セックスが「恐怖の時間」に…!? 女性の「性交痛」の傾向と対策
- 作成:2022/01/04
セックスがうまくいかない「性機能障害」について、産婦人科医の宋美玄先生が解説します。連載第4回は「性交痛」がテーマ。誰にも相談できずに悩んでいる人は多いのではないでしょうか? 気持ちがいいはずのセックスが、なぜ痛いのか? まずは原因を探りましょう。
この記事の目安時間は3分です
性交痛の原因になる病気や、出産の影響
こんにちは。産婦人科医の宋美玄です。
性交痛と一口に言っても、実はさまざまなパターンがあります。大半はペニスを挿入するときに生じていますが、「痛くて入らない」「ピストン運動をすると膣の表面がこすれてヒリヒリする」「奥まで突かれると痛い」など、痛み方は人によって異なります。
また、セックスのときだけ痛みを感じる場合もあれば、終わったあとしばらく続くこともあります。
性交痛があると、本来なら楽しく気持ちがいいはずのセックスが“恐怖の時間”になってしまいますよね。痛いのにイヤイヤ応じるのは女性にとって大きなストレスですし、セックスを避け続けるとパートナーとの関係がギクシャクしてしまうことも少なくありません。
ではなぜ痛いのか、原因を考えてみましょう。
性器や周辺臓器に病気や傷がある
性交痛を起こす代表的な病気は、子宮内膜症です。子宮内膜症が進行すると、卵巣や卵管、直腸といった子宮周辺にある臓器と子宮が癒着(くっつくこと)を起こします。癒着部分をセックスで突くように刺激されると、下腹部に痛みを感じるのです。
子宮内膜症以外では、細菌や真菌による膣炎や性感染症などで、外陰部や膣に炎症がある場合も要注意。炎症やただれをペニスでこすることで強い痛みを感じます。
また、出産時に会陰裂傷や会陰切開をすると、性交痛に悩まされることがあります。数か月ほどで傷や縫合部分が落ち着いてくると性交痛もおさまることが多いのですが、1年以上続くケースも。
病気や傷が原因で性交痛が起きている場合は、薬や手術などによる治療で改善できることが少なくありません。婦人科を受診し、適切な治療を受けてください。
もともと膣が狭い、組織が硬い体質もある
それぞれの体の特性
腟の形や柔軟性には、個人差があります。膣が狭いとか膣の内側の組織が硬い人は、ペニスを入れようとすると痛みを感じやすいものですが、スムーズに挿入するためのトレーニングなどで改善が期待できます。
また、一般的に処女膜と呼ばれる、膣の入り口付近にあるヒダ状の組織が生まれつき厚い「処女膜強靭症」の女性は、2回目以降のセックスのときも強い痛みや出血を起こすことがあります。処女膜を切り取る手術もありますから、痛みが続く場合は婦人科や形成外科を受診しましょう。
膣の潤い不足
通常、女性はキスや愛撫などの刺激を受けると性的な興奮が高まって、腟の粘膜から体液が分泌されて膣や外陰部が潤い、いわゆる「濡れた」状態になります。同時に膣の内部の血流がさかんになって組織は弾力が増し、ペニスを受け入れる準備が整います。
しかし、性的な刺激が不足していたり、性的刺激を受けても十分に興奮しなかったりすると膣周辺が潤うことはなく、膣の内側も硬いままなので、挿入したときに痛みが出やすくなります。
濡れにくくなる原因の一つが、加齢による乾燥です。更年期をすぎると女性ホルモンの分泌は激減するので、お肌と同じように腟粘膜が萎縮し、乾燥気味になるのはやむを得ないこと。セックスのときも濡れにくくなるだけでなく、腟壁のコラーゲン(タンパク質)が減少して弾力も失われるので、摩擦による刺激で痛みが生じます。
この場合は、市販の潤滑剤を使ってみましょう。ただし性器の周辺はデリケートなので、ボディ用のローションだと含まれている成分によっては膣トラブルの原因になることも。性器専用の潤滑ゼリー(リューブゼリー)をお勧めします。
男性の「思い込み」が性交痛の原因のことも
性交痛は原因に応じたさまざまな解決方法があるので、「セックスをしたい」という気持ちがあれば改善が期待できます。ただ、体の問題だけでなく、パートナーとのコミュニケーション不足が一因になっていることも少なくありません。
たとえば男性が前戯もそこそこに挿入しようとするケース。十分に濡れていないうちに挿入されれば痛いのは当たり前なのに、アダルト動画などの影響で「女性は挿入や激しい動きで感じるもの」と思い込んでいる男性はいかに多いことか。女性が痛いと訴えても、「未熟だからだ」「そのうち気持ちよくなる」などと聞く耳を持たず、自分の欲求ばかりを優先させる男性もまだまだたくさんいます。
我慢をしているうちに、セックスレスどころか、関係が壊れてしまうことにもなりかねません。
セックスに関しても自分の思いを相手に伝えるだけでなく、お互いを理解しようと努力することが大事。2人のあいだに適切なコミュニケーションがあってこそ、気持ちのいいセックスが実現するのです。
宋美玄 (そん・みひょん)
1976年兵庫県神戸市生まれ。2001年大阪大学医学部医学科卒業。2010年に発売した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がシリーズ累計70万部突破の大ヒット。2児の母として子育てと臨床産婦人科医を両立。メディア等への積極的露出で女性の悩み、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。
取材・構成/熊谷わこ
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