膵臓がん、食道がんステージⅣの母を、大塚国際美術館に連れて行きたい!

  • 作成:2022/03/20

2019年に食道がんと膵臓がんが発見された母・川良徳子さん(61)。「体調が落ち着いたら、父と大塚国際美術館(徳島県鳴門市)に行くことを楽しみにしていた」と、娘の前園智美(35)さんは言います。しかし、母の闘病生活を支えてくれた父が、2021年9月に胆管がんのため他界。病気発覚からあっという間の出来事で、すっかり川良さんもふさぎ込んでしまったそうです。 そこで、娘の智美さんは、CaNoW(※)の願いを叶える企画に応募されます。夫婦で大塚国際美術館に行くことは出来なかった。それでも「母をなんとか大塚国際美術館に連れて行きたい!」と思いを語りました。体調が悪い日もあり、旅行に行く前は不安もあったと話す母と娘。いざ、大塚国際美術館に向かい、どんなことを思い、感じ、旅をとおして見えた景色とは。

この記事の目安時間は6分です

膵臓がん、食道がんステージⅣの母を、大塚国際美術館に連れて行きたい!

CaNoWとは、病気や障がいを理由にかなえられなかった「やりたいこと」の実現をサポートするプロジェクトで、企業やその従業員の寄付やサポートで患者さんの願いを叶えていきます。詳細は、CaNoW公式ホームページをご覧ください。

このプロジェクトには、CaNoWの理念に共感したノバルティス ファーマ(株)の従業員が寄付しています。

医師同行で、より安全な移動方法を模索

企画概要は、「母を、大塚国際美術館に連れて行きたい!」です。
旅行に行くメンバはー、母の川良さん、企画に応募した娘の智美さん、智美さんのお子さん2人、親族1人、そしてCaNoWスタッフ、旅行医が同行しました。道中は*新幹線(多目的室利用)や介護タクシー、徒歩また車椅子を利用して、安全に2日間の旅行を楽しみます。

*新幹線多目的室について
山陽・北陸新幹線では、全ての列車に「多目的室」を設置しております。「多目的室」のご利用はおからだの不自由なお客様が優先となりますが、おからだの不自由なお客様のご利用がない場合には、授乳や着替え、お客様の体調の思わしくないときなどにご利用いただけます。(JRお出かけネット 列車でのサービス)
https://www.jr-odekake.net/railroad/service/children.html

いざ、旅行に出発!1日目

いよいよ企画当日。期待と不安が入り交じっていたと語る川良さんと智美さんですが、バイタルチェックも問題なく、安心して家を出発します。自宅から介護タクシーと新幹線を乗り継いで、目的地に向かいました。

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鳴門大橋から見える美しい海!思わず写真をパチリ

自宅から無事にホテルに到着し、まずは一安心したご家族。旅行医はバイタルチェックを行いながら、そっと寄り添い続けます。

ホテルの部屋で休憩した後、みんなでお土産さんを覗いたり、夜は家族でディナーを満喫したりと、穏やかな時間を過ごしました。
「明日は大塚国際美術館に行きます。美術館はもちろん楽しみですが、今、この瞬間をみんなで過ごせることが何より嬉しい。ホテルの部屋でたわいない話しをしているときとか、一つ一つがとても大切な時間です」と、川良さんは語りました。

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ホテルに到着し、バイタルチェック

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1日目の夜。これからディナー

旅行2日目。いよいよ大塚国際美術館へ

旅行2日目。いよいよ大塚国際美術館に向かいます。どことなく、川良さんの足取りも軽やかな様子。孫の手を引いて前に進んでいきます。

大塚国際美術館は、世界の名画を陶板で再現した美術館。世界26カ国190余りの美術館が所蔵する西洋名画1000余点を、陶板で原寸大に再現し、展示しています。
川良さんは、一つ一つの画を丁寧に、じっくりと鑑賞していました。

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旅行2日目。これから大塚国際美術館へ。

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大塚国際美術館 ジョット『スクロヴェーニ礼拝堂壁画』

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大塚国際美術館 レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』(左:修復前、右:修復後)

