのですが、「何時に家を出て、何時に帰宅」という制約が出ます。通勤に1時間半ほどかかるので、仕事中も常に時間を意識しなければならず、非常に不自由でした。

また、腹膜透析をすると、塩分だけでなく水分の制限も始まります。私の場合は1日500mℓが上限で、どんなに喉が渇いてもゴクゴクと水を飲むことができません。仕方がなく、氷をなめてしのいでいましたが、これはきつかったですね。

1日500mℓの中には、食べ物に含まれる水分※2も含まれているのでしょうか。

そうです。キュウリやトマトなど、水分の多いものは食べていませんでした。
でも、そこまでしたのに体内の水分がうまく排出されず、心臓の周りに水がたまって心不全になってしまいました。入院して緊急的に血液透析を行い、数ヵ月はハイブリッド透析(腹膜透析と血液透析の併用)を受けていました。その後、家族と話し合い、実母からの腎臓提供によって生体腎移植を受けました。
現在は、免疫抑制剤を1日2回服用し、2か月に1回のペースで通院しています。

これまでの経験から、治療前の人に伝えたいことはありますか?

健康診断に異常があったら早めに病院に行くことと、自覚症状がなくてもしっかり治療を受けることですね。症状がないのに通院するのは非常にハードルが高いと思いますが、一度落ちた腎機能は元には戻りません。医師の指示に従って、服薬や生活管理を続けることが大切だと思います。

※2 水分量の例(100gあたり)…レタス95.9g、大根95.3g、キュウリ95.4g、トマト94.7g、イチゴ90.0g、スイカ89.6g

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