大病の後遺症で「もう一生、立てないのか…?」下半身麻痺でもアウトドアの夢を叶えるまで

  • 作成:2022/02/27

京都府に住む眞浦修さん(63歳)はもともと大のアウトドア好きで、毎年、家族で海水浴旅行に出掛けていました。ところが2020年夏、旅先で急性大動脈解離を発症。緊急手術を受けて一命を取り留めましたが、左下半身麻痺や膀胱障害などの後遺症が残りました。「以前のように、家族でアウトドアに出掛けたい」――。その願いを叶えるべく、CaNoW※に応募されました。障害があっても自然を楽しみ、思い出を作ることはできる。そう体現された眞浦さんの旅をレポートします。

この記事の目安時間は6分です

大病の後遺症で「もう一生、立てないのか…?」下半身麻痺でもアウトドアの夢を叶えるまで

CaNoWとは、病気や障がいを理由にかなえられなかった「やりたいこと」の実現をサポートするプロジェクトで、企業やその従業員の寄付やサポートで患者さんの願いを叶えていきます。詳細は、CaNoW公式ホームページをご覧ください。

このプロジェクトには、CaNoWの理念に共感したノバルティス ファーマ(株)の従業員が寄付しています。

突然、背中や腹部に経験したことのない痛みが

京都府に住む眞浦修さん(63歳)は、もともと大のアウトドア好き。妻の博子さん、長女の怜奈さん(26歳)、次女の麻衣さん(23歳)との4人家族で、毎年、海水浴旅行に出掛けていました。
ところが2020年夏、定宿にしている兵庫県の旅館で病に倒れました。のんびりとくつろいでいた時、突然、背中や腹部に経験したことのないほどの激痛が走りました。現地の病院に救急搬送され、医師から受けた診断は「急性大動脈解離」。それも、死亡するリスクの高い「Stanford A型」でした。緊急手術を受け、幸いなことに命は助かりましたが、左下半身麻痺や膀胱障害などの後遺症が残りました。
「毎年、海釣りや海水浴を楽しみにしていたのに、もう行くことができないのかなと、大変がっかりしました」(眞浦さん)

もう一度、家族とアウトドアを楽しみたい――。でも、安全にアウトドアを楽しむにはなにが必要で、どんな施設がいいかがわからず、もどかしい日々が続いていたそうです。そこで、願いを叶えるため、CaNoWに応募されました。

自己導尿がハードルとなって、遠出を躊躇していた

大病の後遺症で「もう一生、立てないのか…?」下半身麻痺でもアウトドアの夢を叶えるまで

眞浦さんとCaNoWスタッフはZOOMを使ったオンラインミーティングを重ね、どのような形でアウトドアを実現するか、計画を練りました。その際に重要視したことは、やはり眞浦さんの体調面です。

兵庫県の病院で3ヵ月半の入院をへて京都に戻った眞浦さんは、リハビリに打ち込みました。はじめは、あまりにも自分の体が動かないため、「一生、立てないんじゃないか?」と悲観したそうです。それでも、医師に指導された以上のリハビリを必死にこなし、車いすから歩行器、杖を経て、ついに自分で歩く力を取り戻しました。
しかし、長時間歩いたり、坂道や階段の上り下りは負担がかかります。無理をすると左脚に力が入らなくなり、座り込んでしまうこともあります。

さらに、眞浦さんを悩ませるのが、排尿の問題でした。膀胱障害があるため自力で排尿できず、4時間に1回は自己導尿が必要でした。
自己導尿とは、自分で尿道にカテーテルという管を差し込み、排尿する方法です。外出時には、カテーテルは、消毒液の入った筒状のケースに入れて持ち運びます。カテーテルの使用中、ケースを清潔なところに置いておく必要があるため、アウトドアの再開はハードルが高いと感じていたそうです。

そこでCaNoWスタッフは、「グランピング」を提案しました。グランピングとは、グラマラスキャンピングの略称で、高級ホテル並の宿泊施設でキャンプ場と同様の経験ができるレジャーのこと。コテージや食事の材料などは用意されているため、眞浦さんに過度な負担がかからないと予想されました。