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大塚国際美術館 7つの『ヒマワリ』

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大塚国際美術館は広いため、車いすも利用

大塚国際美術館ですっかり絵画の魅力に圧倒された川良さん。美術館を出ると、サンセットの時間と重なって、水平線がキラキラと輝いていました。

その後、行きと同様、新幹線と介護タクシーを乗り継いで、無事に帰宅することができました。

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海岸越しの夕焼けを見て

企画を振り返って

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企画に応募してくださった娘・前園智美さん

今回、CaNoWの願いを叶える企画に応募してくださった娘の智美さんに、旅行の感想を伺いました。
「父が亡くなって以降、すっかり母は落ち込んでいました。さらに体調も悪化。病気になって、出来なくなってしまったことも増えたと思います。
でも、色々な人の手を借りたら、出来ることはまだまだある。それを伝えたくて、今回の企画に応募しました。

旅行はとても楽しみにしていました。一方で、母の体調が悪化しないか、当日の朝まで不安もありました。しかし、事前にスタッフの皆さんと詳細な打ち合わせをして頂けたこと。常に旅行医の先生も一緒だったので、安心して旅行を楽しむことができました。

改めて旅行を振り返ると、「やりきった!」という気持ちと、何より母が喜んでくれたのが嬉しかったです。それに、まだまだ母と旅行に行けそうな気がしました。元々母とよく旅行をしていたんです。でも、母の体調が悪化してからは、もう難しいかな…と思ったこともあって。しかし、今回の旅行で自信がつきましたね。

また、私も普段は仕事や家事育児に追われてしまい、母とゆっくり向き合う時間が中々とれませんでした。今回の旅行は、母も子どもたちも、みんなでゆったり、のびのびと過ごすことができて、本当に良かったと思います。

改めて、本当にこんなに素晴らしい機会を叶えて頂きありがとうございます。
今回の旅行を第一歩として、母がやりたいことをどんどん叶えていこうと思います。

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旅行について思いを語る川良さん

もっと人の手を借りていい

続けて、お母様の川良さんにお話を聞きました。
「まずは娘に感謝しています。娘は、日々忙しい中でここまでやってくれました。夫が亡くなって、私のことを心配してくれていたんだ。忘れられていなかったんだと、改めて実感しました。

また、今回の企画は、娘から報告を受けるまで全く知りませんでした。
元々旅行は好きでしたが、病気になってから体調も不安だし、もう厳しいだろうって思っていたんです。
でも、CaNoWスタッフのサポートを聞き、旅行医の伊藤先生とお話しているうちに、徐々に不安より期待が膨らんでいきました。

旅行が具体的に決まってからは、自分でも外に出て歩いてみたり、体力をつけてみたりと、旅行前から行動が変わったように思います。伊藤先生が“旅行マジック”と仰っていましたが、早速効果が出ていたのかもしれません。

また、今までは人に甘えると申し訳ないと思っていました。人様に迷惑かけちゃいけないって。でも、今回の旅行を経て、「もっと人に甘えてもいいんだ」と感じることができました。こうやって少しずつ助けてもらいながら、色々やっていきたいです。

うちは一人娘です。全ての負担が彼女に掛かってしまって、重荷だろうなって思っていました。今回の旅行は、ちょっとでも日常を離れ、一緒に楽しい時間を過ごせてとても嬉しかった。それに、また次も旅行に行きたいと、望みもでました。私のような病気を抱えた人は、旅行なんか無理じゃないか。そう思ってしまう方も多いと思います。でもCaNoWのようなサポートがあると、生きる力にも繋がります。

大塚国際美術館はとても素晴らしかったです。それ以上に、旅行を通して家族で時間が過ごせたこと。サポート受けながら、人に甘えてもいい、まだまだできることをあると分かったのは、とても大きかったと思います。これからも外出の機会を増やして、みんなと楽しい時間を過ごしたいですね。

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明石海峡大橋の前で

引用元:CaNoW(カナウ)

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