実は眞浦さんのアウトドア歴は長く、中学生時代にさかのぼります。仲間と無人島に渡り、テントを張って過ごした一晩が懐かしいとのこと。高校から大学生の頃には、小中学生をキャンプに連れて行くボランティアに参加し、屋外でインスタント麺を調理したり、飯ごうでご飯を炊いたりしていたそうです。
その経験のある眞浦さんはグランピングの案に賛成され、旅の計画が進みました。

家族でカヌー体験。後遺症があることを忘れられる一時

大病の後遺症で「もう一生、立てないのか…?」下半身麻痺でもアウトドアの夢を叶えるまで

2021年6月上旬、「伊勢志摩エバーグレイズ」(三重県)の協力を得て、眞浦さんの願いを叶える日を迎えました。同施設はバリアフリーに積極的で、障害者や高齢者も利用しやすいグランピングを提供しています。今回、宿泊するコテージは、湖に面した開放的な空間。あらかじめCaNoWスタッフが必要な設備を相談し、準備をしていました。

最も重要なポイントは、トイレです。自己導尿に使うカテーテルのケースにはフックがついており、使用中は中の消毒液がこぼれないよう、ドアノブなどに引っかけておく必要があります。今回、宿泊したコテージのトイレには、清潔なトイレットペーパーホルダーにフックを掛けることができ、問題がクリアされていました。
また、キッチンや寝室も含め、コテージ内はすべてホテル並の清潔感です。室内を確認した眞浦さんも、安心した様子でした。

その後、この日のメインアクティビティであるカヌーに挑戦しました。脚に負担をかけず、豊かな自然を楽しむ方法として、CaNoWスタッフからの提案です。二艘のカヌーに眞浦さんと妻の博子さん、二人の娘さんに分かれて乗り、力強くオールをこぎます。緑に囲まれた湖をゆったりと進むカヌー。その様子は自由そのもので、後遺症があることを忘れさせてくれそうでした。

娘さん達が笑顔でカヌーを漕ぐ姿に、目を細める眞浦さんご夫婦。博子さんは、「元気をもらえた。前向きになれる」とリフレッシュできた様子でした。

揺らめく焚き火を見つめながら、家族への感謝を伝える

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夕食は、コテージのテラスで豪華なバーベキューです。本格的なグリルが備わり、調理器具や調味料、食材も用意されているので、手軽に楽しむことができます。博子さんと娘さんたちがステーキや魚介類を焼いていると、眞浦さんも立ち上がって参加。若かりし頃のキャンプ料理を思い出したように、調理器具を扱っていました。

テーブルにご馳走がそろい、家族で乾杯! 病に倒れた時から入院中のこと、そのほか家族の思い出などを語り合います。そして辺りが暗くなると、眞浦さんが希望していた焚き火の時間。ファイヤーピットにゆらめく炎を見つめながら、満ち足りた時が流れました。

ここで、眞浦さんからのサプライズ。家族一人ひとりへの思いを込めた手紙をご用意していただいたのです。

妻の博子さんには、これまでの子育てをねぎらい、ともに歩んできた人生を振り返りました。また、眞浦さんは急性大動脈解離を患ったあと、勤務先の会社から解雇されていました。本人も辛かったはずですが、手紙では「ヒロちゃんは精神的に大変だったと思います」と感謝の気持ちを伝えました。博子さんの目にはうっすらと涙が……。
二人の娘さんにも、日頃思っていても口にしていなかった愛情を、手紙にしたためました。

翌朝、テラスですがすがしい風に当たりながら、眞浦さんは「最高でした」と今回の旅を振り返りました。長女の怜奈さんも、「もう一緒に旅行はできないかと思っていたので、すごくいい思い出になりました」と語ります。

2日間の旅は、眞浦さんの願いを叶えると同時に、家族の温かさを再確認する時間にもなったようです。左下半身麻痺や自己導尿という困難があっても、自分らしく生きようとする姿からは、チャレンジを諦めない大切さに気づかされます。

引用元:CaNoW(カナウ)

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